うーん……
朝日が差し込んでくる
眩しい……
耳の中で響いてるのは,目覚まし時計の音
それと…………
!
時間だ!
起きないと!!
部屋を飛び出して,リビングに駆け込む私
適当にパンを選びトースターの中に突っ込む
私が今,何を考えてるか分かる?
美味しそうなパンを目の前に考えるのは『食』のことじゃないの
『君』のこと
朝ご飯を食べながら考えるのは『味』のことじゃないの
『君』のこと
歯磨きをしながら考えるのは『お菓子』のことじゃないの
『君』のこと
朝の占いを見ながら考えるのは『出会い』のことと
『君』のこと
重い女だ,って思われちゃうかな?
でもね,君のことを思わずにはいられないの
鏡の前に立つ私
やっぱりちょっと,切りすぎちゃったかなぁ?
でも,君は言ってた
「前髪があると女の子は隠れちゃうから,無いほうが好き」って
じゃあ,私は無くしてあげるね
ちょっとでも,君に興味持ってもらいたいもん
それでね
「どうしたの?」
って聞いてもらうんだ
私は何て答えようかな?
「どぉう? 変じゃないかな?」
こんな,答えじゃありきたりか……
「君のために,切ったんだよ?」
こ,こんなこと言えないよぉ……
占いによると今日の私のラッキーカラーはピンクらしい
ラッキーアイテムはお花の髪飾り
『今日は,可愛い格好をして出かけよう!
憧れの,彼に出会えるかも!?』
占いはそこまで信じてないけど,心を強くするために活用するのは別に良いよね?
そうね……
確か,ちょっと前に一目惚れして買ったピンクのスカートがあったはず……
お花の髪飾りは,部屋にあったかな?
あれは,特別なとき以外つけないって決めてたけど今日は良いの
だってね今日は私がとっても可愛い日!
特別な日なの!!
『ココロが溶けそう』って言う人,いるじゃない?
私も今,それを体験してるんだけど,『溶ける』って何だか可愛くないでしょ?
だからね
もっといい言葉をみつけたの
『メルト』
可愛らしい上に,この意味を知らない人は多い
だから,私はこの言葉を使うことにしたの
君の前で,メルトなのよ
君がいるからメルトなの!
『好き』って言えたらどれだけ楽か……
でも,私にはそんな勇気ない
だって,目さえも合わせられないのよ?
君を見るだけで,ほっぺが赤くなってきて,見られるのが恥ずかしい……
体もいうことを聞いてくれなくなるし
私の友達にもいるんだけどね
『恋に恋する乙女』
私は,これがあんまり好きじゃないの
だって
本当にその人のことが好きなんじゃなくて,
『恋してる』っていう感覚を味わってる自分のことが好きなんでしょ?
それじゃあ,ダメじゃない?
私はそんなことしないわよ?
だってね
私が世界で一番好きなもの
それはね……
君
ウソをつかれた
学校から帰ろうと思って,外に出ると土砂降りの雨が降ってた
あぁあ
占いの前の天気予報では晴れるって言ってたのに……
どうして?
神様は私のことが嫌いなの?
今日は,君と一緒に帰れるチャンスだったのに…………
確かに,傘は持ってきた
昨日,持って帰るのを忘れてたから
君はどうなのかな?
って見てみたら……
ああ
オリタタミ傘ね
そうね
オリタタミ傘なら,カバンに簡単に入るものね
「はぁ……」
無意識のためいき
私,今どんな顔してるのかなぁ?
きっと,沈んだ顔してるよねぇ……
こんな顔,君に見られたら嫌だなぁ…………
「おい」
ふと,近くで声がした
……この声って!?
「大丈夫か?
暗い顔してんぞ?」
「え,あ,うん……」
「傘あるじゃねぇか
良かったな
女の子が雨に濡れて風邪引いたら,大変だもんな」
うぅ……
嬉しい
喋れてる
だけど,だけど……
「……う,うん…………」
「どうしたんだ?
何か,落ち込むことでもあったのか?」
「……雨…………」
「雨……?」
「……オリタタミ傘なんかだいっきらい…………」
「?」
こら!
馬鹿!!
何言ってんのよ,私!
ばかばかばかばかぁ
「折りたたみ傘……?」
「き,気にしないで!!」
「んー?
何だ?
俺の折りたたみ傘,嫌いかぁ?」
「全然!!
そ,そんなこと,ない…よ……?」
「そうだなぁ……
よし!
俺が特別にお前の傘の中に入ってやろう!!」
!!
