まさか、1日寝通した?
うーん、と満月を睨み付けながら、いくらなんでもそんなことあるはずがないと思う…。
二度寝はしていない。
お酒を初めて煽ったとはいえ、そんなに深く眠り込むことなどないはずだ。
母だって、翌日にはケロッとしている。少なからずその血だって通っているはずだ…。
いや。何考えてるんだろう。
まさか、夜が明けていないなどと頭のおかしいことを言うつもりなのだろうか?
きっと、ワインを飲みすぎて、こんな時間まで眠ってしまったのだ。
気持ち良く寝ていたら流石に住人だって起こそうとは思わないはずだ。
そう結論を出したにも関わらず、何故か体の内側に靄が蟠る。
ミクはきい、と部屋の扉を開けた。
妙に、静かな屋敷。廊下が蝋燭に照らされているが不気味さが醸し出されている。
こつ、とミクの足音が自棄に響く…──。
「起キタ?」「起きた!」
突然聞こえてきたカラクリ人形達の声に心臓がわし掴まれた。耳元で、どっどっどっと脈打つ心音。
ミクは大きく大きく息を吸って振り向いた。
「う、ん…──目、覚めた」
口調は、固い。ガチガチだ。
するとそんなミクが面白く見えたのか、双子はクスクスと口を添えて笑った。
ミクはそんな人形達に薄気味悪さを覚えた。
そんな心境を知らずして、2人はミクの手を片方ずつ掴んで引っ張った。
「秘密ヲ~」とリンは感情なく口ずさみ「教えてあげるよ~♪」とレン歌った。
交互にそのフレーズだけを繰り返し、ミクを居間へ引っ張っていく。リンさえルンルン気分らしい2人は、首を左右に傾けるのを繰り返していた。リンは口や表情よりも身体で表現するようだ。
辿り着いた居間の扉の前でミクの手を放すと、昨夜のようにまたドアを片方ずつ掴んで。
「秘密ヲ~」
「教えてあげるよ~♪」
歌いながら扉を開けて放ち、腕を真っ直ぐ伸ばした。
その先には、勿論時計だ。大きな振り子時計に…──目が釘付けられる。
「時計ヲミーテゴランー…」
「時計をみーてごらんー…☆」
リンとレンの歌が、寸分違わず重なった。
時計の針が…──止まってる…?
昨日、部屋に入って見た時にも11時56分だった。壊れているのだろうか。
いや、だからと言って、それをワザワザなんで見せてきたのだろうか。
ミクはその下の振り子を見る。振り子は規則正しく左右に身を振って時を刻もうとしている。見間違いではないのかと駆け寄って確認するが、時間は見間違うことなく11時56分だ。
何で…?
「壊れてる、だけよね…?」
振り返りながら、双子に問い掛ける。
しかし、そんな疑問は。
「時計ヲミーテゴランー…」
「時計をみーてごらんー…☆」
面白おかしそうに、2人が笑い飛ばすと…――スカイブルーの瞳が、色が赤く染まっていった。
ひっ、と腹の底から沸き出た寒気に、背中を壁に押し付けた。やだ、と小さく言葉が漏れる。
足並みをそろえて歩み寄ってくる人形達。
足がガクガク震えて、壁に寄りかからなければミクはまともに移動できそうになかった。
だからと言って、逃げるにも重要な足も思うよう動かない。ズルズル背をつけて、近寄ってくる人形達から目を離せないでいた。
リンは無表情で歩み寄ってくるが、レンはとても楽しそうだった。まるで、怯えているミクを見て楽しんでいるようだった。
「!」
背中が壁の凹みを発見した。はっと振り返ると、その壁は数センチ、壁にめり込む様にずれていた。
ミクはその壁を無我夢中で押した。壁は凹み、ドアのようにあっけなく四角い穴を開けた。力をこめすぎたせいで一旦べちゃりと潰れた。眼前に広がった灰色の世界へ、逃げるように飛び込み、螺旋階段を駆け上がる。
ぐるぐると辺り一面、この屋敷にはそぐわない石製。
ミクはひたすら、あの人形達に追い付かれまいと息を切らせ足を上へ上へあげた。そして、最上段。真っ黒の扉が飛び込んできた。金色の模様が淵を彩っている。
ここに隠れよう!
屋敷の入り口の扉とは大違いに綺麗な扉へミクは体当たりした。床を引きずって傷を残し、ばたんと開けられた扉。ミクはまた部屋の中で倒れこんだ。
ここも石畳だ。
しかし、ここは普通の部屋と違って変に明るい。
月明かりが部屋に入り込んでいるような淡くて柔らかい明るさだ。
顔を上げて、ミクは絶句する。
「Jesus jesuS」
「じーざす、じーざす!」
背後からの、双子の笑い声が耳を素通りした。
眼前に横たわる…――『棺』。
棺、棺、棺。
それは既に山と表しても偽りはないほど大量に棺が置かれていた。
それを前に…――ミクは目が離せなくなる。
声にならない悲鳴。
加速する心臓。
呼吸さえままならない恐怖が全身を支配する。
耳鳴りを煩く感じさせる沈黙を。
「あらあら…」
メイコの、声が切り裂いた。
Bad∞End∞Night【自己解釈】④~君のBad Endの定義は?~
本家様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16702635
拙いのは、ご愛敬
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