※リンレンの誕生日ということでクオリンです（おい。「クオリン←レン」なのか「レンリン←クオ」なのかよく分かりませんが、兎に角リンが愛されていればそれでいいよ！ なノリのお話をミク視点で３＋１本（つまりは１本がかなり短い。
亜種が苦手な方、クオが苦手な方、クオリンが苦手な方はバック推奨です。大丈夫な方のみお進み下さいませ。



『苺』

　それは皆で誕生日ケーキを食べている時のこと。テーブルを囲むのは私、リンちゃん、レンくん、お姉ちゃん、お兄ちゃん、ルカちゃん、がくぽさん、グミちゃん、それから私の亜種、クオ。
　リンちゃんはケーキをそれはそれは嬉しそうに眺めて、９当分にされた中から大きな苺の乗った部分を選んだ。誕生日なんだから、主役の二人から選ばせてあげないとね。リンは一番大きな苺を目の前に上機嫌。ちなみにレンくんはバナナの乗っているところ。これはバナナ好きのレンくんにとって外せないと思う。
「いただきますっ！」
　リンちゃんはフォークをケーキに突き刺す。と、バランスを崩した苺は皿から転がって、よりによって床に落ちた。テーブルに落ちていたならまだよかったけれど、これではもう食べられない。
「あ…」
「…あたしの苺…」
　リンちゃんは目に涙をいっぱいためて、あと一回瞬きをすれば溢れそうなほど。
（しまった、苺のケーキを選ぶんだった。そうしたら分けてやれていたのに。いやでもバナナを食べたかったんだ。）
　レンくんを見れば、心の声が聞こえてきそう。私の予想だけれど、８割くらい合っているはず。
　私もケーキに苺は乗っていなくて、あるのはブルーベリーとラズベリー。同じベリーでも苺じゃないとダメだろうし、どうしよう…！
　私も含めて、皆が対処に困っておろおろしているなか、リンちゃんの向かいの席からクオのため息が聞こえた。頬杖をついて、いかにも面倒くさそうな顔をしている。
「んなことで拗ねんなガキ」
「ガキじゃないもん！」
　すると、クオは自分のケーキの苺をリンちゃんのお皿に転がした。
「え…」
「それ食っとけ」
　その苺は、リンちゃんが選んだものに比べるととても小さかった。でも、リンちゃんにとってそれはこの上なく嬉しいものだったと思うの。
　リンちゃんは涙をふいてクオに笑う。
「ありがとうクオ兄っ！」
　お礼を言われたことに驚いたのか、それとも別のことに驚いたのか、理由はわからないけれど目を丸くしたクオは、そして小さく微笑んだ。
　普段あまり笑わないクオの不器用な笑顔。私でさえ、殆ど見たことないのに。
「…お前って、単純なやつ」
「単純じゃないもん！」
　ねぇリンちゃん、知ってる？ クオは笑うの上手じゃないけれど、さっきのクオの笑顔はね。

　私が見たことないくらい、優しいものだったんだよ？



『蜜柑』

　みんながケーキを食べ終わって、私とクオで食器の洗い物。料理は私が担当の家事。ちょっと大変だけれど、皆に手伝ってもらうとお料理じゃなくなっちゃうからダメ。…なんて、そんなこと言えないけど。
　例えば、お兄ちゃんはスープにまでアイスをいれようとするし、お姉ちゃんはお酒の分量を倍にしちゃうし、ルカちゃんはどこか天然で味音痴だし、リンちゃんは危なっかしくて見ていられないし…。あ、でもレンくんは料理できたはず。といってもレンくんはリンちゃんにしかふるまわないから、やっぱり戦力外かな。戦うわけじゃないけどね。
　料理は楽しいから、全然かまわないけれど…。でもやっぱり洗い物は疲れる。クオは私自身（ちょっと違うけど）だから、気兼ねなく頼めて良い。
　あ、そういえば。
「リンちゃん喜んでくれてよかったね、クオ」
「別に…」
　嘘ばっかり。あんなクオ、私も初めて見た。あんな笑い方ができるなら、普段からすればいいのに。
「でも良かったの？ 苺」
「蜜柑のほうが好きだから」
　あのケーキに蜜柑はなかったはず。だって蜜柑があったなら、リンちゃんはそっちを選んでいるだろうから。

　蜜柑、その言葉が何を指すのか理解するのに、そう時間はかからなかったの。



『バナナ』

　どうして火花が散っているの？ 勿論、本物じゃないから危険はないんだけど。
「いい加減、リンから離れてくれますか」
　レンくんは笑顔でクオに話しかける。
　でもね、レンくん。リンちゃんがクオの膝に座っているのはリンちゃんから乗ったんだよ？
　苺の一件から、リンちゃんが何だかクオに懐いちゃって、そしてこんな状況。ただ、クオは基本的にひとりでいるのが好きだから、元気なリンちゃんといてちょっと疲れているかも。…って思ってたけど、クオも満更でもない気持ちなのかも。何だかいつも通り。
「ガキは黙ってろ」
　もう、クオってば大人気ない。そんな風に言うから、レンくんとの喧嘩がヒートアップしちゃうんじゃない。
「精々頑張って？ 弟くん」
「はぁ！？」
　…何だか私の中のクオ像がどんどん崩れていく。別に高い理想をもっていたとかそういうわけじゃなくて、でも、笑うクオもこんなに大人気なくて意地悪なクオも初めて見た。今までは、面倒くさがりで、無愛想で、あまり喋らなかったのに。あれ、クオの良いところって何だったんだろう？ 全然知らなかったのかも。

「さっさとリンから離れろ」
「お前がどっか行け」
「行かねぇよ。てかそこ代われ」
「誰が代わるか。ショタは黙ってろ」
「ショタ言うな。どけ」
　どうしてこんな幼稚な喧嘩をするの？ リンちゃんはよくわかってないみたいで、クオの膝でニコニコ笑っている。

　レンくんとクオの戦いに終わりは来るのかな？



『おまけのおまけ』

「リン、しばらくクオ兄と話しちゃダメ」
「えー？ なんでー？」
「…俺が嫌だから」
「え？」
「兎に角、ダメなものはダメ」

「ミク…」
「何？ クオ」
「あいつ邪魔」
「レンくんのこと？」
「…シスコン野郎が」
「それは認めるけどね」