みんなの時が止まつた日
遠巻きにする人垣の中に
あなたは入つてゐなかつた
必ずゐると思つたのに

200キロも歩いてやつてきたのは
何かを良くも悪くもしたいからではなく
ましてや好きとか嫌ひとか伝へたいからでもなく
ただひと言言ひたいことがあつたから

都の南西にあつた
をじさん夫婦がやつてゐる
定食屋の二階の三部屋
一番東側で

仕事のあとで「お疲れさま」とお茶を飲みながら
百歩離れた所にゐる敵を弾き飛ばせるんだと
子供の夢のやうな話を語つてみせたのは
一体何のつもりだつたのかと目を見て言ひたい

わたしはそれをいいなと思つた
何かいいなと思つたんだよ
それを少しでもいいなと思つた
自分が許せない

仲間の誘ひを断つて
ごみ箱に捨てた箸袋の中に
あなたの名前も書かれてた
計画は漏れてゐたんだよ

パンの中にナイフを忍ばせてきた
ならず者の前でおどけたふりをして
戸板が外からぶち割られるまでの間
時間を稼いでくれたよね

次の日あなたはゐなかつた
少ない荷物と傘を持ち
足跡だらけの階段の下
松葉杖を立てかけて

両手を広げて大きく目を輝かせながら
世界中の人が手をとりプラカードを掲げるんだと
革命家の演説みたいな話をしてみせたのは
ただの気まぐれだつたのかと目を見て言ひたい

わたしはそれは違ふと思つた
絶対に違ふと思つたんだよ
それを違ふと思つた自分を
今でも信じたい

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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告白

閲覧数:88

投稿日:2021/10/17 11:51:14

文字数:594文字

カテゴリ:歌詞

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