その人物は、紺色をした魔術師のローブを着る老人男性。老人男性は樫の木で作られた杖を床に着きながら、ゆったりとした歩み足で玉座の前にへと来る。

「体調はどうであるか? 大臣のカムパネルラよ」

 カムパネルラ……老人男性はリアーナから、そう呼ばれた。名の前に大臣と称される老人男性こと、カムパネルラは王室で女王が認証する国務を担う従者だ。年齢は100歳を超える長寿者であり先祖代々、魔導国家ジャッロに仕える魔術師の長(おさ)だ。

 少し前までカムパネルラは自身の高齢に伴い、身体を悪くしていたようだが……、

「クフフッ……フォフォフォ。リアーナ女王、カムパネルラはお陰様でピンピンしております。これも教会でした、お祈りが功を成したと言う訳で御座いますな! フォフォフォッ」と神頼みのお陰で元気になったと説明している。

「そうですの大臣……貴方はこの間まで、歩く足もフラフラするくらい弱っていたのにね……」

 イザベラはカムパネルラの体調変化に対し、抑揚のない渋い声で返事した。どこか疑わしい事でもあるのか? 大臣の発言へ疑惑の目を向けている。

「カムパネルラは元気ですとも。どれだけ元気かと言いましたら、ライフリー、パーシャルデント、ポリグリップなどの補助アイテムが必要ないくらいに元気ですぞ」

 自分の使用していたと思われる、このセカイでは未知なる道具の名をあげたカムパネルラ。この部屋に集まる女王と、ミスティークたちに健康をアピールしていた。

「そっそうであるか……大臣よ。なら、妾はひと安心じゃ……」

「今日も朝から、ラジオ体操で運動しましたからな。亀の甲より元気ですぞ」

『…………』ミスティークたちはカムパネルラの台詞へ無言になっていた。

「さて、リアーナ女王。先ほど、ランブルウィードの話題がでておりましたが、その事について報告したいことが御座います」

「ほう、どう言った内容じゃ?」

「風の噂でありますが、2年前からあの地に一人の放浪者が現れ、その者が悪党たちを抑制しているそうですな」

「なんと勇ある者じゃ。その放浪者は、何者である?」

「詳しくは解りませぬが、女の放浪者だそうです。生まれは、フォレスタ・キングダムじゃないかと言われてるそうですぞ」

「う〜む、妾の知り合いであるような……ないような……。なるほど、その放浪者が“あの地”の秩序と規律を護っておると言うことじゃな」

「さようで御座います」

 大臣のカムパネルラが提供した情報は、ランブルウィードの治安を維持する人物が居ることを教えていた。与えられた情報が確かなら、明日に向かうフォレスタ・キングダムへの道中も安全であると理解する。

「好都合な情報であったぞ大臣。では、引き続き王室の業務に移るとしよう。ミスティークたちはレオナルドだけ残し、妾の前から解散せよ」

『仰せの通りに女王陛下……』

 ダニエラとイザベラの2人は声を揃えて命令に従い、女王の間から去っていく。その後、リアーナは残るレオナルドに、こう持ちかけた。

「レオナルド、少しばかり外に出て風に当たるとしよう……」

「はい、畏まりました」

 リアーナとレオナルド、互いにこの王室で育ち、最も信頼する間柄でもある2人は、女王の間から外の景色が見える場所へと移動した。

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投稿日:2020/02/19 00:44:15

文字数:1,378文字

カテゴリ:小説

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