※この小説は悪ノP様の「悪ノ娘」「悪ノ召使」の二次創作です。
悪ノP様とは一切関係ありません。
また、私の勝手な解釈による二次創作ですので、その辺をご理解した上で読まれますようお願いいたします。
悪ノP様から削除してほしいとの意見があった場合のみ削除いたします。

原曲
「悪ノ娘」http://piapro.jp/a/content/?id=sjgxgstfm2fg2is4
「悪ノ召使」http://piapro.jp/a/content/?id=ktapoh00jbyf60v3





それから間もなく。
ついに民衆は王女を討つべく立ち上がりました。
赤い髪の女剣士の率いる民衆軍は、王国軍の倍の戦力です。

「どういうことなの?なんなのこれは…。わたし、どうなるの?」
王女はすっかり困惑しきって、少年へと問いかけます。

「…戦争です。この国は、彼らの手によって間もなく滅ぶでしょう」
少年は冷静に、静かな口調でそう告げました。

「ど、どうして…?なくなっちゃうの?このわたしの国が?」
「そうです」
「な…なんでよ!わたしが何をしたっていうの!どうにかしてよ!」
「もうなにもかも遅いのです。…あなたの無茶に、もう皆付き合いきれなくなったのでしょう」
「む、無茶って…なに?わたしはみんなに迷惑をかけていたというの?」
「…そうです」
「どうして!?だって誰も何も言ってくれなかったじゃない!わたしが悪いの!?どうして…っ!」
「落ち着いてください。大丈夫です」
「なによ!殺されるんでしょう、わたしは!それくらいわたしだってわかるのよ!」
「大丈夫です」
「なにがっ」
「これを着てください」
「…え?」

少年は最悪な形で現実を告げ、最悪な形で現実を知った王女。
泣き叫ぶ王女へ、少年は自分の上着を脱いで王女へと差し出した。

「…なにを、するの?」
「僕の服を着てください。僕が、あなたの身代わりに」
「何を言うのよ!」
王女は少年の言葉を聞いた瞬間顔を青ざめました。

「あなたがわたしの身代わり?そんなの…無理よ!だって、だって…」
「大丈夫ですよ」
「なにがよっ!」

「僕らは双子だから」

そして、少年は、真実を王女へ。


「…え?」
「僕とあなたは双子なんです。血の繋がった姉と弟です」
「う…うそ」
「本当ですよ。生まれてすぐ、後から生まれた僕は召使として王族からはずされました」
「そんな…」
「決まりだったからだそうです。大臣や王の側近だった者がそう言っているのを聞きました」
「だって…そんな…うそよ…」
「僕らは双子。だからきっと入れ替わっても誰にもわかりません」

呆然としている王女に、少年は優しく語りかけます。
「さあ、早くお着替えください」
「いや…。いやよ…っ」
「…一度くらい、僕の言うことを聞いていただけませんか?」
泣きながら拒む王女へ少年は悲しい笑顔でそう言いました。
「いや…っ!あなたが、死んじゃうなんて…!双子とかそんなの関係ないわ!あなたがわたしの代わりに死ぬなんていやぁ!」
「僕はいいんです。あなたを生かせるなら」
「やだぁ…!」
「…王女様」
泣きじゃくる王女に、少年は近寄り、抱きしめました。

「…僕は、1度だけあなたを憎んだことがあります。あの緑の少女…、僕はあの子に恋をしていました」
「え…」
「とても悲しかった。あなたとあの子、どちらも大好きでした。でも僕にはあなたを悲しませることなんてできない。だから…僕はこの手で恋した女性をあなたという処刑台に」
「…もういい!」
王女は少年に抱かれたまま、耳をふさぎ叫びました。
「あなたもわたしのことが嫌いなんでしょう!?だったらどうして身代わりなんて言うの!わたしを殺せばいいじゃない!復讐すればいいじゃない!」
「…あなたと僕は双子だと知ったとき。僕はあなたを守り隣で仕えることを幸せだと決めたんです。あなたの幸せが僕の幸せ。あなたが安心して笑っていられないのなら、僕の望みなどどうなっても構わないんです」
「どうしてよぉ…っ!わたし、なにもわかっていなかった!あなたの好きな子を目の前で殺して!戦争の原因なんかつくって!勝手なことばかり…っ」
「全てをわかっていながら僕はあなたになにも言わなかった。だから全ては僕の責任です。あなたは、何も悪くない」
「あなたが何をしたと言うのよ!わたしの代わりに死ぬ必要なんかない!」
「…僕のことを思ってくれるのなら、たった一度の願いをどうか聞いてください。…逃げて、生きてください」
「う…うぅ…っ」

もう王女には少年の決意は崩せない。
哀しき双子は、最初で最後の長い抱擁のあと…互いの服を交換しました。

「たった今から僕は王女。あなたは僕」
「本当に…これでいいの…?」
少年は答えず、ただ微笑みます。

「さあ、早くお逃げください。生きて…笑っていてください。それが僕の幸せです」

王女は走り出しました。止まらない涙で前が見えないけれど、ただただ走り続けました。

「どうか、幸せに。僕の可愛い…リン」





むかしむかし、悪逆非道の王女がおりました。
彼女は戦争の末に赤き女剣士によって捕らえられ、処刑されました。
午後三時、教会の鐘と共に死んだ王女は最後まで民衆には目もくれず、死ぬ瞬間ふざけた台詞をはいたといいます。

処刑を見に来ていた群衆の中に、おかしな少年がいたといいます。
帽子を深くかぶり、無表情で処刑の全てを凝視していたそうです。
その目からは、涙が流れていたそうです。
念願の王女粛清に喜び沸く群衆の中で、その少年だけが王女の死を悲しんでいたとかのようだったと。

その少年はその後その国で姿を見かけることはありませんでした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

悪ノ物語2

閲覧数:2,587

投稿日:2008/05/02 19:30:35

文字数:2,372文字

カテゴリ:その他

  • コメント3

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  • あさぎ

    あさぎ

    ご意見・ご感想

    >わかなさん
    コメントありがとうございます。
    本当に悪ノ~は切ないですよね…

    >IBさん
    コメントありがとうございます。
    なるほど… それも面白い解釈ですね。
    私の中にはなかった考え方でした。

    2008/06/11 18:12:11

  • IB

    IB

    ご意見・ご感想

    >>…僕はこの手で恋した女性をあなたという処刑台に」
    --ここから先、少し筋書きを変えるとすれば--

    「あなたもわたしのことが嫌いなんでしょう!?だったらわたしを殺せばいいじゃない!復讐すればいいじゃない!」
    「違います。憎んだのは、僕の手で緑の王女を殺せなかったから…」
    「僕はあの時、貴女より彼女を選びました。彼女に全てを告白し、国も何もかも捨てて二人で逃げようとしました。
    でも、断られた。彼女は全てを知って、それでも僕と一緒に生きることを拒んだ。僕の恋心は憎しみに変わり…後はもう何もかも分からなくなって、涙が止まりませんでした。
    これで、お分かりでしょう。僕にも貴女と同じ血が流れている。そして、双子といってもいつまでも一緒にはいられない、と。」

    ・・・・・

    「僕は、あの時、逃げられなかった。だから、今度も逃げません。僕の、代わりに、貴女が逃げてください。」

    2008/06/10 21:27:18

  • わかな

    わかな

    ご意見・ご感想

    初めまして。
    悪ノ娘、悪ノ召使を聴きながら読んだら思わず泣いてしまいました。

    本当、切なくって、レンがリンを想う気持ちがひしひしと伝わってきますよね。

    2008/05/08 20:57:30

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