前日の検査では、お医者さんが難しい顔をしてその結果を見つめていた。何も言ってはくれなかったけど、それだけで私の体が悪い方へ向かっている事ぐらい十分分かる。その夜に来てくれたパパが、またいつもの一言を言ってくれたけど、良くなる可能性なんて無いって事分かってるんだ。
諦めにも似た絶望を心の奥にしまい込み、私は病院を抜け出す。この前みたいにならないよう、早めに出ておく事にした。
ゆっくり歩くだけなら、息切れを起こしてしまう事は無い。それでも何度か目眩がやってきたけど、足を止める事だけはしなかった。今日こそ貴方に会う為に。
やっと柵の前にまで着くと、私は深く一呼吸した。
彼はまだ来ていない。
だけど私の胸はもう高鳴っている。
それから数十分後。
誰かがこちらに向かって走ってきた。その右手に一つの紙飛行機を握り締めて。
そしてその紙飛行機が高く飛ばされる。
それは柵を越え、私の下に降下した。
【また会えて嬉しいです。
その帽子、似合ってますね。
とても可愛いですよ】
初めて言われた言葉。嬉しいとかいう言葉では表せない程の喜びが沸き起こる。
感謝を示すように微笑むと、彼も嬉しそうな顔をしてくれた。
次の日は私が紙飛行機を飛ばす。
力が足りないせいか、その紙飛行機は柵の上をぎりぎりで通過した。
【ありがとう。
貴方の瞳も綺麗な色をしているよ。】
すると彼は満面の笑顔を返す。その表情があまりにも輝いていて、私は思わず見惚れてしまった。
あんな顔、病院では一度も見た事が無いもの……。
◇ ◇ ◇
次の日も病院を抜け出し、あそこへ向かう。
彼に会える時間が、私の生きている時間だった。
そしていつものように紙飛行機を受け取り、その中身を読み始める。
【ここを出て自由になれる日がいつか来るんだ。
そしたら絶対君に会いに行く。約束する。
だから、待っていてくれないかな?】
その日が来たら、私達はいつも一緒にいられるの?
朝も、昼も、夜も、いつも貴方の顔を見ていられるの?
想像するだけで胸が踊ってしまう。
――――でも。
前にパパが、“囚人”は一生出られないと言っていた。死ぬまでここに閉じ込められる運命だと言っていた。
…………あぁ、そうか。
“囚人”は疫病の治癒法を探す為に閉じ込められているだけなんだ。それならその方法が見つかりさえすれば、彼らは解放される。そしたら貴方も自由の身になれる。
そして私は、この病から救われるんだ。
待つよ。
いつも、いつまでも、ずっとずっと待っているから。
私は様々な期待に満ちた想いで頷いた。
◇ ◇ ◇
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