「・・・て事で、これ、レンから」
「おっけー。・・・・・・・・・」
マスターは俺から楽譜を受け取り、読み始めた。そして フゥ、と息を付くと文字を手に持っていた消しゴムで一気に ザッと消した。それはもう思い切り。
「え?」
「いや、だってリンに見られる訳にいかないからね。証拠隠滅よ隠滅」
いやいや、俺も見てないんですけど・・・。・・・なんて、言えないか。つーか俺って唯の情報の手助けする橋かよ?
「んじゃあ、ハイ」
マスターは ス、と楽譜を俺に返す。見ると見事に何も残っていない。
「そろそろ戻んなよ。リン、心配してるよ?またレンがいなくなったのかも、て泣いてるかも知んない」
「あー・・・それは有り得る」
直ぐにリンが泣きじゃくる図が思い浮かぶ。 あー・・・後が大変そうだ。 俺はマスターに一礼し、自分の部屋に戻る事にした。

「レン・・・遅いな・・・」
私はそわそわしながら部屋をキョロキョロと見渡す。そんな事してもレンはこの部屋にいないのに。
蒼ちゃんの所に行ってから結構時間が経ってるのにレンは帰ってこない。
・・・まぁ、あの後私も音覚えに夢中になってたから何とも言えないけど・・・。
「また・・・消えちゃって・・・るのかなぁ・・・?」
考えたくも無い。あの後、私は凄く不安になったのだ。誰か大切な人がいなくなる。その悲しさは、もう二度と味わいたくない。
「レン・・・遅いよぉ・・・何してんのよ・・・」
じわり、と視界が歪む。不安で胸が一杯で、押し潰されそうだ。ポロポロと涙が零れる。止まらない。 泣いちゃ駄目だ、泣いちゃ。 そう思ってるのに涙とやらは意地悪く流れてくる。拭いても拭いても流れてくる。と、
「ごめんリン、遅くなった!」
バンッ と思い切りドアが開き其処に立っていたのはレンだった。ハアハアと息を切らしているから、多分走って来たんだろう。良くメイコ姉に見つからなかったと思う。
「ごめん・・・本当・・・」
「・・・遅いよぉっ!」
私の方に歩み寄って来たレンに私は思い切り抱きついた。少しレンがよたついたけど、何とか踏ん張って耐えてくれた。私はレンをギュッと抱き締めた。
「どれだけ心配したか分かる!?すっごい不安だったんだからね!?消えちゃったのかと・・・思っ・・・」
言葉を続けようと思ったけど、続かない。涙が後から後から出て、言葉にならない。
訳分かんないよね、きっと、レンは「何言ってんの?」て返すんだろうな。そう思っていたら、レンが私を優しく抱いて、片手は頭の上にポン、と乗せてくれて。
「ごめん・・・心配かけた・・・。悪ぃ・・・不安にさせて・・・本当にごめん・・・」
そう言った。 何でだろう、レンは何も知らない筈なのに。
私がレンの方を見るとレンが私の涙を拭った。何時もは余り変わることの無い顔が優しく微笑みながら私を見ていた。思わず顔が赤くなる。でもレンは気付かなかったみたいだ。それで良いけど。
「マスターから聞いた。・・・レンの事」
私は目を見開いた。レンの言っているレンはレンの事じゃない、て事が分かった。
「だから俺が帰り遅くて心配してたんだよな?ごめん・・・。また俺が消えるんじゃないかと思ってたんだよな?・・・まぁ、正確には俺じゃないんだけど・・・。・・・大丈夫、俺は消えないから。此処にいる」
聞いたんだ、レンは。前にいたレンの事、蒼ちゃんから。だから、私の気持、分かってくれたんだ。
「ほっ・・・本当に・・・いなくならないよね?」
何時の間にかまた溢れてきた涙がボロボロ零れる。
「いなくならない。約束する。絶対に」
そう言ってくれるレンの口調が優しくって、涙を拭ってくれる指がとても優しかったから――――








私は、暫く涙が止まらなかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

真実を知った日 (レン消失話 その後) 4

4です。これで終わりです。最後まで読んで頂き有難う御座いました!
まぁ、つまり、レンは完全には消えてなかった、て事です。結論は。
それを知ってるのはマスターこと蒼と、レンだけですが・・・。
リンはその事を知りません。ずっと。それが酷な事か、それともリンを思いやっての二人の心遣いなのか、それは皆様にお任せします。
まぁ、最後にリンはこの事を知るんですけどね。それは私が漫画で描きました。・・・友達にあげたので多分載せられませんが(←
それでは、読んで頂き有難う御座いました!

閲覧数:289

投稿日:2010/05/21 21:51:32

文字数:1,553文字

カテゴリ:小説

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