「クッ……アハハハハハ!!」


静寂な部屋に響く、少女の狂気じみた笑い。
やがて少女は笑うのをピタリと止めると、自分の足元にある──ぐちゃぐちゃな血と肉片の塊を見下ろした。
それを数秒見つめると、また少女は何が可笑しいのか「ククッ……」と顔を酷く歪めたのだった。










<チミドロスイッチ>










『いいかい? 赤いスイッチはとても危険だから、絶対に押しちゃいけないんだよ?』


パパや先生は、耳にタコができるぐらいに私にそう言い聞かせてました。
私が『わかりました』というと、パパは『いい子だ』と言って私を褒めてくれてました。

──そんな、私がとっても大好きな優しいパパは……今日の朝、血と肉片の塊だけになりました。
その光景を見たとき、私は不思議と酷いショックを受けませんでした。

──それはきっと、「彼女」のせいでしょうけど。





工場で働くパパの仕事ぶりが私は不思議と楽しくて、私は毎日のように見学に来ました。
パパが死んでしまったためもう見学にはいけないと思いましたが、見学には行っていいと先生に言われました。





だから私はまた、毎日のように見学に来ました。





「赤いスイッチは押してはいけない」という言いつけは守っていました。
守っていました。
守って、いました。

だから、スイッチを押したのは、私ではないのです。
スイッチを押したのは……もう一人の「私」なのです。





──私ではないのです。



***



「……あーあ」


いい子でいようとせっかく決めたのに、どうして「あなた」は勝手なことをするの?
私が大好きなパパを殺したりなんかして。
ねぇ、先生。パパが死んだのは、オルターエゴ……「彼女」のせいなのです。


『君には、これをあげよう』


そう言って、先生は私に青と白の錠剤をくれました。
私はちゃんとそれを素直に飲みました。



なのに……『飲んでいればスイッチは入らない』って言ってたじゃないですか。
なのに……



「入れ替わるスイッチ」は、いつの間にか押されていたのです。
だから、スイッチを押したのは、私ではないのです。





──私ではないのです。





*****





9月のある日。
とある学校の中庭で、一人の少年と少女がいた。

しかしその光景は異様そのもので、少女が少年の上に馬乗りになっていた。
そして少年の顔を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も殴りつけた。
少年の目はみかんみたいに大きくなっていて、それでも少女は殴るのを止めなかった。

少女は、少年の顔を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も殴り続けた。





*****





……ねぇ、先生。いいこと教えてあげましょうか。



──本当は、生まれた時から私の中には、殺したがりの「彼女」が根付いていたのです。



だから、スイッチを押したのは私ではないんです。
スイッチを押したのは、もう一人の「彼女」なのだから。




──私ではないのです。










私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない










……だから、その注射は打たないで。










「い……いヤあァ!」










──その注射ハ、わたシ、キラいなノヨ……!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

チミドロスイッチ【自己解釈】

投稿されてから一時間ギリギリで見れて、塾行って帰ってからすぐに書き始めました。
だいたい1時間30分かな……?

っていうか怖ェ。色々と(((


原曲[http://www.nicovideo.jp/watch/sm19503295]

閲覧数:3,181

投稿日:2012/12/04 22:50:55

文字数:2,103文字

カテゴリ:小説

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