【第十五話:放浪少年の苦悩】
俺は、知らぬ間にたくさんの人を傷つけていた。
知らなかった。
『憂鬱少女が何よ…』
あの言葉がずっと、胸のどこかに引っかかっている。
確かに、そうだ。
いままで、憂鬱少女ばかりを捜していた。
どうして憂鬱少女にそこまでこだわるんだろうか。
憂鬱少女とはあの時だけの、出会いで、もう会うことはないんだ。
それが嫌だったのか。
「違うな。」
じゃあ、どうしてだい。
あの話を聞いて、≪憂鬱少女≫は絶対ミクだ。
俺は、ミクを捜していたのか。
「違うな。」
≪憂鬱少女≫に会えればそれでよかったんじゃないのかい。
「そうだな。」
じゃあ、ミクに会いに行けばいいじゃないか。
ずっと、逢いたかったんじゃないか。
「どうしてだろうか……。」
逢いたかった。あいたかった。
でも、この気持ちは、この気持ちの名前は、何というのだろうか。
“郷愁”でもない、“愛”でもない“恋”でもない。
では、なんだ。
「……分からないな……。」
そう言って、俺は鞄からケータイを取り出した。
掛けるのは、瑠花。
『レンくん。どうしたの?』
「お前さんに、ちょっと聞きたいことができたんでな。聞いてくれないかい?」
『…いいわよ。社長のご子息の頼みは、秘書として断れないから。』
「おやま、そうかい。」
俺は一つ息を吸って、瑠花に訊いた。
「瑠花、ただ逢いたいと思うのと、“恋”という感情は違うものなのかい?」
『……何、どうしたの?』
不審がりながら返してきた。
別に意味はない。
ただ、自分の感情が分からないから。
それだけだ。
『……違うんじゃないの?』
俺が言葉を返す前に、瑠花は話を続ける。
『また≪憂鬱少女≫でしょ。レンくん。言っておくけどね、もういい加減にしたほうがいいわよ?有力な相手が出てきたなら、はやく―――けじめをつけなさい。あなたが≪憂鬱少女≫に会いたいのは分かってるわ。でもね。そうすることで、沢山の人に、迷惑や、心配をあたえるの。―――わかるでしょう?そして、気付いていないかもしれないけど、レンくん。あなたの大事な誰かを、もう、取り返しのつかないくらい――――傷つけているわ。そんな人がいるなら、の話だけどね。ということよ。社長のご子息に言うようなことじゃないけど、言わせてもらうわ。もし―――大事な人がいるなら早くしなさい。』
大事な人。
俺にはそんな人がいるのだろうか。
頭に中に、浮かんできそうな気がする。
水彩画みたいに、ぼやけて見えないけれど。
『まだなにか?』
「否、もう十分だ。済まなかった。」
『いいえ。あ、そうそう。社長が、3日後迎えに行くって言ってたわよ。レンくんの自由も、あと3日ね。その間に何とかしなさい。』
「ああ。わかってる。」
そういって、電話を切った。
俺の、大事な人。
いったい誰。
一向に水彩画の滲みは、晴れてくれない。
でもなんとなくわかってる。
それは。
俺の大事な人は。
憂鬱少女ではないこと―――。
コメント2
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ご意見・ご感想
しるる
ご意見・ご感想
憂鬱少女は、ミクで確定?w
探していたのは憂鬱少女だけど…探しているという事実が欲しかっただけ…?
探しているのは憂鬱少女だけど…探しているのは自分の気持ちの整理する時間…?
探しているのは憂鬱少女だけど…探しているのは心底腹を割って話せる相手…?
…いや、正直、自分でも何言ってるかわかんないんだけどww
2012/08/25 21:07:02
イズミ草
そうですね、確定です。
いやいや、だいじょうぶですよw
あってますし。
それに、この作品では言いたいことが
はっきりしてないままですからw
私自身が。
2012/08/27 10:20:06
つーにゃん
ご意見・ご感想
椿姫です!
なんか、この話のレンあまり好きじゃない…
ミクはレンのこと好きだったんでしょうか?
2012/07/14 12:21:00
イズミ草
ぁ、なんとなくわかりますねww
ヘタレンwww
どっちかというと、この話のメインはルカちゃんですからwww
うーん。
そこまで考えてないですww
これからかんがえますねww
2012/07/14 14:59:05