「おじさん、一回お願いします。」
「はいよー」
私は金魚。
夏祭りにいる普通の金魚すくいの賞品。
「おじさん、この金魚綺麗な色してるな。」
「ははっ、だろう?注文したらこいつ混じってたんだよ。」
「へぇ。じゃあコイツ狙いで。」
「まいど。」
私のからだの色は水色。
周りの他の金魚は赤色。
私は不思議な色らしい。
「あー、おしいね。どうする?」
「…もう1回!」
「まいどね。」
「あーっ!!」
「兄ちゃん、これで10回目だよ?」
「え、マジ!?うっわ、どうしよ…」
私を釣ろうと必死に頑張っている。
「もういいや。兄ちゃん、あげるよ、その金魚。」
「本当ですか!?」
「あぁ。おまけだよ。大切にしてくれよ。」
「ありがと、おじさん!!」
私はこの日から彼のものになった。
「俺、リント!!よろしくな、金魚!」
金魚の私にリントと名乗る少年は無邪気に挨拶をしてきた。
「あ、そっか。金魚じゃ嫌だよな。」
そうやって私を見つめ、考え始めた。
「あ、ミクとかどうだ!?美しい空みたいな色してるからミク!!」
パッと明るい笑顔を見せた彼は返事もしない私に問いかけた。
「じゃ、ミクな!よろしく!」
私は彼の笑顔にいつの間にか夢中になっていた。
「ミク!!餌ってこれでいいのか?」
「ミクってほんと綺麗な色してるよな~」
「ミク!新しい餌買ってきてみた!!」
「ミク!」
私は彼が話しかけてくれるのが何より嬉しかった。
名前を呼んでくれて、餌をくれる彼を日増しに好きになっていった。
だけどある日。
「ただいまー」
いつも通り、彼が家に帰ってきた。
私は名前を呼んでくれるのを待っていた。
けど。
「おじゃましまーす…」
「適当に座ってて、リン。」
リンって誰?
私は私以外の名前を呼ぶ彼を見たことがなかった。
「ねぇ、この金魚何?綺麗な色…」
「あぁ、俺のペット。ミクっていうんだ。可愛いだろ?」
ペット。
彼はペットにしか思ってなかった。
「へぇ。ほんと可愛いね!!リントって乙女みたい。」
「お…っ!?」
「冗談だよ、冗談。」
気安くリントなんて呼ばないで。
彼を取らないで!!
初めて金魚だという事実を憎んだ。
綺麗な満月の夜だった。
―人間に、なりたい。
初めてのわがままだった。
「君…誰?」
「え!?」
私は起きた。
「いや、だから、その、さ、ふ、服くらい、さ、」
服?何を行ってるのだろうと、周りを見たら布団があった。
「え!?に、人間に…なって…る…」
「え、人間?」
「いいえ、何でもありません。」
「それ、貸す、から、ふ、服、着てよ、な?」
「ご、ごめんなさい。」
私は人間になった。
数分経って、私は着替えたので部屋に戻ろうとした時、彼の声が聞こえた。
「ミク!?ミクがいない!!ミク!?」
「はい!?ここにいますよ!!」
「え…?」
「私が、ミクです。っていっても笑いますよね。」
「やっぱり…」
「へ?」
「やっぱりミクだったんだな!!何か、そう感じた!」
「…信じて…くれるんですか…?」
「信じるよ!!そうだ、ミク、パンの耳好きだったよな!!」
「はい、好きです!」
「じゃあ、パンの耳で何か作るよ。」
「彼女…」
「え?」
「昨日来た彼女はいいんですか?」
「彼女?あぁ、リンのこと?」
私はこくりと頷いた。
「リンはいとこだよ。髪の色同じだったでしょ?あの髪の色は鏡音一族だけなんだ。」
「そうだったんだ…」
「俺、ミクが人間になってくれて嬉しい。だから、よろしくね。」
願いを叶えてくれてくれた満月。
もう少しわがままを聞いてください。
彼と、一緒に人間として生きたいです。
ダメですか?
「こちらこそよろしくです!」
fin.
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ご意見・ご感想
魔熊
ご意見・ご感想
純愛って感じだね。
ミクちゃん可愛い!!
水色の金魚いいなぁ…。綺麗な表現が好きだな。
ミクちゃん、私のところにも来てくれないかな。
2011/07/18 23:03:30
檸檬飴
ご意見・ご感想
まさか金魚がミクだとは…。
リント超カッコいい!!
紳士だしね!!
私も書かなきゃね。
2011/07/18 22:37:37