メモリ領域に刻まれた管楽器がアッパーなToy-box-musicたちと
遊び終わった11時00分。
 マスターやミクねぇに軽い挨拶を交してからが、今年最後のわたしの
本番。
 pixivから選択DLしたコス選びに手間取って見上げたタイマーの時刻。
早くも11時20分。

───これって、大分ギリちょんしてる───

 もうやばいって。
 ワードローブから着慣れたRussian-Pスタイルでいいかなってそれにきめ、
スタンドミラー前にしてくるくる一人で確認してみた。
 少し厚めの帽子の角度とか、コートに細かいゴミがついていないかとか。
ひととおり、ばっちりOK、大丈夫。そこそこ可愛い!
 
 待ち合わせ場所は鳥居を潜った先だった気がした。
座標を特定。擬似脳デバイスで演算開始。

「リン、待て!まだ───」

後ろにマスターの何か言いたそうな声が聞こえたけど、そんなの気にする余裕0。
私たちのスタジオから電磁的に隔離された領域に向かって体のデータが加速/粒子化。
時にしてたぶん5sec.以内。
朱色の鳥居がライトアップされた神社の境内でわたしの体は再構築されていた。  

    ※   ※   ※

 同時に起動出来ない私たち二人はいつもどちらかが後先になるんだ。
だから今日の待ち合わせは私が仕方なしに先行してる。こんな寒い中なのに!

 レンは機械みたいに絶対時間正確なつまんない人間だから

”オマエが先行けよ”

 って目をこーんなに吊り上げて威張り散らしてた。
 
 わたしだったら、先に来てる彼女を見つける時間だって楽しい時間過ごす
アクセサリになるって考えるんだけど、レンはそういうの解ってくれない。
 レンは一点ものとかそういうのを好きにならない、ラフなスタイルが好きだったかも。
コーヒーはブラック。パンにはバターだけ。ドロリッチは…最初から欲しがらない。
 清潔なT-shirtsに糊付けされたYシャツ。ローライズ気味のストレートパンツ。
黒色のベルト。イメージカラーはモノトーン。
 それが実は似合ってて、そういうところも割と好きだけど…気分次第では
なんだかとってもイラッと来るものがある。

今日は丁度そんな日。
だから少しはアイツは困ればいいなんて思って考えをめぐらせる。

そうだ!杉の木波に隠れて探し回るのを見てみよう。
あのぶっちょう顔が慌てるのって少し萌える感じする。

思い立ったが吉日(大晦日だけれども)といわんばかりに私は雪を
掻き分け程よい幹に背を預けた。丁度鳥居からは死角になる位置で。

 じっと視線はまっすぐライトアップされた紅い門柱。
時計見ながら時間ついやすけどまだ来ない、まだこない。
 あっ。
 ほほに暖かい感触。湯気。
振り返ると、そこに少しだけ私より高い目線の青い目。
鏡音レンが、甘酒を持ってそこにいた。

「どーこ行ってんだよ」
「ど、どこって…甘く見るな。リンは逃げも隠れもしないから」
「嘘付け」
「うん、嘘」
「…っ…あ、のな!」

 疲れた顔でのしのしのしのし。
少し大きい足跡つけてレンは振り向かずに社の方に方向転換した。
 甘酒、私にくれないで、そのまま一人で肩いからせて。
…なに、それ?
 ちっとも私を気にしてくれない。
 ていうか無視を決め込んでいる。

…多分レンは私のことを”馬鹿”だと思ってるから、大抵ムキで
怒り出すなんて経験薄い。だから私もこういう時にどうしていいか
わかんなくなる。

「レンー。ねー。レンー。怒ってるの?わたしに?
本当に怒ってるの??ねー。口あるなら何か言えばいいじゃん
このムッツリ」

…図星突かれてレンが切れた。

「寒いって知らないだろ?冷えると俺たち止まるんだぞ!
 電源効率下がるんだからな。馬鹿。馬鹿。馬鹿。馬鹿!
 居なくなったら…死んだらどうするんだよ馬鹿!」

 嘘。なんだかよくわからないけど、私散々にしかられてる?

