悪ノ姉弟

投稿日:2008/05/04 10:28:56 | 文字数:2,703文字 | 閲覧数:2,144 | カテゴリ:(未選択) | 全2バージョン

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突発的に書いたのでプロットも何もあったもんじゃないですね。

お目汚し失礼しました~^ ^;

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TEXT
 

※この小説は悪ノP様の『悪ノ娘』『悪ノ召使』を聞いたおかしな人が書いた私的解釈による二次創作です。
悪ノP様とはもう本当に一切関係ありません。
それをご考慮の上ご覧下さい。

また、当然ではございますが悪ノP様から削除しろとのお叱りがあった場合は削除いたします。


原曲
『悪ノ娘』http://piapro.jp/a/content/?id=sjgxgstfm2fg2is4
『悪ノ召使』http://piapro.jp/a/content/?id=ktapoh00jbyf60v3





――ほら、僕の服を貸してあげる。これを着てすぐお逃げなさい――


「ねぇ、私達どこで間違えたのかしら」

少女は少年の姿で自分そっくりな少年の頬を愛しげに撫ぜる。
目も鼻も口も眉も声も髪質さえも鏡に映したかのようなお互いの容姿に、元は一人の人間だったのではないかと錯覚させられる。

「私が王女じゃなければこんなことにはならなかったのかもしれない」
「それは違うよ。頂点に立つのは君でなければいけなかったんだ」

少年は少女を抱き寄せ、甘い香りのするうなじに顔を埋める。
そうすると少女は、少年よりもほんの少しだけ強くきつく少年を抱きしめる。

「そうだとしても、私は緑のあの娘に嫉妬したわ。国民達に苦しい思いをさせていたのよ。それは決して許されるべきことではない」

だから、自分が報いを受けるべきなのだ。
そう言ったのに、この少年は……少女の双子の弟はそれはダメだと頑なに言い続ける。

「無知であることは罪だわ。私が楽しく暮らすために国民にどれだけの負担を強いていたかを知ろうとしなかった私の罪よ」

そう、王女が笑っていられるならば他はどうだって良かった。
国民の声も、隣国のことも

自分の恋心でさえも。

――もうこれで、誰も彼女に逆らうことは出来ない――

少女の笑顔を奪うものはすべて排除されるべきだったのだ。
そう信じていた。

きっかけは少女のほんの小さな呟きだったのだ。

『青いあの人は、私のことを好きになってはくれないかしら。
……ダメね。あの人には緑のあの娘がいるもの』

少年が焦がれるあの娘は、少女の笑顔を奪うものだったのだ。
少女におやつを運んだ後、少年はすぐに大臣を呼び出し告げた。

――緑の国を滅ぼしなさい――

少年の言葉はそのまま少女の言葉として兵士達に告げられた。

これで良かったのだと。
少年は流れる涙を無視して、侵攻する兵士達をぼんやりと眺めながら自分を納得させていた。


「私さえいなければ、私さえ王女にならなければみんなこんなに苦しむことは無かったのよ」
「違うよ。上手くやれなかった僕たちの責任で、君が自分を責める必要は無い」

少年をより一層きつく抱きしめる少女を、少年は優しく撫でてやる。

「でもね、国民はそれで納得してくれないから」
「だったら――」
「君を盾に僕だけ逃げろって?冗談じゃない。君は生きるんだよ」

ぴしゃりと言い放つ。
少年にとって少女の命は自分のそれと比べ物にならないのだ。

「いやよ……いや!私のためにどうしてあなたが犠牲にならなくてはいけないの!?そんなことのための双子じゃないわ!」

泣きじゃくる少女。
先ほどまで自分が着ていた豪奢なドレスに縋り付く。

こんなものを着るような身分に生まれてしまったのがそもそもの間違いだったのだ。
少女はそう、自分達の運命を呪う。

「馬鹿だな。そんなことのための双子だからこうして僕がいるんだろう?」

笑う。おやつの時間に見せるそれのように。

「痛くない、辛くない、苦しくない。僕は一人じゃない。こうして泣いてくれる可愛いお姉さんがいるんだもの」

赤子をあやすかの如く嗚咽を漏らす少女の背中をぽんぽんと叩く。

ああ、死してもなお少女に寄り添うと決めていたのはいつ頃からだったろう。
そんなに最近のことではないはずだ。

「鳥はね……片方の翼だけでは飛べないの。墜落して死んでしまうのよ」
「大丈夫、君は死なない。僕が守るから」

墜落なんてさせないよ。
僕の可愛い姉弟。

安心させるように抱きしめ続ける。
されど、当然いつまでもそうしているわけにはいかないから……

徐々に騒がしくなっていく扉の向こう。
この部屋に王女がいると知られるのは時間の問題だ。

少年は思い切り少女を突き飛ばし、隠し通路のある壁の方を指差す。

「早く行って。ここに君がいると知られたら意味が無い」
「っ……やだ、私も行く!!あなたが捕まるなら私も一緒に捕まるわ!だから、ねえ……お願いだから一人にしないで!!」

いやいやをする少女。
その表情を見て心が痛まなかったわけではない。
だけどそれでも、自分がまいた種に少女を巻き添えにするわけにはいかないのだ。

少女の腕を引っ張って隠し通路のある扉へずんずん歩いていく。
少女の抵抗はあるが、女の子の力ではそれは無いに等しい。

「隠し通路を出たらすぐに左に曲がって。梯子を登ったら地上に出る。
赤い看板がある裏路地があるんだ。そこにジョセフィーヌを繋いであるから。
君は出来るだけ遠くに逃げて。決して戻って来ていけないよ」

長年使用されていなかった扉を力任せに蹴り開けて少女を放り込む。

「いくら顔がそっくりでも、すぐにばれるわ。私達は別の人間だもの」

倒れこむようにして扉の内側へ入った王女に、少年は優しく微笑む。

「大丈夫、僕らは双子だよ。きっとだれにも分からないさ」

扉を恭しく閉じる。
少年がいる部屋に赤い鎧の美しい女性が押し入るのは、ほぼ同時だった。

「この無礼者!」

少女は、少女になりきった少年がそう叫ぶのを静かに隠し通路の扉の向こうで聞いていた。
慟哭も無く、ただただ溢れ出る涙をそのままに崩れ落ちることも無く、扉の向こうの出来事を聞いていた。



教会の鐘が鳴る。
二つの命が生まれ出でた時に鳴っていた祝福の鐘は
刑が執行させる合図と成り代わった。

少年は処刑台に登る。
民衆などには目もくれなかった。
だけど、その小さな人影は見つけようとしなくても見つけることが出来た。

(馬鹿だなぁ。戻ってくるなって言ったのに)

薄く笑う。
鐘が鳴り終わる頃、自分の命は無い。

今にも泣きそうだった少女。
笑っていて欲しいのに。

天を仰ぎ見る。

空が青い。



「あら、おやつの時間だわ」



瞬間、刃は振り下ろされた。

立ちすくむ少女はいつまでもいつまでも少年がいた処刑台を見つめていた。

(プロフィールはありません)

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