そしてミクは時計の前に立っていた。
この金色の…──否、金色だった時計の針をもとに戻そうか考えていた。
手に握っていたナイフは色を失い錆び付いていたのだ。
建物の壊れた隙間から覗く光に目をやった。それに光を翳せばなおのこと錆び具合がよく分かった。
彼らの血液にまみれたはずの服は、何事もなかったように汚れを無くしていた。
まるて、今までこの舘で起きていたことが嘘のように。
そう思うと、この針を返すのが躊躇われた。
これは、ルカとの思いでの詰まった針なのだ。
たった、1日。
狂った夜の宴。
最悪な、バッドエンドを迎えたあの夜。
すると、きぃ、とあの秘密の部屋へ続く隠し扉が開いた。
「何!?」
ミクは大層驚いて、ぐっと握り直した。鉄屑であろうとも、攻撃するには十分だからだ。
しかし、そこから出てきた人間…──女性にミクは目を見開いた。
「お姉ちゃん…──!」
そこには紛れもなく、兄の伴侶になると誓った女性…──ローズが立っていた。
彼女はミクを見つめて、目を丸くした。
「ミク! ここはダメっ! 早く一緒に逃げましょう!!」
「何?! えっ、何のこと!?」
「貴女達も、早く来なさい! あの家族は居ないわ!」
現状を理解できずに「え?」を連呼していると、あの扉がまたぎぃぎぃ開いて、知らない女性が何人も出てきた。
もしかして…──あの棺の山の中に?
そういえば、ミクはあまりにも恐ろしくなって中を確認していなかった。
もしかして…──彼らは、誰一人。ここに来た人を殺していなかったの?
「朝が来てるなら今がチャンスなの! 話しは後よ。ミク、早く逃げましょう…──」
‐ミクーっ!!‐
遠くから、聞き間違えるはずのない兄の声が聞こえた。
シアン? と義姉は目を丸くした。
「お姉ちゃん、行こう! 『舞台』は終わったの!」
「ミク…何でそれを──」
ミクを呼ぶシアンの声は、先程より大きくなる。
不安がる女性達に、ミクは自分の兄の声だから大丈夫だと言って、応接間を部屋を飛び出した。
「お兄ちゃぁあーん!!」
ヒラリと、懐から招待状が飛び出たことも気づかずにミクは駆けていく。
あの古びた扉を蹴り開ける。
眩しいぐらいの光が目を突いた。しかし、まだこちらには辿り着いていないようだった。ミクは大声を張り上げた。
すると、シェパードが走って草むらから姿をあわらしたと思ったら、村人と、シアンが森の中から姿を現したら。
「シアン!!」
ローズの声に、兄は驚きを隠せないようだった。まるで狐に化かされたような、目の丸さ。
しかし、次にはシアンとローズは同時に駆けだして強く強く抱擁した。
「ローズ! 今まで何処にいたんだ!?」
「あぁ、会いたかった! 会いたかったわ、シアン!!」
「僕もだ! 君に、ずっと会いたかった!!」
ミクは少し唇を尖らせて会話を交わし会う二人を見つめた。自分を心配して来てくれたはずなのに、義姉を見つけてしまったらミクのことはそっちのけか。
相変わらず、2人は付け入る隙がないほどに愛し合っている。
寂しい所ではない。
もう、悲しいの領域にまできている虚しさである。
ミクは、そんな2人の姿を見て誓う。
この村を、『離れよう』。
そして、兄と違う所で暮らそう。
生涯、兄にしか恋をしないと誓っていたミクだったが、ルカのような恋がしてみたくなった。
ミクのしている恋よりは、成就する確率がある、そんな恋を。
ローズが先陣きって、取り合えず村にみんなを連れていくように話す。
そしてローズも彼女達も、ミクと同じ体験をあの廃墟の舘でしたことを告白した。
それから、村長から。あの舘の話を聞くことになった。
あの舘はとある有名な音楽家の一家で、娘が錯乱し、一夜で住人を皆殺しにした。
しかし、村長はそんな舘を見たことがなかった。昔に、自分の祖父から聞いていただけ。この村に生まれたのに舘を見たことがなかったから信じていなかったのだという。
知っていたのは、本当に片手の指で数えられるぐらいの人しか居なかった。
そんな昔から、彼女達は明けない夜の舞台を演じていたんだとミクは、盛大な結婚式を開いているだろう彼らを思い浮かべた。
「ミク…大丈夫?」
メイコにそっくりな母と、カイトと違って外面は全く良ろしくない父が心配そうに覗き込んできた。
「あのね、父さん、母さん…──私…」
まだ見ぬ恋人を夢見て。
ミクは、生まれ育った村から出たいと胸の内を告げた。
Bad∞End∞Night【自己解釈】⑫~君のBad Endの定義は?~
本家様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16702635
ミクが狂っちゃった子になって申し訳ない。
あと、がくルカになったのも申し訳ない。
苦手な方に再度頭を下げます。
勝手にイチャイチャさせて申し訳ありませんでした。
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