「やったー!!これでやっと遊べるぞー!!!!!」
中学2学年末テストを終え、クラスメイト達がざわめく。
皆我慢が出来ないといった様子で、帰り支度を始める。
…僕はそれを見て、ため息をついた。
”あいつらは、なんだかんだで決まっているからなぁ”
「お疲れっ!!!どうしたの?…本当にお疲れそうだねっ。」
椅子に座ったままぼーっとしていた僕の肩を叩き話しかけたのは、隣の席のリンちゃんだ。
席が隣だから、僕たちは良く話すことがある。まあいわゆる女友達だ。
「ねぇ、みんな浮かれてるよね…私たち、もうすぐ3年になるんだよ。
……そう言えば、レン君は決めた?」
「っ、何が?」
僕はドキッとした。そう、僕はずっと思い悩んでいたことがあったからだ。
だが、訊ねたリンちゃんは何も気づいていない。
浮かれてる、そう言いながら、彼女もまた浮かれていないわけじゃないのだ。
いつもの無邪気に好奇心を少しまじえた表情をしている。
「ん?何ってさ…レン君、どこの高校に行くのかなって思って。」
やっぱり、来た。
最近何度も聞く言葉。僕はこれを聞くた度うんざりする…というより、虚しくなる。
とはいっても、別に皆と離れるのが嫌とかそういうわけでもない。
…実感がない、だけなのだ。
「…さあ、とりあえず行けるとこに行くつもり。リンちゃんは?」
「私?私はねっ…高校だよっ。まあ、受かればだけど。」
どうして?まだ2年、いやもう3年にしてもまだまだ時間はあるじゃないか。
どうして、みんなは歩いているのだろう。
どうして、僕は動けないのだろう。
「…」
「?どうしたの?レン君?やっぱ今日疲れてるね。
…もしかして、私うざい?」
「そういうわけじゃないよ。気にしないで。」
「そう…なら、いいんだけど。」
「…」
「…、やっぱ気になる。ねえ、どうしたの?悩み事?私でよかったら聞くよ?」
「ううん、なんでもないから。」
こんなこと、言えるはずがない。恰好悪くて、情けない僕。
…どうして。
「どうして。」
「ん?」
「どうして、リンちゃんは…高校に行きたいの?」
「えっ!?どうしてかって?うーん…。
なんとなく、かな?あっ、制服がかわいいんだよっ。」
は!?制服がかわいい!?だから…高校に行きたいのか?
将来何になりたいか、そのためにはどこの高校に行くべきなのか考えろ、とか、自分の学力にあった所のやや上を目指せ、とか、親や先生たちは言っていたのに。
「将来、リンちゃんは何になりたいの?」
「私、そんな先の事は分からないけど、高校に入ったらあの制服を着たいって思ってるよ。あれ?さっき言ったね。
それだって、将来の夢の一つでしょ?だって未来の事だし。」
僕はあっけにとられた。
そうか、将来の夢は一つじゃない、遠い事じゃなくてもいいんだ。
僕は、少し心が軽くなった感じがした。
僕は考えすぎていたんだ。
「そっか…。」
「あれ?レン君少し顔色良くなったね?良かった!なんでかは知らないけど。」
「リンちゃん、ありがとう。」
「えっ!?私、何かした?」
「いいんだ、気にしないで。
ねえ、僕も行きたい高校が決まったよ。
君と同じ…高校に行きたい。」
「なんで?男子の制服は特に他と変わらないよ?」
「…いや、そういうんじゃなくて。
僕も、先の事は分からないけど、今一つだけ思ったことがあるんだ。
高校生になっても君と一緒にいたい、ってね。」
「////////っ!!!!?」
顔を赤く染めたリンちゃんを見て、僕は…。
遠い未来の事は、まだよくわからないけど、僕は歩むべき…歩みたい道を見つけた気がした。
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