人の背丈ほどに積み重ねられた
文字の書いてある紙に火がつけられた
窓の外には緑の木々が揺れてゐるけれど
ここでは燃えかすが風に吹かれることもない
こんなものは必要のないものだと
お菓子のやうな本に書いてあるらしい
栄養いつぱいで身体にいいと言はれても
何の味もしない食べ物や温泉みたいだ
燃やされてしまつた紙の上には僕がゐた
今みんなが見てゐるものは四角い画面の中かもしれない
何も違ひは無い筈なのにそこには僕がゐない
それは一度も生まれなかつたものと同じなんだらうか
八千人の兵隊が土の下に並んでゐる
率いてゐる暴れ者の将軍
八十余りの老人は粗末な小屋に住んでゐた
煙にむせぶ詩人の横顔ここは火の国だ
燃やされてしまつた紙の中には僕がゐた
今みんなが見てゐるものは四角い文字の鎖かもしれない
何も違ひは無い筈なのにそこには誰もゐない
それはただの白い灰と変はらないものなんだらうか
燃やされてしまつた紙の上には僕がゐた
今みんなが見てゐるものは四角い画面の中かもしれない
何も違ひは無い筈なのにそこには僕がゐない
それは一度も生まれなかつたものの名前なんだらうか
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