ヘルフィヨトルが目を覚ましたのは朝の5時だった。
寝たのは一時。起きたのは5時。
睡眠時間をy
就寝時間をx
起床時間をz
とする
y=z-x
本文よりx=5 z=1
よってy=4
よって解は「寝不足」となる QED
…………まったくもって不必要なことを書いてしまった。
風に当たるためにとりあえず甲板に出る。
霧の所為で周りは真っ白で何も見えない。
10分ほど風に当たると彼女は室内に戻った。
コーヒーを一杯注ぎ、本や紙、ペンなどを取り出す。
のんびりとすすりながら、彼女は本を読んだり、武器を書いたりした。
それから三時間。
コーヒーも党に飲み干し、ひたすらに机に向かっていた。
グ~~。
一人で周りに誰もいないとはいえ、腹の鳴りに少し赤面する。
(そろそろ朝食食べよっと)
そう思い、ヘルフィヨトルはポポットからバックをひとつとり出した。
中にはパンが入っていた。
ソーセージパンのようなものを取り出して、食べ始める。
ついでにコーヒーも注ぐ。
やはりお腹が減っていたのか、そのパンはけろっと食べきる。
(うん、もう一個いけるかな)
ヘルフィヨトルは今度はバックからメロンパンを取り出した。
勢いよくかぶりつく。
だが。
だが、しかし。
だが、しかし、彼女は。
小食だった。
初めは勢いよくかぶりついたものの、数口も食べるとそのスピードは一気に遅くなり、半分辺りに来るともう口が進まなくなった。
「…………」
(どうしよう……)
ヘルフィヨトルは悩み始めた。
(捨てるのはもったいない。でも、もう食べられないし…………)
彼女は食べかけのメロンパンを見つめる。
(う~~~~~~~~ん)
悩んだ挙句に彼女はゆっくりとゴミ箱に歩を進めた。
「ごめんね」
悲しそうに謝ってポトリとメロンパンをゴミ箱に入れた。
「ごめんね」
もう一回そう呟くと、彼女はきびすを返し机に戻った。
そして、また本を読み始めようとしたときだった。
(あ!)
ふと思い出し、ヘルフィヨトルは自分のバックをあさり始めた。
「あった!」
そう言って出てきたのは…………
小さなチーズケーキ。
それをスプーンでおいしそうに食べ始めた。
先ほどあんなに悩んでまでして食べるのをやめたのは何だったのだろう。
いや、これが別腹というものなのだろう。
メロンパンが一人、ゴミ箱で嘆いている気がした。
船が港に着いたのは昼食を食べ終えて少しあとの一時過ぎだった。
着岸のために縄を巻きつけたり、安定のために帆を畳んだり、降りるための道をとりつけたりで時間がかかり、船を落ちたのは2時だった。
もちろん街中なのでコーゼンザスは使わず、馬車に乗った。
前日と同じように街の外れまで送ってもらうと、そこからコーゼンザスに乗った。
だが、実はまだ本格的な旅行は始まっていない。
今ヘルフィヨトルが向かっているのは、ある親友の家だった。
その親友の名前はカンタータク。
ヘルフィヨトルからは「タク」と呼ばれている。
タクはヘルフィヨトルのことを「ヘル」と呼んでいる。
彼はまだ若い男性だが、素晴らしい鍛冶屋である。
一般の鍛冶屋の比にならないほど素晴らしい武具を数多く作っている。
また、武具だけでなく、金属のものであればアクセサリー等幅広い範囲の品まで作ることができる。
ヘルフィヨトルもいろいろと作ってもらった。
その関係で話す機会が多くなり親友になった。
カンタータクの家に着いたのは3時半ごろだった。
彼は家の前で待っていた。
「タク!」
ヘルフィヨトルはタクに駆け寄った。
「お久しぶりです」
「ヘル、久しぶり。旅行誘ってくれてありがとう」
現代の大学生のような彼だが、さきほども言ったとおり、立派な鍛冶屋だ。
「いえいえ。こちらこそ来ていただけるなんて」
彼はもちろんヘルフィヨトルがワルキューレであることを知っている。
でも彼にはそれは関係なかった。
人間でも女神でも友達は友達、親友は親友であるからだ。
「さて、立ち話も何だし家に入ろうか」
「はい」
嬉しそうに微笑んでヘルフィヨトルは答えた。
午後丸々、二人は楽しく話をした。
最近の話、これからする旅行の話、武器のデッサンや鍛冶屋の話。
話が尽きることはなかった。
気付くと外は真っ暗になっていた。
