「ふぅ」
デスクのパソコンから視線を外し、立ち上がる。
生憎今日は休日だ。
しかし昨日、上司から急に出勤命令を出された。
それに仕方なく職場に出向いた、ということだった。
「もうこんな時間か…」
彼女は時間を忘れていたようで、気付けば日が沈みかけていた。
10時から出勤していたので、間食はもちろん、昼食さえ取っていなかった。
人間とは不思議なもので、自覚してしまうと急にお腹が鳴ってしまった。
誰もいない。
だが、お腹の虫が鳴ったことが恥ずかしくて速足でデスクから離れた。
その時、男の笑い声が聞こえた。
「初音、そんなにお腹空いてたのか」
よりによって、彼女が一番知られたくない人だった。
「う、うるさい!」
聞かれていた恥ずかしさで頬が染まる。
「──で?何してんの?」
「休日出勤」
「ふぅん?」
この男は苦手だ。
何を考えているか分からない。
そのくせ、彼女にやたら突っ掛かってくる。
「あんたは何しに来たのよ」
「あんたはないだろ、上司に向かってさ」
「上司なんて思ってないし。それに、歳は1コ下じゃない」
「仕事上は上司」
「……はぁ…でその上司さんは何しに来たんですか」
「しいて言うなら、初音がいたから、だな」
首だけこっちを向けて笑った彼に、彼女は少しだけ顔を歪ませた。
「貴方も初音、でしょ」
「じゃ、ミク?」
「歳上に何を」
「立場上は上だけど?」
彼女はまた溜め息を吐き、顔だけはいいのに、と心の中で悪態を吐いた。
「お腹、空いてるんでしょ?」
ほら、と差し出されたコンビニのサンドイッチ。
「………ありがとう…、ございます…?」
「何で疑問系なの」
「だって貴方が優しいから」
「貴方、じゃなくてミクオって呼んでよ、ね?」
「…、上司なのに」
「だけど年下、でしょ?」
本当に苦手だ。
「ミ、クオ君からかってるでしょ」
「まさか」
本心を言ってるだけだ、とにっこりと笑う。
「とりあえずさ、仕事手伝うよ」
「え、」
「あ、今意外とか思っただろ」
いつも仕事をせずほっつき歩いている彼だからそう思うのも無理はない。
「俺だってやってんの」
「仕事を?」
「そ。いつも休日出勤なんだ」
「普段からやればいいのに」
「あ、まさか俺をいつもほっつき歩いているヤツだと思ってる?」
「え、違うの?」
「俺、いつも出掛けてるだろ?」
確かに、社内にいたところをあまり見掛けない。
「セールスっつーか、営業にいってるんだ。ほら、俺顔良いし」
「顔だけはね」
「だけはって何だよだけはって」
「そのままの意味ですよ」
でも仕事してない理由は何となく分かった。
確かに納得の理由だ。
「で、その補足分が休日出勤ってわけだ」
「へぇ」
「ま、今日の出勤は嬉しいな。ミクに会えたし」
「私は嬉しくない」
「おっきなお腹の音聞かれちゃったしな」
食べていたサンドイッチを口にくわえたまま恥ずかしそうに目線を反らす。
「来週も来るか?」
「嫌です」
「上司に逆らうなよ」
「歳上だから良いんですー」
「…来週もな、スケジュール動かしとくよ」
「ちょっっ」
苦手な上司のことを初めて知った気がする。
悪い人じゃない。
…………苦手だけど。
「ホントに動かしたんですか…!」
「俺と仕事して何が不満なの?」
「全てが不満です!」
………………やっぱり前言撤回。
お陰様で来週も休日出勤決まりました。
fin.
コメント1
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だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
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そんな歌が正しいなんて馬鹿げてるよな。
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他人が生きてもどうでもよくて
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BPM=156
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まふまふ
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ご意見・ご感想
魔熊
ご意見・ご感想
ミクちゃん可愛いよ(*´д`*)
私もサンドイッチあげるから、ミクちゃんと一緒に休日を過ごしたい!!
…でも、休日出勤は嫌だなww
クオが年下とか新しい!!
年下上司、プライドが…って感じになりそうww
ちょっ…ショタ発言しちゃったよwwww
千本桜の自己解釈頑張って!!
ミクちゃんの可愛さを最大限に!!
2011/12/04 11:07:31