「リンのメアド、2712って数字はどういった意味があんの?」
 放課後の教室、忘れ物をした人くらいしかいないであろう時間。暮れ始めた空は綺麗なオレンジに染まっている。オレこと鏡音レンと、リンこと鏡音リンはそこにいた。
「んー、何いきなり」
 リンは気怠そうにオレの質問に質問を返した。
 そもそも、ここにいる理由はリンが忘れ物をしたからである。下校しようとしていた時に気付いたリンはオレを待たせて探していたわけで、ここにいる。待たされているオレは暇だから、適当に携帯電話をいじったりしているわけだ。
「いや……なんとなく。言いたくなかったらいい」
「別にこれといった意味はないよ。誕生日だけど、月と日を逆転させただけだし」
 へえ、とオレは頷いてそれから、
「え?」
 と声を出した。いきなりの事に驚いた様子でリンは、「何、いきなり」と静かに言った。
「リンの誕生日って、12月27日?」
「そうだけど……もしかして、知らなかった? 彼氏にも知られてないなんて思わなかったよ」
 そうだ、オレ達は付き合ってるんだった。知ってて当然か……知らなかったけど。去年、つまり中学3年の5月から付き合ってて、それで知らなかったのは正直恥ずかしい。
「あ……ほんとごめん」
 ある出来事を思い出して、オレはリンに謝った。
「へ? 何が」
「いや、去年のオレの誕生日、リンがプレゼントくれただろ。オレは知らなかったから、何も渡してない」
 それを告げた途端、ああそれかとリンは呟いた。
「いいよ……今度やったら怒るけど。その代り、何か頂戴」
 そう言って、リンは柔らかく微笑んだ。それが可愛いんだけど、怖いような気のせいのような……。
「今?」
「そう、今」
 すっとリンは左手を差し出す。そう言えば、リンは左利きだったんだっけ。両利きと言っていた気もするけど、この際関係はない。
「というか、探し物は?」
「あった」
 そう言って、右手にある小説をオレに見せる。薄いが、やけに難しそうな本だな。
 リンの左手を見て、内容を考える。この後オレンジパフェでも奢ろうか、それとも何がいいかを聞いてからにしようか。
 その時、一つ閃いた。そうだ、それにしよう。怒られるかもしれないけど。
「まぁ、別にいいよ今度で。今すぐなんて―――」
 オレはリンに最後まで言わせずに右手でリンの左手を引っ張った。さっきよりも驚いた様子で目を瞠っていたが、オレはそんなことは気にせずに唇を重ねた。目を閉じているから、リンの表情はわからない。でも、リンは拒否していないから大丈夫だろう。
 しばらくしてから重ねていたそれを離した。距離は対して離れていないが。
「……もう知らない」
 ふいっと顔を背けて、リンは教室を出るために歩き出した。空は夜に沈みかけている。
 繋いでいる手は、さっきよりも力が篭っていて。リンの頬は紅くなっていることも知っている。オレはリンの隣に並んで歩いた。
「今度は、忘れちゃだめだよ」
「うん」
「絶対だから」
「わかってる」
「レン君」
「ん?」
 オレがリンの方を向くとすぐ、頬に柔らかい感触。
「さっきの仕返し」
 そう言ってリンは悪戯っぽく笑った。
 そんな顔も、可愛かった。

ライセンス

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放課後の教室の出来事

未だにリンちゃんの性格が定まりません…。ちなみに高校一年という設定です。

レンくんがリンちゃんの誕生日を知らなくて…といきなり思いついたのを文章にしてみました。文才が欲しいです。

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閲覧数:271

投稿日:2012/04/07 05:17:22

文字数:1,338文字

カテゴリ:小説

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