次の日の朝。

 ミクたちのパーティーは、フォレスタ・キングダム内の寮で一夜を明かした。宿屋と違い現在は、クエストを受けているまっ只中である。
 これは即ち、雇われている立場なので朝目覚めると同時にクエストが再開することを意味するのだ。

「……朝か」

 さきに目覚めたのはレンであった。14歳という最年少メンバーであっても、仲間たちを裏で支えるのが彼である。瞼を擦りながらベッドから起きあがり、他のメンバーたちの姿を見ていく。

「zzz……zzz……」

 まず起こしたのは姉のリンからである。

「おーい、朝だから起きようよリン」

「……えっ、もう朝なの?」弟からの呼び掛けに、すぐ目を覚ましてくれた。

「次はフーガさんだな」

 続いて起こし掛かったのは最年長者の青年である。フーガもまた、布団から頭をだして「zzz……」と気持ち良さそうに眠っていた。

「朝ッスよ、フーガさん」

「ああ……そうみたいだね……」

 彼また、リンと同じようにすんなりと目を覚ましてくれた。窓辺から降り注ぐ、日光に注意しながら起きあがったのだ。

「今日はレンがミクちゃんを起こすのよ。そのあいだに引きこもりと洗面所へいくわ」

 すると仲間の2人は、朝の歯磨きと洗顔のため部屋をあとにする。1人残されたレンは、リーダーを起こさなければならない。

「はぁ〜っ、ついに僕の番か……」

 寝歌シリーズ開幕である。今回のチャレンジャーはレン・S・ソレイユだ。

「ミクちゃん!、朝だよ!」

 軽く叩いて声を掛けてみるが依然としてリーダーは、布団のなかで気持ち良さそうに眠っていた。

「zzz……ふわふわ ただようよ おやすみ せかい♪」いつも通りの反応である。

 どうやら彼女は夢の中から、目覚めることへ抵抗を示している。この朝問答に対し、レンは思考回路を即座にコマンド【はぎとる】を素早く選択した。

「おやすみ せかい♪ じゃないよ、ミクちゃん!。僕たちクエスト中なんだよ!」と言ってミクが眠る布団に手を掛けたのだが……。

「あさになると きえちゃう せ か い♪。よるになると おやすみ せ か い♪。zzz……」

 ミクは布団を剥ぎ取られる前に、ほわほわ〜っとしたメロディを奏でていた。

「えっ! zzz…zzz……」

 なんと! レンはミクが寝歌で唄う【おやすみせかい】により眠らされてしまった。起こす側が反撃? されてしまう。朝がきちゃうのが嫌なのであろう、ミクは予測不能な展開をみせる。

「ボーイ…ヤングレディは起きてくれたかな……!?」

 さきに部屋へ帰ってきたフーガは、スヤスヤと床に倒れるレンの姿を見て動揺してしまう。直ぐさま傍に寄っていき、上半身を抱えてあげた。

「ボーイ! だいじょうぶなのか?。いったい、なにがあったと言うんだ!」

 ──まさか、ボーイはモンスターに襲撃を受けてしまったのか……と青年の脳裏へ不安がよぎる。こんな場所であっても、敵が来たのかと思い、警戒心を高めていくのだ。

「zzz…zzz……ふわふわ とんじゃおうよ やみやみのせかい♪」

「!?!?」

 フーガはミクが奏でるメロディを聴いた瞬間、レンの身に起きてしまった全てを理解した。

 ──まっまさか……ボーイは…ヤングレディが歌う寝歌で眠らされてしまったのか……zzz。
 とき既に遅し、フーガは【おやすみせかい】を聴いてしまうと眠ってしまうのだ。

「ミクちゃん、おはよーっ!。みんなでご飯たべにいこうよ……あれ?」

 リンが戻ってくると、目の前に異様な光景が広がっていた。なぜかミクが眠るベッドの周りで、仲間の2人が気持ち良さそうに眠っている。

「なにやってんのよ2人して……」

 当然ながらリンも床へ寝転がる2人のもとへ足を運んだのだが……。

「zzz……まぶたをとじれば ひろがるせかいに♪」

「ミっ…ミ クちゃん……。zzz……zzz……」


ミクたちのパーティーは全眠してしまった。
しばらくは4人とも なかよく夢のセカイへ旅立ってしまう。

※二度寝中※

この作品にはライセンスが付与されていません。この作品を複製・頒布したいときは、作者に連絡して許諾を得て下さい。

G clef Link お姫様の誕生日1

今回の寝歌シリーズにお借りした楽曲は、あえっPさんによる【おやすみせかい】です↓。
https://youtu.be/PbKmhatQN60

夜になかなか寝付けない人へお薦めする、素晴らしい睡眠促進ソングですよ。

あえっPさん、これからも楽しいネイロをたくさん作ってくださいね。

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投稿日:2020/03/14 23:43:30

文字数:1,705文字

カテゴリ:小説

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