部屋を出ていこうとした瞬間、突然裾を掴まれた。
「いかないでよ」
 すぐ後ろでリンの声が聞こえる。
 その声の弱弱しさに、レンは後ろを振り返った。
「いかないでよ。オバケとかがでたら怖いじゃない。」
 振り向いたそこには、先ほどの弱弱しさなんて感じさせない、明るいリンの顔。
「オバケって……リンってば、まだ子供だな。」
「子供だなって、同い年じゃない。レンだってまだ子供だよーだ。」
 はは、と笑って、リンの右手から、まだ掴んで離さない、自分の服の裾をやんわりと外した。
「おやすみ、リン」
 リンが寂しくないようにと心の中で唱えて、手の甲に唇を落とす。
 その瞬間、腰から背筋にかけて、甘いしびれが走った。
 それがもたらす衝動に、レンは慌ててリンの手を離し、ドアの方に振り返った。
「早くベッド戻りなよ。電気消してくから。」
「消さないで!」
 リンが鋭く返す。
「怖いよ、ひとりで寝るの。」
「リン……。……14歳にもなってなにいってんだよ」
 その瞬間、レンの頭部めがけて枕が飛んできた。
「ちょっと!」
 さすがに抗議しようと、床に落ちた枕を拾って、ベッドまでの短い距離を歩いたら。
 はっきりと見えるリンの顔。
 その瞳には、涙がにじんでいる。
「レン……っ」
 言葉にされない思いの代わりに、リンはレンの身体に体当たりした。
 そのまま、身体を寄せて、なにも言わずに首元に顔をうずめている。
 レンの身体に、薄いネグリジェを通して、リンの温かい体温が伝わる。その熱が、理性をどんどん溶かしていく。
 ふと、いつかの夜に触った、リンの身体の柔らかい感触が、レンの掌に甦った。

 刹那、レンの頭のなかでなにかが壊れた音がした。
 素早くドアの鍵を閉め、部屋の明かりを消して。
 そして、リンをベッドに押し倒した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【勝手に妄想】アドレサンス【9】

「いかないでよ。オバケとかがでたら怖いじゃない。」は、
orangeさんのアドレサンス解説から使わせて頂きました。
OKを出して下さってありがとうございました。

つづきます。

閲覧数:1,586

投稿日:2010/09/27 22:35:37

文字数:766文字

カテゴリ:小説

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