朝の満員電車は辛い。
今は冬だからまだいいけど、夏なんかもう最悪。今だってマフラーをしてる首あたりが汗ばんでるし。
でも最近はもっと嫌いだ。その理由は…。
背後からハアハアと荒い鼻息、そして腰からお尻にかけての違和感。
これは多分、痴漢だと思う。がっつり撫でてきてるし、正直気持ち悪い。
最初は手の甲で軽く撫で付ける程度のものだったが、最近はお尻を掴まんばかりに触ってくる。
私的には「ちょっと、朝から人の身体で盛らないでくれます?」ぐらいは言いたいのだが、部活に遅れるのは勘弁だし、こんな所で悪目立ちしたくない。いや、悪目立ちするのはこの痴漢か。
普段は何も考えずにいるため俯いているのだが、今日はぼーっとしていたのが駄目だったらしい。痴漢が手を腰からお腹、お腹から…と触る場所を変えてきたのだ。
いけない、これ以上は流石に言わなきゃ…と思っていたら、いきなりその手が身体から離れた。
「この人痴漢です!!!」
私はいきなり手が離れたことと、その手が上に挙げられていること、そして声を張り上げた人が同じ制服を着ていること…とにかく驚くことが多すぎて頭の整理が付かなくなった。
その間、周りの視線はこっちに集まり、私の身体を触っていた張本人は怒り顔で握られた手を見ていた。正直、ざまあみろとしか思えない。
そう思っている間に駅に着き、乗客は自然と道を開けたので、私もその集団に混ざる。痴漢とそれを訴えた人を通すためだ。…だけど、当事者の私も行かなきゃいけないよなあ…。そう思いながら、2人の後を私もついて行った。
「だから、俺はやってないんだって!!」
「いいえ!!こいつはやってましたよ!!」
駅員室で言い争ってるのは、黙ってれば少しはハンサムじゃないかって感じの痴漢さんと、助けてくれた女子高生──その正体は部活の先輩、それもイケメンと呼ばれ女の子からの人気の高いリリィ先輩だった──で、駅員さんも困った顔をしている。
「頼むよ!!俺だって仕事いかなきゃなんだよ!!こんなガキの戯言に付き合ってられねえよ!!」
…ガキの戯言って…まあ確かに気持ちはわかるけど、先に触ってきたのはそっちでしょ?こんな事言われる筋合いはない!!
「まあまあ落ち着いて…金髪のあなたが痴漢されたんですか?」
「あ、いえ、アタシじゃなくてこの子なんです…」
「君が?それは本当ですか?」
「…まあ、はい」
え、何で疑いの目で見てくるの?まあ私は確かに先輩と比べれば胸もないですし不細工だし地味ですけど??そこの痴漢に聞いてくださいよ。
実際何回もこの人にやられました、というと駅員さんも納得してくれたらしく、個人情報と連絡先だけ聞かれて私達は開放してくれた。ちなみに痴漢は御用らしい。ざまあ。
「いやーユキ、災難だったね」
「本当に…。先輩、助けてくれてありがとうございました」
今まで、こっちを見てくれる人は何人かいたけど、揃いも揃って見て見ぬふり。こうやって助けてくれたのはリリィ先輩が初めてだった。
「いいのいいの!!でもユキ、こういうのはちゃんと叫ぶなり何なりしなきゃダメだよ?痴漢いつからやられてたの?」
「…3週間前くらいですかね」
「はぁ!?何で何もしなかったの!?」
「めんどくさかったからです」
そう答えると、リリィ先輩は呆れ顔でため息をついた。
「…もう部活間に合わないね」
「先輩いいんですか?大会もうすぐですよね…というか受験…」
「いいよ帰りにも走るし。あと受験はー、まあ、うん。特別措置って知ってる?」
先輩はこういう時、いやいつもだけどすごく軽い。あと特別措置ってなんですか知りませんよ。
簡単に言ってしまうと、リリィ先輩は大学受験はせず、就職も決めてないらしいけど、将来は確約されてるんだとか。訳が分からない。
…痴漢とか正直滅びろって思うけど、こうやって部活をさぼって先輩と2人でっていうのも、まあ悪くないかな。うん。
「まあそういうことだし、まだ学校行くには早い時間だし、喫茶店にでも寄ってく?」
「先輩が奢ってくれるんですか?」
「……300円までならね」
電車【学園ユキ】
久しぶりに筆が進みました。
最初から出てくるのはユキちゃんです。痴漢に対して辛辣なのは仕様です。
でも書いてる時に思ったんですよ。
「こいつ、1人でも対処できるメンタル持ってね…?」
まあそれだとあれなので、我らがリリィ先輩を投入しちゃいました☆
よく考えなくてもこの時期に3年生が部活やってるって変ですね。まあこの時はマラソン大会が近かったってことで目を瞑ってくださいごめんなさい。
あとリリィさんが言った「特別措置」。これについてはまた次の機会に。
さて。
今日はキヨテル先生ユキちゃんmikiちゃんの誕生日ですね!!!だから書いたわけなんですが。
6周年おめでとうございます!!いつもはキヨテル先生ばっか書いてるから敢えてユキちゃんを書いたけど先生許して☆
それではまた…今年中にお会いしたいですw
miki「…え?」(←3人の中で出番が圧倒的に少ない)
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