そろそろ諸注意端折っても大丈夫ですかね(汗)
前作はこちらhttp://piapro.jp/antiqu1927の投稿作品テキストより。
・カイト×マスター(女性)
・妄想による世界観
・オリキャラ満載
・カイトは『アプリケーションソフト・VOCALOID・KAITO』の販促用に開発されたキャンペーン・イメージロイド(?)機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
〈シャングリラ第二章・休閑話~そうだ、海行こう~①〉
SIED・SINOBU
盆明けの数日、正隆さんは加奈さんから貰った短い夏休みを、どう有意義に過ごそうかと頭を悩ませていた。
滅多にない機会だし、たまには何処か遠出して開放的な気分に浸ろうと、オレは海に行くことを提案した。
だって、ほぼ365日施設の中にこもって仕事してるんだから、もう少し外の空気を吸ったほうがいいと思うんだよね。
って、オレが言えた義理じゃないけど。
折角だからカイトにも本物の海見せてあげたいし。
というわけで。
「海だー♪」
「はぁぁぁ暑い、篠ちゃん元気だね、」
もう世間様の夏休みも終わり頃だからか、割と人の少ない砂浜に降り立つと、暑さにグロッキーな正隆さんを尻目にオレは思いっきり潮風を胸に吸い込んだ。
「…磯臭ッ」
慣れない匂いに、少しだけ頭がクラクラする…。
「マスター、直射日光はあまり体に良くありませんから、こちらへどうぞ、」
いつの間にかカイトが、手際よく確保した場所にシートとパラソルを準備している。さすが、仕事が早い。
「ん、ありがとう。じゃ、オレここで荷物見てるから、二人とも着替えてきなよ、」
正隆さんがどんな水着を持ってきてるのかは知らないが、カイトには海に来る前に、水色のサーフパンツを買い与えておいた。紳士物の水着って、思ったより種類が豊富でいろいろ迷ったけど、一番無難なのを選んだし、きっと似合うだろう。
「え、僕たちは後でいいよ、篠ちゃん先に着替え行って来たら?」
「オレ、泳ぐ気ないから水着なんか持ってきてないもん、」
あくまでも海を見に来ただけで、雰囲気とか景色を楽しめればそれで充分楽しいし。まぁ波打ち際で膝くらいまでは入るかもだけど。
そんなオレの言葉に。
「「えええええ‼!!???」」
二人は見事なユニゾンを披露してくれた。
なんだか顔がマジだ。いや、そんなに驚かなくても…。
「なんで‼??どうして‼!!海に来て水着に着替えないなんて…ありえないでしょ‼??そんなの、結婚式にジャージで行くくらい非常識だよ‼!!」
何故か必死の形相の正隆さんに、勢いよく両肩捕まれ揺さぶられる。やめろ、放せ、オレに触るな暑苦しい。
なんだその理屈は。そんな聞いたこともない常識なんぞ海の藻屑にしてしまえ。
「…ですよね、わかってました。わかってたんです、マスターが女性物の衣類を毛嫌いしているのは。…でも、ほんの少し、僅かでも期待してしまっていた自分がいるのもまた事実で…もしかしたらビキニとはいかなくても、ワンピースタイプくらいなら、とか…」
おいこらカイト、何をぶつぶつ呟いてる。脳内をダダ漏れさせて、この夏色に輝く砂浜を汚染するんじゃない。
え、まさか、こいつら本気なのか。本気でショックなのか。
オレが着替えないだけで、本気でショックを受けているというのか。
だとしたら、本物のあほだ。
「別にいいだろ、パーカーに短パン、ビーサン装備で何が不服だ?そもそもオレの水着姿なんぞ、需要ないだろうが。周りを見てみろ、人が少なくなったとはいえ、水着のお姉さんはたくさんいるぞ!」
色とりどり咲き乱れる花の如く、今が盛りと自らの肉体を誇示する若い女性たちの華やかさ。その身を包む水着の色彩やデザインは、重なることなく花開き個性溢れるものばかり。
目の保養ならそっちでやれ。こっち見んな。
「あー…うーん、そうだねぇ、」
周囲を見回して、綺麗なお姉さんたちの姿に目を止めると、正隆さんの頬が心なしか緩む。でもあんまガン見してると変質者とみなされ、通報されるので気を付けるべし。
よし!まだ完全には納得しきっていないような顔してるけど、正隆さんはこれで誤魔化せたな。お姉さんたちありがとう。
「パレオとかもいいですよね、ひらひらなびく隙間からマスターの美しいおみ足が…、」
っと、まだぶつぶつ言ってるやつがいる。最近カイトもちょっと変態っぽくなってきたか?いや、前からか…こいつは一体オレをどうしたいんだろう。育て方を間違ったな、絶対。
「カイト、そんなに暗い顔すんなよ。まぶしいビーチには似合わないぞ!」
「…マスターが水着着てくれたら、元気になります、」
ぐっ、言い切りやがった。しかもなんだかちょっと甘えモードになってないか?
情けない感じに眉根を下げて、声色も弱々しく変えてきた。やめろ、服の裾を掴むな。オレがそういう仕草にすこぶる弱いと分かった上での狼藉だな…ならばよろしい、受けて立つ。
「でも、ほら水着持ってきてないし、」
「あの海の家で売ってますよ、一緒に買いに行きましょう、」
「………、」
海の家かー…燃やしてぇな、今すぐ。
「マスターに似合うの、俺が選んであげますから、」
「…お前な、」
ね?と、可愛く首を傾げても無駄だ。オレは絶対に水着など装備はしない。
「あのね、カイト…、」
こうなったら不本意だが、オレにもお前のその手段を使わせて貰おう。
「不特定多数の目前で、あらわな姿になるのは…オレ、ちょっと怖いなー?」
うつむき、ほんの少し声を震わせながら、甘えるようにカイトの胸にしなだれかかると、いつもは見せないか弱さを演出。
それだけで、カイトの身体が強張るのが分かった。
「あ…そう、ですよね…、マスターの艶やかな肢体をそこらの下賤な輩に見せるのは…無防備すぎますよね、」
オレを好きだと言ってくれている彼の気持ちを逆手に取るのは忍びないが、背に腹は代えられない。
「ごめんなさい、オレ…マスターの気持ちを考えていませんでした、」
っしゃ、勝った…!
ゆっくりと背中に回されるカイトの手に力がこもり、そのまま抱きしめられる。
こんな真夏の浜辺でやられたら、暑苦しくてたまらないが…オレは心の中でカイトに謝りつつ、うまく収まったとほくそ笑んでいた。
②へ続く
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