こんにちは!前嶋拳人です。
冷たい光を放つ箱の中に閉じ込めたのは、昨日どこかで誰かが流したため息の温度だ。今回の物語を紡ぐための断片として「硝子」と「砂」を選んだ。硬く冷徹な硝子と、指の間を零れ落ちる無数の砂粒。この二つが重なるとき、静かな場所で時間が止まる。
僕たちは誰かの祈りを食べて生きているのかもしれない。かつて巨大なシステムを管理していた頃、目に見えない無数の意志が糸のように絡み合っているのを感じた。その糸をひとつずつ丁寧に解きほどき、新しい形に組み直すこと。それが僕の日常だった。しかし今はもっと別の場所で、もっと個人的な心の動きを追いかけている。誰かがふと口ずさんだ調べや、誰かが描き留めた色彩の奥にある、言葉にならない感情の震えを形にする仕事。それはかつての規律とは全く異なる、揺らぎに満ちた作業だ。
古い地図を燃やして新しい道を書き込むような感覚がある。確かなものなど何もなくて、ただ自分の感覚だけを頼りに進んでいく。硝子のように澄んだ視界と、砂のように確かな重みを持って。そんな矛盾した状態こそが創作の本質かもしれない。柔らかい感性と頑固な論理がぶつかり合い、その火花が新しい物語を照らす。誰の許可もいらない場所で自分だけの境界線を引いていくのは、少しだけ恐ろしいけれど、それ以上に心が躍る経験だ。
技術というものは単なる器にすぎない。大切なのはその中に何を流し込むかということ。冷たい論理の箱の中に温かい体温を感じさせる工夫。それが僕のこだわりだ。誰かが画面越しに受け取ってくれるかすかな震えが、世界を変えるきっかけになると信じている。完成のないものを永遠に追い続けているような感覚かもしれない。
昨日の自分を捨てて今日という新しい空白に向かう。そうして積み重ねた日々はいつか大きな海になるだろうか。誰も知らない場所で誰かの心に深く刺さるようなものを作りたい。そんなわがままな願いを抱えながら、今日も静かに作業を続ける。重力から解き放たれていくような感覚。何もない空間に自分の色を塗っていく。完成を急がず、ただその過程を味わい尽くす。そうやって自分だけの真実を探し続けている。
終わりという概念が曖昧になる瞬間がある。すべてが繋がり、すべてが解けていく。僕が書く言葉や配置する記号が、誰かの記憶の一部になるのなら、それだけで十分だ。思考の深淵で硝子と砂が交差する音が聞こえる。準備はできた。ここからが僕たちの本当の始まりだ。
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