「ちょっと誰あの人!」
「かっこいいよね~!めぐみのボディーガードだっけ?」
翌日、早速グモはめぐみのボディーガードとして学園にやって来た。
グモはまだ中学生だけど、成績が良く生活態度も問題ないため、特別ここで授業を受けられるらしい。
確かに顔立ちは整っていると思う・・・
「彼女とかいるのかな~?」
「ねー!いなかったら立候補したいくらいだよ~!」
はぁ・・・
喉の奥から、深いため息が出てきた。
めぐみとは話せないし今日はテストだし、最悪・・・
めぐみと話せるとしてもグモが邪魔だし・・・
しかもこの間の授業早退して全然やってないし・・・
廊下側の席に座っていた私の前に、ひらひらと一枚の紙切れが落ちてきた。
(何だろ?)
紙切れを見ると、見覚えのある丸い字でメモが書かれていた。
『ルカと話せない↓つまんない↓今日テストがんばろーね♪ めぐみ^^』
めぐみ!
廊下側を振り返ると、めぐみはニコリと笑って歩いて行った。
そのめぐみの仕草に気づいたのか、グモは私の方を振り返りギロリと睨んできた。
私も負けじと睨み返した。
「ルカ!誰あの人!!」
マナが私の机の前に来て、もう小さくなったグモを指差した。
私は事情を話した。
「え~!!そうなんだぁ!そんなに成績いいの!?」
「うん・・・らしいよ」
突っ込みどころそこ?
「じゃあ、ルカめぐみと話せないんだぁ・・・ていうか、そこまでする必要ある!?ルカが直接めぐみに何かした訳でも無いじゃん!」
「・・・うん」
「話しかけちゃえば?」
「そうしようとも思ったんだけど、どうせグモが邪魔してくるだろうし・・・こんな一枚の紙切れの手紙貰っただけでも睨んでくるんだから!」
私はマナの目の前にめぐみから貰った手紙を突き出した。
「こんなんだけで!?」
「そうよ。もうばかばかしいったらありゃしない・・・」
母音はチャイムでかき消された。
「あ!時間だ!!ウチ教室戻るね!ばいばーい」
「じゃーね・・・」
「そんな気落とすなって!」
マナが笑いながら言った。
まだ半ば上の空の私の前に、容赦なく答案用紙が配られた。
(・・・あ、よかった)
得意な歴史だったことが唯一の救い。
止まることなく、案外すらすらとペンを進めていけた。
(あー、終わった・・・)
トイレで手を洗っていると、鏡越しに後ろから抱きついてくる人影が見えた。
「ルカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぐえぁ!」
あまりにもきつく閉められて、声帯がおかしくなったような声が出てしまった。
「だ、誰!?」
「あたしだよーん!」
振り向くと、
「めぐみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
満面の笑みを浮かべためぐみが居た。
私もさっきのめぐみより強い力で抱きしめた。
「ルカがトイレ行くとこ見て、グモに嘘ついて来ちゃったんだ♪」
「そっか~・・・」
「でも、今日グモの事テストの補習って言って早く帰らせるから一緒に帰ろうね!」
「うん!」
「めぐみ!」
女子トイレのはずなのに、男の低い声が響いた。
「話すなっつっただろ!何やってんだよ!!さっさと出て来い!!」
トイレの入り口でグモが叫んでいた。
「あー!もう!!うっさいな!話してなんかないっつーの!!」
めぐみは叫んでから帰りね、と言ってトイレから出た。
「だーかーら!補習だから早く帰れっつってんでしょ!?」
「帰れねぇよ!俺が何のためにここに来たと思ってんだ!?」
放課後。
隣の教室からめぐみとグモの争う声が聞こえてきた。
「あんた門限7時でしょ?早く帰らなきゃ怖~いパパママから怒られちゃうよ?あたしのボディーガードは門限までだったわよね?」
「うっ・・・」
少しの間の後グモは、絶対一緒に帰るなよと吐き捨て、教室を後にした。
グモの足音が完全に消えた後、教室のドアが勢い良く開いた。
「帰ろー!!」
「うん!」
私とめぐみは、藍色に飲み込まれた廊下を、二人で話しながら歩いた。
「でさー・・・」
めぐみが言ったその時。
「・・・やっぱりな」
私の前に黒い影が現れる。
「グ・・・モ・・・・」
いつものグモなら、めぐみは反論できただろう。
自分がいつも反論しているようなグモなら。
今のグモは、眉間にしわを寄せ、目はつりあがり、怒りに満ちた表情だった。
「あんなに言ったのに――」
「やめて!」
グモは私に向かって手を振りかざした。
私を思いっきり殴る――と、思いきや
「こっち来い」
「え!?」
私の腕を掴み、教室のドアに手をかけた。
「めぐみ、お前はもう帰れ。お前の父さん母さん心配すんだろ」
「じ、じゃあルカの事も帰して!」
「俺は話があるんだ。すぐ終わるから早く帰れ」
「でも・・・」
「私は平気よめぐみ。それにグモの言うとおり、今はお父さんとお母さん、特に心配すると思うから・・・」
涙目のめぐみを安心させようと、笑顔で言った。
「ぜ・・・絶対、早く帰してね!暴力なんてふらないでね!絶対だよ!?」
「分かってるよ、すぐ終わるし暴力なんてふらないから」
「絶対ね!」
めぐみは何度もこちらを振り返りながら、廊下の闇に飲まれていった。
「・・・来い」
「・・・分かってるわよ」
グモの手を振りほどいて、自分から教室に入った。
「で、ご用件は?」
「めぐみに近づくな」
グモは壁に寄りかかった私の真横に手を打った。
「・・・嫌よ」
「そう言うと思ったよ」
「!?」
腕が動かない。
私の腕の自由は、グモによって奪われていた。
グモが私の腕を壁に押し付けていたのだ。
「殴りたいなら殴れば?私は殴られたことをめぐみに言うつもりもないし、それであんたの気が済むならいくらでも殴られてあげ・・・」
口が塞がる。
「ん・・・ん!?」
グモが私の唇を塞いでいた。
「何す・・・!」
「こうでもしないと言う事聞いてくれないだろ、あんた」
「ん・・・!やっ・・・嫌!」
私の制服のボタンを一つずつ外していく。
グモの指が、私の肌を滑る回数だけ、私の頬に涙が伝う。
「んん!嫌!やめて・・・!」
しゃっくりが叫びを邪魔する。
「嫌!嫌い!大嫌い!あんたなんか嫌い!触んないで!!」
グモの顔を引き剥がそうとしても、力が強すぎて抵抗できない。
「誰か助けて!」
「無理だよ、ここにはあんたと俺しか居ない」
その言葉に、寒気がした。
「う・・・あ、うぐ・・・ひっく・・・・」
涙が次から次へと溢れてくる。
グモの触った所が凍り付いていくように冷たくなっていく。
涙が、何かにすくわれた。
「・・・泣くな」
グモが私の涙を舌ですくっていた。
何でこんなことしてるのに、そんな事言うの?
なら、こんな事しないでよ!!
「んっ・・・!」
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