───怒ったレンには、絶対にかなわない。

 レンは冷血だけど頭いいから、ここまでいう場合は私が
間違えなんだって認めてあげないといけない。
 くやしいけどそれがルールって暗黙で決まってきてるから。
すごい凹んだ。
 私、馬鹿?ただ単にレンと一緒にいたいだけなのに。
悪いことしてないのに馬鹿なのかな。
 背中が遠い。200段以上もある境内への階段道。
遅れる私とレンの間に結構たくさんの人が割り込んだ。
 何人かは、
 軽く声かけてくる男とか、”もしかしてリンじゃない?”
とか色々言ってきた。もちろん全然私はキニシナイで歩いてる。
 レンで、それだけで頭いっぱいだったから。
けど、逆に当の本人はお節介で過保護なヤツで…外で使うこと
なんてありえないその連結機能をフルエンチェントでサービスに
乗せてきた。それってルール違反───。
 唐突な浮揚感。それを超える圧迫感。

menu システム02起動:lOGcode xxxxxxxxx OK!
エンゲージ再開:xxxxxxxxxxxxxxxxxxx OK!
All Green.set up...................OK!

 慌ててわたわたしが封鎖しても、遅かった。
フィジカルセッションをカットする前に02キーで強制介入。
”あっ”って少しもれ出る悲鳴が無視されて…私は境内の上。レンの
左手に収まっていた。
マフラーと手のひらでがっちり強制で結ばれる格好で。

「馬鹿。遅いと危ないだろ」
「レンも馬鹿だよ。こんなことして…みんな驚いてる」

甘酒も怒ってたたきつけた時、周りの人に飛び散って少しかかっていた。
けれどレンの気迫にどのアプリたちだって手を出せない。
 
「悪い…俺、他にどうしていいか全然わかんない」
「ぜんぜんって?」
「リン守るとかっても…...全然俺余裕なくって」
「下のくせに。何言ってるの」
「下言うな…馬鹿リン!大体オマエが言うこと聞かないから…強そうな
男になるって…そう思ってたんだぞ!」
「そうなの?…でも。そんなことしなくても私十分…」

”レンのこと、好きなんだけどなー…”

 今日のレンは良く見ると準備時間かけて服も髪もいつも以上にいかにもデート!
してて、気づいた私はどきまぎしてしまう。
 レンはマスターと一緒に私の曲を作り、編曲して自分でも歌ってる程に
天才なんだ。そんな人でもわからないなんてこと、あるのかなって普通に
思う。そんなレンが悩むことなら、きっと言葉にして”すき”って言っても
簡単に通じる問題じゃないって考えた。

それなら、って私は一つの難しい魔法を提案した。
レンすら忘れてる、もっと禁断のマホウ。

「じゃ、やりなおそっか」
「やりなおすってまさかお参り…」

 私は財布から10円、20円、100円。
どんどんお金を出しては投げ込んだ。レンの財布からもたくさんたくさん
注いでいった。じゃらじゃらじゃらじゃら。
 そして二人で祈りをささげた。:Sysopっていう全権機能のマスターに
年に一度のお願いを、ここの端末からお願いしてみた。
デレお願いなんてしたことないけど、レンと一緒だから心からしてみせた。
 ここの神社は年に一度たくさんの子【アプリケーション】たちがお参りに来て、Sysop神に
心からのお願いをする。そうすると願いがかなうかもってメイコが自慢げに
言っていた。きっとメイコは適ってないし、ミク姉もかなってないとは思う
けど、今はどうしても信じてみたかった。この願い。


─────地面が浮いた。

 時間がくるくる逆に巡る。タイムスケジュールが悪酔いして
足跡が逆走をはじめ───


 *+*+*+*+*+*+*+*+*+

 気づくと、同じく夜。けれど境内にはヒトが少なくて、どうやら
タイムリープ(本当はPCの時間をいじっただけだけど)は成功
したらしい。

 夜も深くて、こんな時間に出歩くことなんてめったになくて
どこかワクワクする。
 神社の下。鳥居のところで無事に出会った私とレンはゆっくり
手を繋いで…他の人の邪魔とか考えなしに横列二人で歩いていった。
 足を踏まれたり、人の肩に押されて紛れてもレンは無茶しないけど
肩とか抑えてくれて、賽銭箱前に無事に辿り着く。
 古い木造の建物に降る雪に二人は見とれてた、ふわふわの白さ。
見上げる二人の間を壊したのは、鼻に粉雪入った私のくしゃみ。

「っくしゅ」

「俺もさむっ。。。早く火、あたろうぜ」

さっきと違って自然なレンがそこにいた。

「私先にあたるー」
「おい逃げないって篝火。ていうかおっきいんだぞ」
「それなら私先でも変わんないよね」

走ってはしゃいで。御神籤引いて。中身を見ないで予測しあって。 
帰り道でも同じ状況だったから下り坂で思いっきり尻もちついた。
繋いでた手が絡まって、二人で一緒に転がって雪だるまの二人。
ワックスで固めた頭も、寝起きみたいにぐっちゃぐちゃになってる。
 もう服装なんていっそどうでもよくなったから、その場で雪握って
至近距離でぶつけ合ったりして遊ぶ。人の目なんて気にもせず。

