えっ?」
私は思わずそう言った。
「不思議だと思わない?痛いと思える、つらいと思える。
いろんなにおいを感じ取る。食べても、食べてもお腹が空く。
いろんなことができるのに、人間はそれを当たり前と考える。
不思議に気づいたのは、あの『マサ』って人ぐらいね」
いきなりよく分からないこと言われても・・。でもその人の会話に
マサさんの名があったので、思わず
「マサさん、マサさんが何かしたんですか?」と聞いてみた。すると、
「記憶がないなら覚えてないでしょうね。聞きたい?あなたは近い未来に・・」そう言いかけてる所に、
「またあなたなのね。今度はルカに何するつもり?」
メイコさんが現れた。その人は鼻を鳴らして、
「人聞きが悪いわね。私はこの人の未来を教えようとしただけ」
するとメイコさんが、血の気が引いたような顔になって、
「!ダメ。それだけは。まだこの子には早すぎる」
「だからこそよ。いずれ分かってしまうなら今言ったって変わらな・・」
その人は途中で言葉を止めた。
二人して何を話しているのだろう?
この二人は私の未来を知っているみたいだけど・・
「まぁいいわ。あなたの言うとおり。今言ったって無駄だし。
だけど、いづれ気づくってことだけは忘れないで」
そう言って立ち去ってしまった。
そして、メイコさんが
「もう。ルカったら勝手に出ていってさ・・。マサが寝ながら
何度も呼んでたわよ。さっ、帰ろ。あなたびしょ濡れじゃない。」
そう言いながら手を取ったメイコさんから私は手を離した。
「帰りたく・・ありません。私は、マサさんの元に帰れないから・・。
いろんなことを教えてくれて、自分は苦しい目にばっかあって・・。
私は・・もうマサさんを・・苦しめたく・・あり・・ま・・せ・・」
言いきる前に目の前がよく見えなくなった。でも暗くはなっていない
そして、何もしていないのに私は、大きな声をあげて、メイコさんの体を
軽く叩いていた。
その間、メイコさんは何も言わなかった。
これでもかってぐらい時がたった気がした。私の目の前には、メイコさんが
何も言わずに立っていた。そしてメイコさんは、
「ルカ。マサが言った言葉覚えてる?」
いろんなことがありすぎて忘れてしまっていた。
「そう。じゃあ、言うわね」
「泣くのは『優しいこと』・・いい事だからさ。つまり、あなたは優しいの。
優しすぎるからこそ、そんな気持ちになるんだろうけど、それは逆よ。
あいつはたぶんそういう気持ちにさせてしまうのを嫌がると思うよ。
誰かを苦しめてしまうのを嫌ってるヤツだからね。あいつは。」
それを聞いてまた私は声をあげそうになった。でも、
「グゥ~・・」
その音で遮られた。しばらく静かだったあと、
「プッ、ブフッフ・・」
メイコさんが笑いだした。
「ゴ・・ゴメン・・あまりにタイミングがよくってさ・・。」
「ひどいですよ~メイコさん」
「ちょ・・フフフ、さっき病院にいた時から思ったんだけど、急に
改まっちゃてどうしたの?ひょっとして、め~ちゃんって
呼んじゃいけないと思った?」
私がうなずくと、堪え切れなくなったのか、思いっきり笑いだした。
その姿を見ていて、私もなんだか笑いたくなってきた。
そして二人で笑った。これでもか、ってぐらいに。
笑いきった後、
「ルカ。あなた笑えるじゃん。思いっきり笑えるじゃんか。つられたに
しても。優しくって思いっきり笑えるなんて、そんな良いことないじゃん。」
メイ・・いや、め~ちゃんさんはそう言った。
「さ、帰ろ。もう消灯時間過ぎてるけど、あいつのことだから絶対寝てないと思うわ。アイツって年齢は大人なのにやってることは時々やんちゃ
なのよね~・・」
その言葉に「はい」と言い、立ち上がろうとしたら、
「痛っ!」
まだ足が痛い。
「大丈夫?」と、聞かれて首を横に振ると、
「そっ。じゃ、肩につかまって。私が運んであげようぞ」
そう言われ、左腕がめ~ちゃんさんの肩に乗っていた。
「いいのいいの。これくらい。」
そう言われて、私を引きずるように、め~ちゃんさんにつかまりながら
進んだ。
途中大きな道で信号待ちをしていると、
「私こそ・・ごめん。ルカをこんな目に会わせたくないんだけどさ。」
そんな声が聞こえた気がしたけど、車にかき消されてよく聞こえなかった。
その言葉の意味が分からなかった。まだこのときは。
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