風が豆を転がして
街まで香りが追ってくる
揺れる視線の影
心を撫でていく
「おいで」の音に誘われ
白い扉をくぐった
カウンターの向こう
グラスが微かに
甘やかさが胸を溶かして
日常がひと雫、消えた
藤の豆が香る静まるカフェ
午後がリズムに乗り踊り出す
匙をひとすくい
白の丘が揺れる
焦がれた夢の甘さに
息を止めたまま
微笑む
時間の粒が
ひとつずつ落ちていく
音のない旋律
鼓動がそれをなぞる
心の奥で
見えないドラムが鳴った
甘さの裏側 潜む
震える手
「あと少し」と囁く
その声が遠くなり、消えた
白の海が波打つたび
舌の上で光がはじけた
香ばしさが背中を押し
僕は揺れながら進む
匙を置いた瞬間
戦慄が胸を駆け抜けた
午後の音が止まり
僕の中
旋律だけが残った
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