公衆電話が消えている。別に今のご時世珍しいことではない。だが今日僕は公衆電話が撤去されているところを見てしまった。実のところ、公衆電話が減っていると感じている人は多くても、その公衆電話が撤去されるところを見たことのある人は少ないのじゃなかろうか。
 その撤去作業は、ある商店の工事の際に、一緒に行われていた。公衆電話に隣接する建物はブルーシートで覆われていた。風ではだけたところから見えた建物は、雨にさらされて色の変わった木材のものだった。
 商店はピカピカで綺麗になって、新しい看板がかけられるだろう。でも公衆電話は違う。往来の人が通りがかりに「あ、なくなっちゃった」と思い出すだけになってしまう。
 公衆電話は消えていく。しょうのないことだ。僕だって誰かに連絡をとろうと思ったら携帯電話を使う。公衆電話が持っていない機能も携帯電話は持っている。連絡を受け取ることができるのだ!
 発信も受信も備えたものに公衆電話が何をなせただろう。――何も。ただ枯れた存在になるより他なかったなかったであろう。
 公衆電話が去った場所は、その商店に訪れる客のための、駐車スペースになるのだろう。きっとかつてそこに、公衆電話があったことすら、知らない人がすぐにやってくることだろう――。

ライセンス

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なかった

2010年1月16日、習作。事実この間公衆電話が撤去されるところを見たから書いた。山なし、落ちなし、意味なし。
何か残せるものがある分、まぁ人間のがましなのかも、と。

何がしかご意見いただけると幸いです。失敬。

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投稿日:2010/01/17 00:12:40

文字数:537文字

カテゴリ:小説

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