※諸注意
・カイト×マスター(女性)
・妄想による世界観
・オリキャラ満載
・カイトは『アプリケーションソフト・VOCALOID・KAITO』の販促用に開発されたキャンペーン・イメージロイド(?)機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任でスクロールして本編へどうぞ
☆☆☆☆☆
…どうもあの子は、オレに依存しすぎている。
これは、よくない傾向だ。
わかっているのに、…オレはこの関係を壊したくなかった。
シャングリラ・第十四話~混迷~
SIED・SINOBU
「は…?カイトが『マスター』を拒んだ…?」
メンテルームの隣、休憩スペースで、今日も何杯目かもわからない紅茶を飲んでいたオレは、思わず目の前の正隆さんに問い返していた。
「正確には『マスター候補』を、だけどね。この前預かった、納品先の会社の社員さんのプロフィールやら写真を見せてみたら、全部拒否られた。…別に、今すぐ決めろなんて言わないのに、ただどんな人が候補に上がってるか教えてあげただけなんだよね、」
今は、眠っているだろうカイトを壁越しに振り返り、ため息をつく彼の眉間に深いしわがよる。
メンテの合間にしたやり取りを思い出しているみたいだけど、…一体何があったんだろう。
「うーん、好みの子がいなかったんじゃないか?」
オレは大して興味もなかったから、すぐに手元の雑誌に視線を戻し、適当な返事をする。
あ…この服いいな、チェック入れとこう。
「何してんの、篠ちゃん。…メンズ雑誌の通販欄?」
「ふふん、新しいスーツ買おうと思って。このダークブルーの、格好良くないか?」
覗き込む正隆さんに広げた雑誌を見せると、あからさまに落胆された。
「それ、何処に着ていくつもりなのさ。…だいたいね、お見合いじゃないんだから、好みの子も何もないよ。預かった写真は、老若男女合わせて三十人ほどだったんだけど、最初の一、二枚をチラッと見ただけで、全部突っ返してきたんだ、」
「ふぅん、」
チッ、話題逸れないな…。
「おっかしいな…。『カイト』なんだから、もっと『マスター』に食いついてもいいはずなんだけど、…ちょっと、らしくないよね、」
「へぇん、」
「…篠ちゃん?僕の話、ちゃんと聞いてる?」
「うんうん、聞いてる聞いてる、」
「…はぁ、」
肩を落とす彼には本当に申し訳ないが、本気でどうでもいいと思う。
そもそも、あの子を『カイト』という言葉で一括りにされるのは、なんとなく気に入らない。
趣味趣向、性格だって千差万別。らしくないってなんだ。らしくないって。
もっと『カイトらしく』育てたかったなら、放任主義のオレに預けたのが間違いだったな。教育なんざ、してねぇさ。ああ、残念。
「ってかさ、そんなに大事なの?『マスター』ってのは、」
ちっとも話をやめる気配がないから、仕方なく先に進むよう促す。
「大事だよ、ボーカロイドの設定としても、アンドロイドのあり方としても。カイトを公私共に完全サポートし、所有者となる人間がね、」
「でも、カイトは販促活動する、いわば会社所属の身なんだろ?『マスター』なんて、個人が所有する形を取るのは違うんじゃないのか?」
いくら納品先の会社の人間でも、見知らぬ誰かがカイトを私物化するのは、さすがのオレでも腹立たし…ん?今、私情入った?
「わかってないなぁ。不特定多数の人間の中で活動していかなきゃいけなくなるカイトは、これからどれだけのストレスとプレッシャーに晒されると思ってるの?その中で『マスター』は、カイトにとって心身ともに委ねられる、何物にも代えがたい唯一無二の拠り所なんだよ。何があっても確実に自分を支えてくれる、たった一人の『マスター』がいてこそ、カイトのメンタルバランスも取れるんだから、」
「んー、そんな熱く語られてもなぁ、カイト自身が拒否してるんじゃ、しょうがないだろ、」
どんなにいい人材だろうと、カイトと相性が悪ければ意味がない。
「…なんだよねぇ…どうしよう、」
「いや、オレに聞かれても…、」
「はぁ…、」
「いや、ため息つかれても…、」
相談する相手、間違ってないか?
「ま、どっちにしろ、オレはあと二日でお役御免…お払い箱なんだし、どうでもいいや、」
約束の二週間、オレは立派にやり遂げた。
その後のことは、正隆さんをはじめ、研究員さんの仕事だから、オレがとやかく言う話じゃない。
…でも。
「え、そんな冷たいこと言わないでよ、篠ちゃあぁん、」
「ちょ、猫撫で声で縋りつくな!!」
オレは見ていた雑誌を丸めると、正隆さんの頭をはたいてやった。
(他人とは言え、『マスター候補』にまで興味を示さない、とはね。…マズイよな、いろいろと、)
人見知り、じゃない。きっと。
あの子はオレに傾向しすぎて、排他的な思考が働いているんだろう。
まぁ…カイトがこうなったのは、多分オレの接し方にも問題があった…とも思うから、罪悪感がなくもないけど。
(…って、待て。そもそもどう接するのが正解だった?いや、知るわけないだろ!やっぱり、オレなんかに預けた時点で、どう転んでも同じだったわけだ。もう一度言う、ああ残念、)
「でね、そこで一コ提案があるんだけど、」
「…提案?」
出たよ、激しく嫌な予感が。
この縋るような目、前にもあったぞ。
「あっ、もうメンテ終わったんじゃないか?どれ、カイトの様子でも見にいってやるかな、」
「待って!勝手に話を終わらせないで!」
そそくさと立ち上がるオレが、ドアに向かおうとしたのを阻止しようと飛びついてくる正隆さん。
だから、縋りついてくるな!!
「重っ!!こら、腰に引っつくなって!!」
「やだっ!!篠ちゃんが僕のお願い聞いてくれるまで放さないっ!!!」
「お願い!?提案じゃなかったのかよ!!」
「もうどっちでもいい!!篠ちゃん…、」
ソファに倒され、覆い被さられる。
なんだこの状況。
「君に是非、カイトのマスターになって欲しい!!」
………。
あ、冷蔵庫に賞味期限が今日までのシュークリーム、入ってたっけ。
食べるの忘れないようにしないとな。
…で?
なんの話だっけ?
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