双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十八

投稿日:2008/09/09 19:43:36 | 文字数:1,963文字 | 閲覧数:90 | カテゴリ:その他

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ちなみに、この世界に、お金というものはありません。そういうわけで、“安”には、安いという意味はありません。そこのところ、理解してくださると、嬉しいです。
 あと、“満月のつがい”ですが、つがいには、夫婦の意味はありません。恋愛感情どころか、異性がタブーな世界ですからね。そもそも、出生が歌と花ですし。
 蓮と鈴が喜んだのは、まだ、半月である彼らが、二人で組むことによって、満月になる。それが、とても、自然なことであると肯定してくれた言葉だからです。

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TEXT
 

 そして、最後に残ったのは、今までの闇とは、比べようもないほど、大きくて、歪(いびつ)な形の闇だった。
 蓮は、剣を構えると、歌おうとした。そのとき、憑かれたように、鈴が、その闇に、歩み寄ったのだ。
「貴方、どうして、隠しているの?」
「鈴!? 危ないから、近寄っちゃ駄目だ!!」
 澄んだ声を、闇に投げかけながら、さらに、歩み寄ろうとする鈴を、蓮は、手を引っ張って、止めようとした。
「危なくなんかないよ。蓮と鈴の敵でもないし、魔でもないよ。ヤミに、つかれないで。蓮。ちゃんと、見て」
 神託を語る者のように、鈴の声は、凛としていて、清らかだった。
 だから、蓮は、素直に、闇を見つめた。何とか、敵だと思わないように、その闇を理解しようと、努めた。
 でも、どうしても、剣を収めることは、できなかった。
「驚かせちゃって、ごめんね。私は、鈴。月の姫神子だったんだけど、空の国を抜け出てきちゃったから、ただの鈴。それから、やっぱり、月の神子だったんだけど、水の国を、出てきてくれた、私の大切な人、蓮よ」
 鈴は、闇に向かって、安心させるように、招くように、両手を広げて、そう言った。両腕を開くように、簡単に、鈴は、心を開いてしまうのだ。
 ぼんやりと、鈴を見て、それから、闇を見た。闇は、動揺しているのか、揺らいでいた。今にも、抜け落ちそうだった。必死で、その闇を被っているようだった。
「貴方は?」
 鈴の手が、そっと、闇に触れる。闇が、大きく、震えた。それは、恐怖からでもあった。
 でも、それ以上に、大きな驚愕と、安堵と、喜びだった。
「睡糸闇(スイート・アン)」
 美しい響きが、零れ落ちた瞬間に、闇が剥れ落ちて、そこには、金色の髪の、美しい女性が立っていた。その女性の喉には、痛々しい縫い目があった。
「そんなのおかしいよ。貴方は、闇を纏っているけど、闇じゃない」
 鈴が頬を膨らませて、そう言った。創造の神にでも、迷わずに、食って掛かりそうな鈴の心が見えるようで、蓮は微笑んだ。
「半月の貴方たちが、私に、それを言うの? 朔の私に」
 “朔”そうか。灯らない月。そういうことなのか……ふいに、朔の夜に繰り返していた儀式を思い出した。
 ヤミニツキトラワレタ。まさに、彼女こそが、そうなのだ。
「うん。言うよ。貴方は、新月でもあるもの。だから、私たち、同じ色よ」
 鈴の言う通り、睡糸闇の髪の色は、蓮と凛と同じ、金色だった。闇を照らす、輝かしい色だった。
「ねぇ。貴方に、合う、アンの字は、“闇”じゃなくて、“安”だと思う。そう思わない?」
 鈴が小首を傾げて、彼女を見上げる。もう、鈴には、彼女の心が、ちゃんと見えているようだ。
「おかしなお嬢さんね。とても、愛に満ち、満たされている」
 そして、彼女は、月が満ちるように、笑った。その表情は、嘘みたいに、安らかで、穏やかだった。
「俺も、そう思うよ。俺は、鈴と違って、愛に満ちてないだろうけど……確かに、闇から、抜け出た、あんたは、とっても、安らかで、見ているだけで、ほっとする」
 蓮は、剣を収めていなかったことを思い出して、しっかりと、収めると、ゆっくりと、そう言った。
 嘘偽らぬ本心だった。だから、蓮も、自然に微笑っていた。
「いいえ。貴方も、愛に満ち、満たされている。満月のつがいだわ」
 そんなこと言われるとは思っていなかったので、蓮は、目を瞬かせた。そして、その言葉は、“満月のつがい”とは、最上の褒め言葉だった。これ以上、嬉しい言葉は、とても、とても、蓮には考え付かなかった。
 鈴が幸せそうに、蓮に微笑みかける。ああ……鈴も、嬉しいのだ。蓮と同じくらいに。鈴にとっても、最上の言葉なのだ。
「ありがとう。貴方たちが、そう呼んでくれたら、私も、自分が好きになれそうだわ」
 鈴と同じ顔で、微笑む彼女、睡糸安を見て、蓮は、気付いた。そう呼ばれることこそが、彼女にとっての、最上の言葉なのだ。
 長い間、誰にも会うこともなく、闇に、付き添い続けた彼女にとって。
「うん。睡糸安。貴方、とっても、素敵よ」
「まぁ、お互いに、頑張ろうな。睡糸安」
 二人が、口々に、そう呼んだ瞬間、東から、光が射してきた。
 そして、それが伸びたように、蓮と鈴の前に、光の道が、ひかれたのだ。
「ありがとう」
 淡雪のような声がして、蓮と鈴が、振り仰いだ時には、もう、睡糸安は、いなかった。
「大丈夫。また、逢えるよ」
 泣きそうな顔で、見上げる鈴の手を、ぎゅっと、握って、蓮は言った。
「うん。絶対、また、逢いに来るから!」
 鈴は、叫んで、反対の手を振った。蓮も、手を振った。
 睡糸安には、見えているに違いない。だって、彼女は、蓮と鈴の、親愛なる月の姉なのだから。

リンとレンが好きです。公式設定も、双子のボーカロイドっていうのも、美味しい設定だと思います。
音感は、さっぱりですが、音楽は好きです。
詩は書きますが、私が、歌詞を書くと書きにくくなりそうな気がしますので、とりあえず、リンとレンメインの小説を書きたいと思います。
歌詞も、そのうち、上げます。

ちなみに、名前は、和沙と書いて、なぎさと読みます。わかりにくくて、すみません。

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