「そろそろ食事に行かない?」
「いいですね」
カンタータクの言葉にヘルフィヨトルは同意する。
「どこかおいしいところ、知っていますか? せっかく港町だから魚料理が食べたいです」
「そうだな……じゃあ、前に食べたあそこがいいんじゃない?」
カンタータクの言葉にヘルフィヨトルは記憶をたどる。
「あそこですか。いいですね」
二人とも納得したので早速出かけた。
歩いて20分ほどすると目的の店に着いた。
大きく「魚屋」という看板を抱えている。
二人はそこに入っていった。
席に案内され、魚料理をいくつかとお酒を注文する。
二人はそこでも楽しく話しながら食べた。
本当に話は尽きることを知らなかった。
二人が食事を終えて家に着いたのは9時近かった。
「では先に私がお風呂に入りますね」
そう言ってヘルフィヨトルは着替えとタオルを持って更衣室に行った。
浴室は更衣室からつながっている。
ただ、トイレも更衣室を経由していかなければいけなかった。
(これがちょっと大変なんだよね)
ヘルフィヨトルは服を脱ぎながらそんなことを考えていた。
(特にタクは鍵閉めちゃうからね。お手洗いに行きたい時もいけないし。まあ私は閉めないから!)
そう心の中で叫んでヘルフィヨトルは浴室に入った。
だが、昨日のような大した湯船ももちろん普通の家にはないので、簡単に体や髪の毛を洗うだけにした。
と言っても、長い髪の毛を洗うのはそれだけで一苦労なのだが。
「やっぱり、お風呂はいいですね」
20分ほどかけてゆっくりと洗い、タオルを巻いて浴室から出た…………いや。
出ようとした。
鼻歌でも歌いそうなほどいい気分で浴室のドアを開けた。
だが…………。
「△※◎▼□☆●◇!?」
バン!
浴室のドアを閉め、唖然としたようにドアによりかかる。
「おおい、ヘル、どうしたんだ?」
更衣室から聞こえてきたのはカンタータクの声。
タオルを巻いていたとはいえ…………。
「早くその部屋から出てください!!」
「え? いいけど」
悪びれた様子もなく言ってから、ガタンとドアがしまる音がした。
ヘルフィヨトルは恐る恐るドアを開いた。
(だ、誰もいないよね?)
しっかりと確認してから浴室を出る。
「あんなに怒鳴って、さっきはどうしたんだ?」
不思議そうに尋ねてくるカンタータク。
こういう点に関してはなぜかすごく鈍感な彼だった。
「バカ」
「え???」
「タクのバカ」
その言葉にカンタータクは本当に不思議という風に首をかしげる。
「俺何かした?」
「バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ」
ポカポカとカンタータクを叩きながらヘルフィヨトルは言った。
「と、とりあえず俺風呂行ってくるね」
そう言ってカンタータクは更衣室に逃げ込み、ガタンとドアを閉めてガチャッと鍵を閉めた。
「あ! 逃げるな~~!」
そうヘルフィヨトルは言ったが返事は返ってこない。
(ふん、風呂が出てきたら言ってやるんだから!)
ベッドの上でヘルフィヨトルは少し腹立たしそうに思った。
だが、カンタータクが風呂を出たとき、もうヘルフィヨトルはすやすやと寝息を立てていた。
コメント9
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ご意見・ご感想
Hete
ご意見・ご感想
メロンパン・・・・
もったいない・・・
タクさん・・・超鈍感。
2009/10/18 06:40:03
ヘルケロ
ご意見・ご感想
あげたいけどもうない><
タクさんは…………そういう人なんですw
あ、実際にタクさんのもとになった人はいませんよ
2009/09/02 17:03:14
ばかぷりんす。
ご意見・ご感想
メ、メロンパンがかわいそうだ・・・(T_T)うう・・
メロンパンいらないならください!!
ついでにチーズケーキも食べたい!!
あとタクはどうしてそんなに鈍いのかなぁ~・・・?
2009/09/02 14:34:15
ヘルケロ
ご意見・ご感想
ズルいって^^;
ごめん、別腹なんです><
そして、メロンパンはきっともう焼却炉に…………
2009/08/21 20:30:13