イチオシ作品
最近の投稿作品 (59)
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弦のないギターの歌
歩いた方が早いから
風を体に当てているんだ
乗り物だらけの世界で
時間と距離を稼いでいこう
「元気を出して」「さようなら」
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バスを追いかけて
一つめのバスにはもう乗れさうもないよ
もう間に合はないよ
ここからバス停まではまだまだ離れてゐる
まだまだ離れてゐる
ここはとても山奥でなかなかバスは来ない
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魔術師
茶の間の襖を開け広げ
畳に影をつけてみた
敷居を跨いだその足を
白い所に置いてみた
若者を座敷に上げて
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スプーン2本に皿と鍋
歯ブラシに絵の具をつけて
金網の上でゴシゴシとこする
新聞紙の活字が縁取りされて
テレビ欄にも雪が降る
秋のカルタを作るために
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通信手段
欠けた茶碗の中に雨
激しく降つてゐる
机の上のおかずは
キュウリの酢の物
昨日の夜の残りの
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星が落ちた日
どういふ態度をとつてみせたらいいのか
握手をしようと差し出した手でジャンケンをした
チョキを出さうとしてフレミングになつてしまひ
知らないのかこれが一番強いんだつて言つてた
星が落ちた日
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空き地
あれから何分間かが過ぎて束の間の空き地が生まれた
足元にゐて世界を見るにはそれはそれで恰好の場所
行進曲を止めて打ち水をすることもできるその道の脇に
草が生い茂るやうにかたくななものの声がする
まだ何も終つてないと
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銅像の虎、動く
米をはしではさんでから
口の中へ運ぶまで
空気の流れがはつきりと
動いて見えるのがわかるよ
机の上にはほこりが積もり
まだ誰からも使われていません
何もありません