「……嫌か?」
「(ブンブン)」
「良いみたいだな」
どうしよう……
私,死んじゃうよ…………
君は笑ってる
私は下を向いて,泣いていた
ごめんなさい
無愛想な女で
でもね,私,君のことが好きなの
好きでたまらないの
このときに聴こえた音
今でもしっかり覚えてる
これが
『恋に落ちる音』
メルトメルト!
メルトメルト!!
メルトメルト!!!
メルトなの!!!!
私,このままいたら,呼吸困難で本当に死んじゃうよ?
右手が君に触れてる
あぁ
幸せ
だけど,苦しくて苦しくて仕方がない……
ぎゅーってなってる
手が,震えてる
き,気付かれないようにしなくちゃ!
傘ははんぶんこ
ココロもはんぶんこ
全部はんぶんこ
だけど,私の想いは伝わらない
どうして?
それは,私が弱いから
うん
分かってる
ほら
手を伸ばせばすぐに届く距離
傘を握る君の手も
私の横に並ぶ君の体も
とっても近いのに……
君の手の上に私の手を重ねるのはとっても簡単
手を置くだけだもの
君の体を抱きしめるのも簡単
両手を広げてぎゅーってするだけだもの
なのに,なのに,弱い私には何も出来ない
見てるだけしかできないの
臆病な私
弱い私とはもう,おさらばなの
ばいばいなの!
だから,だから,手を伸ばせ!
私!
さんざん,頭の中でシュミレーションしたじゃない!!
ほら!
その通りにするだけだから!!
『どうしよう』
なんて,もう言ってられない
言いたいけど
今,一番言いたい言葉だけど,もうそれは言っちゃいけない言葉
相変わらず,うつむいてる無愛想な私に君は優しく接してくれる
見えないけど,きっと笑顔なんだろうね
でもさ
私のこともちょっとは考えてほしいかな?
私の気持ち,知ってる?
私はこんなにも君のことが好きなのに……
この想いが伝わる最高の方法
それはね……
神様
私は,あなたの存在を信じてなんかいませんでした
今も信じていません
でも,もしいるのならば,お願いです!
時間を止めてください!!
都合のいいときだけお祈りするような悪い女です
ですが,この気持ちは誰にも負ける気がしません
いえ……
負けません!!
ですから,お願いです
お願いします……
泣きそうなんです
神様は,か弱い女の子を泣かせるような非道のモノなのですか?
ごめんなさい
私はわがままな女ですね
嬉しいんです
この涙は喜びの涙です
だから神様
あなたは悪くありません
この涙と共に,死ねたらいいのに……
そしたら,もう苦しくなることもない
でも,それは悲しいこと
だってね
私は君が大好きだから!!
メルトメルト!
メルトメルト!!
メルトメルト!!!
メルトなの!!!!
メルト,助けて……
駅に着いちゃうよ
そしたら,もうばいばいなの
そんなの嫌!
せっかくはんぶんこ,出来たのに……
きっと,私はもう君には会えない
幸せすぎて,消えちゃうから
だから,これが最後なんだよ?
近くて遠い距離
私にはこの距離は縮められない
それを出来るのは君だけなんだよ?
分かってる?
私の手と君の手
握り合って,歩けたらどれだけ嬉しいことか……
私がメルトで消えちゃう前の最後のお願いなんだから
もう,ばいばいなの?
嫌だよ?
私,君と一緒にいたいよ?
ねぇ,ぎゅーってして?
抱きしめて?
なーんてね
私にそんなこと言う勇気はないのに
でも,頑張ってみようかな?
これから,私は一歩踏み出します
貴方の横に並びたいから
メルト ……あまーいあまーいおんなのこ…………
ここまで読んでくださった貴方
ありがとうございます!
今回はメルトです
ryoさんです!
メルトはミクの中でかなりの王道ですが,
自分がこの曲を知ったのは初めてボカロを聴いてから1年後ほどのことでして……
書いてみた結果,甘々になりましたww
こういう文はあまり得意ではないのですが,
友人に『メルト書いて!!』と言われまして……
その友人,暗い歌が苦手なようで,
自分の書く『悪食娘コンチータ』や『円尾坂の仕立屋』,
『暗い森のサーカス』などは読んでもらえないのです……
しかし,とても仲良くしてもらっている友人です
自分の中でも,『たまには明るいのも,書こうかなぁ?』と思っていたところなので,
書かせていただきました
ご意見・感想etc お待ちしております
よろしくお願い致します
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