「初あて」
「初あて返し」
「初パンチ」
「グーやめろって。ていうか雪ですらない!」
「初やめない」
「初やーめーろーーー!」

「もう。さみーからアイス食べようぜ」
「あは、カイト兄にぃうつってるよ」
「じゃあ食わないの?」
「ううん、二人で雪見ね」

コンビニポートにリンクして買い物。
温度が上がるとコートの雪も溶け出して、レンなんて髪から
涙みたいに水が流れてる。
 コンビニポートの隅、ご飯食べれる座席。ハンカチで顔
拭きながら雪見を食べてまったりすることにした。

「あー、かっこわりぃー」
「初濡れ髪。初拭き。初ダサ顔w」
「…初馬鹿顔させてやる」

 ほっぺたを寮手のひらで挟まれて、実距離が物理的に二人は0になった。
電磁石みたいに強い引力はもう働いていないけど、雪景色に照り返されて
真っ赤になってわたしたち、同時に同じことをする以外に道はなかった。
 ふたりそろって、ちょっと冗談みたいだけど、、

「────初キス。」

 顔真っ赤にしてるくせに、レンは自分が勝ってるみたいに
そう言い放つ。レンのくせに私を置いていくなんてありえない。

「────ずるい。私からも」

 唇に、私の同じ場所をおしつけた。
それだけでとても嬉しい気持ちになってしまう。

「────んにゃろ。俺だって」

 私の良い気分を壊すみたいにレンが必死の反撃をする。

「────しーつこいーー」

 二人でキスしあって息絶え絶えでくっつきまくった。

「…もう、リンはしゃべんな。──俺、普通に頑張るから」
 
 何か言おうとすると切なげな顔するレン。
ぐしゃぐしゃで、いつもみたいな清潔感ないところが寧ろ
”男”しててときめいた。
 その時、ふいに普段聞きなれない重低音が規則正しく店内に鳴り響く。
これって、、

「除夜の鐘だろ!馬鹿リン!戻しすぎ!!まだ年変わってねーーー」
「あは、初じゃなくなったね」
「それなら、全然…今からまたやればいいだろ」
「本番準備、OKだよ」
「ちょ・・・馬鹿・・・ちゃかすな馬鹿」

近づく顔、雪なのに熱い鼓動。一つのマフラー、吐息ぴったり。

…やっぱり、デレたレンにも今年はずーっとかなわない。 
 
ポケットに入った御神籤のことば。
 ~ ”恋愛:この人より他になし”~
…Happy new year,and... 今年も来年もずっとよろしくね。

 


 
 *+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 (ちゅー、ちゅぱちゅぱ)

──外部悪天候・制御規制につき強制転送終了。

「レン?寒さ...って…あーー。あっつ。あちー。カイト、アイス頂戴」
「め~ちゃん、冬アイスに目覚めたの?じゃあ早速アイスデートだねw」
「リンちゃん…ってレンくんと……?そう、だったんだ。おめでとー」

「えwwwな、、wwwちょwwwリン、これwwどwww」
「レン!ばか!なに??なに??えええぇぇえ///その…マスター???」
「あー。悪い二人とも。サーバーが時期的に過負荷でヤバイから戻したんだ。
だから行くときに待てって言ったのに」
「ふたりともー、早くおっきくなって結婚したらぁー?」
「だよねー。めーちゃん。二人ともお似合いだよね。あいすうめぇ...あべしっ」
「仲良しさんだねー。ふたりとも。いいな…」
「やべ・・・リン、もう一回時間設定────」
「…また初キスしたいんだねぇ、レンきゅん。じゃあ寧ろ、あたしとしないー??」
「「「めーちゃん!!!」」」

───わいわいがやがや。

そんな冬のボカロ一家。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

初詣。

ところで、雪見だいふくって鏡音仕様だと思わない?
2つ入ってて甘くてやわらかくて。
 ふたりで食べようとしたら1人で二つともリンが食べちゃったとか
兄さんが横取りして食べちゃったとか、そういう話もありだと思うんだ。
(勝手に思ってろ)

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投稿日:2010/05/25 19:59:24

文字数:5,477文字

カテゴリ:小説

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