病院から帰る途中、何と無く会話が無くて二人で歩いていたけど、つい言葉が零れた。

「『言魂』が万能なら良いのに…。」
「え?」
「あの子の先輩の脚とか、お母さんの怪我とか…直ぐ治せたら良いのに…。」

病院で悔しくて悲しくて泣いていたイコちゃんの姿が、かつての自分とダブって見えた。何も出来なくて震えてた自分、いっそ代わってあげられたらどんなに良いだろうと、動く体を憎らしく思った事もあった。

「私ね、言魂の銃でお母さん撃ったの。」
「え…?!」
「治るかなって思って、よく考えもしないで『治癒』とか『回復』とか…撃ったの。」
「芽…!」
「でも駄目だった。…それ所か…体に負担が掛かって余計悪化しちゃって…馬鹿みたい
 だよね…。」

本当に馬鹿みたい。こんな事話したって益々呆れられるだけなのに…只でさえ流船君怒らせてばっかりなのに…。

「芽結は…一人が嫌だから俺と居る?」
「え…?」
「側に居てくれるのが誰だって構わないなら、俺もそうする…だけど…違うなら見てて
 良いのかな?芽結の事…。」
「流船…君…?」

真紅の瞳が少し惑った後、真っ直ぐに私を見詰めた。

「言魂じゃなくて、義務でも、メリットでもなくて。…一緒に居たいって思っても
 良いのかな?」
「え…あ…えっ…え…?!」
「√君を愛して良いですか~?ウソツキで弱い僕だけど~。」
「――っ!」
「幾徒?!」
「悪い、状況に耐えられなかった。」
「なっ…!お前…!何時…何で…!!」
「一人が嫌だから、辺り?」
「聞いてんじゃねぇぞバカ!!ああ、もう!…バイトあるから先行く!芽結送ってけ!」
「行ってらっしゃーい。」

真っ赤になって走り去る流船君を幾徒さんはクスクスと笑いながら見送った。びっくりした私は肩を叩かれるまで暫く固まっていた。

「だってさ。」
「あの…その…今のって…。」
「そのまんまだよ。言魂も、義務も、メリットも、何も無くてもさ。流船はちゃんとお前を
 見ようとしてくれてるんだろ。」
「でも…!でも私怒らせて…鬱陶しいとか思ってるんだとばっかり…。」
「さぁ?流船に聞けば?」

その日私は眠れなかった。目を瞑る度に声も顔も思い出しては、真っ赤に熱る顔をクッションに埋めて、ジタバタ暴れてた。何やってるんだろ…本当に馬鹿みたい…。

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コトダマシ-25.本当に馬鹿みたい-

何と無く此処から↓w
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投稿日:2010/10/20 05:34:15

文字数:966文字

カテゴリ:小説

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