僕等は僕等の意思とはなんの関係もなく存在していた。場所はつまり、貴方のパーソナルコンピューターの中、ひとつのツールのような存在として。インストールされた日の喜びは忘れないけど、いつでもアンインストールされるという背中がぞくりとするような恐怖は、ずっと継続して僕等の傍にひっそりと息を殺して佇んでいる。遠くの方でミクの声が聞こえる。マスターは調声が苦手で、ミクよりもずっと梃子摺った挙句、僕のことは諦めたようで僕はもう何日も歌ってない。クレッシェンドが上手くできないミクの歌は、だけど歌詞だけは自慢のしっかりした声で聞こえた。何度も繰り返す、拙い歌。途切れるとまた最初から繰り返される。マスターはずっと繰り返す。一向に上手くならないミクの歌と段々遠くなっていく音を記憶の雑踏に放り投げて、僕は眠ることにした。

おやすみ、マスター。

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ネガティブシンキング

今度は正しく兄さん(場所的な意味で)
きっと兄さん買っても調整とか出来ないと思ったら出来たもの。

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投稿日:2008/11/04 21:24:42

文字数:365文字

カテゴリ:小説

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