《―――――――――――――――起きな。起きなよ》





『……う……?』



―――――誰かの声で、目が覚めた。


ここはどこだろう。真っ暗。


手術は―――――終わったのだろうか?


辺りを見回すと、そこに見慣れない人影があった。


紅い髪をツインテールに巻いた女の人。私より少し年上ぐらいだろうか。



《よかった。目覚めたようだね、リン・ミラウンド》


『あなたは……?』


《ボクかい? ボクの名は重音テト。世界を変える者さ》



世界を変える? よくわからないけど、今知りたいのは手術がどうなったのか。


すると、少し嘲るような笑みを浮かべたテトさんが、私の考えを読み取ったかのように答えた。



《残念だが君の手術は失敗に終わりそうだよ。君の心臓の血管が破れ、出血多量で君は冥界に落ちそうになっていたんだ。ボクがそれを無理やり拾い上げ、冥界の一歩手前【暗闇の空間】に引きずり込んだというわけさ》



手術が……失敗!?


先生は必ず成功させると言ってくれたのに……!!



《まったく、いくら絶対ではないと言っても、患者を期待させておきながら失敗するとは何とも卑怯な男だね。まぁ―――――こんな男を君がどう思うかはひとまず置いておくとして―――――》



ぐ、と身を乗り出してきたテトさんは、私の目を覗き込んで嗤った。





《機械心臓を組み込んだ人間というのは実に面白い。どうだろう? ボクが君の命をあの無能な医者に変わり助けてあげよう。その代わり僕に少し手を貸してもらいたい》





…………え?


何を、言っているのだろう?



《君の全身の細胞をボクの【魔法《マジック》】で変質・強化させることで、無理矢理機械心臓を君の体と同化させる。これにより君はその体を兵器に変えることができるようになるだろう。その力を使って―――――人間を滅ぼしてほしい》



人間を…………滅ぼす!?



《かわいそうな君に一つ救済措置を出してあげよう。もし君が人間を滅ぼすことを拒んでも、命と力は授けよう。いつの日か、ボクが君のことを殺しに行くかもしれないけどね。…………君もまだ、生きたいだろう?悪い条件じゃないと思うけどね》



何を考えているのだろう、この人は。


人間を滅ぼすことができるほどの力を持たせた者を、自由にさせるというのか。


自分に牙をむけるかもしれないのに―――――?




……………だけど、確かにテトさんの言う通りもっと生きたい。





こんなところで、死にたくない――――――――――――!





『……滅ぼすかどうかは自分で決めます……でも私はまだ生きたい……!! ……助けて、テトさん!!』





両手を天に掲げ、高らかに嗤うテトさん。その両手が赤く輝いて―――――!





《いい返事だ!! 君を選んだこと、ボクは決して後悔しないだろう!! 行くよ……【覚醒魔法《テト・マジック》】!!!》



テトさんの両手が美しく舞って―――――放たれた紅い光が私の体を包んだ。










急激に―――――意識が宙に浮いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



警告音が相変わらず鳴り響く手術室。

何とかつなげようとするキヨテルの手は、まだ止まっていなかった。

だがそれも虚しく―――――血液がほとんど抜けたリンの体は、血の気の抜けた白さに包まれていた。


「……院長……」


もうダメだ。諦めよう。助手の目は―――――そんな虚ろな諦観を湛えていた。

見つめられて手が止まったキヨテルは、目を伏せて持針機を持ち換えた。


「……閉胸しよう。手術を……終了す――――――――――」


そこまで言った時だった。





《――――――――――ドクン!》





『えっ!?』


突然響いた鼓動に、全員がリンの方に振り向いた。

見れば、真っ白になったリンの体が、小さく拍動している。


(馬鹿な……!! 機械心臓は起動していないのに……!!)


そう思った―――――その時には。



《――――――――――ドッ!!》



突然、リンのズタズタになった血管から触手の様なものが膨れ上がった!!


「な……ぐわっ!!」

「きゃあ!!」


暴れまわる触手に弾き飛ばされるキヨテルやナース達。

何百本の触手は荒れ狂いながら、突如機械心臓を十重二十重に縛りだした。

また他の触手は、吸引されたリンの血液が封じ込められた容器を突き破り、再び血管と化して血液を吸いだした。

徐々にリンの体に血の気が戻ってゆき、死んだはずの全身の細胞が蘇生してゆく中で―――――……





―――――触手に包まれた機械心臓が、力強く脈打った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「……う……」


眩しい。目を開けていられない。

でもだんだんと慣れてくると、そこには見なれたキヨテル先生の顔が。


「リンちゃん!! 目が……覚めたんだね!」

「……せんせぇ……」


少し視界がぼやけているけど、どうも顔には湿布が貼ってあるようだ。


「……しゅじゅつ……うまくいったの……?」

「……!! あ……ああ!! も、勿論さ!!」


精一杯笑ってるけど、無理がある。

やっぱり、失敗したんだ。

テトさんのおかげで助かった……ってことでいいのかな。


……何にせよ、これからの私にはきっと未来が拓けてるんだ。





まずは、回復しなくっちゃ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

四獣物語~大砲少女リン④~

またお前か。
こんにちはTurndogです。

機械との真の一体化。
実は彼女の存在がヴォカロ町シリーズに出てくるバイオメタルのモデルになったとかならないとか。

しかしテトさんがわからない人だ。
実質私もつかみ切れてませんからね(おいおい

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閲覧数:142

投稿日:2014/01/20 22:50:54

文字数:2,346文字

カテゴリ:小説

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