「姉様に会わないように逃げて…!」
黄緑のお姫様は二人を城から逃がしました。
「…歌が嫌いなんてどうしてかしら…あの国で何が起こってしまったのだろう?」
そう呟く姉と頷く弟。
――その日から、二人は時折黄緑のお姫様に会いにいくようになりました。
悲しそうなお姫様の瞳を見て、少しでも元気付けてあげられたら…と思うようになったのです。
そうしてお姫様に会いに行くようになってから幾月か経ちました。
度々お城を出入りしましたが、その間に二人は女帝に会ったことは一度もありませんでした。
お姫様の話では、女帝は政務が忙しく休む暇もあまりないようでした。
歌を禁じた女帝の真意に疑問を持ちつつも、二人はお姫様に会いにお城を訪ねるのでした。
そんなある日、二人は城の庭先で一人の女性と出会いました。精気のない瞳、青ざめた顔をした若い女性。
簡素な衣服に身を包んだ女性は、この城の下働きだと話ました。
二人は女性と互いの境遇や国々の状況について話をしました。
「あなた達の歌を聴いてみたいな。きっと素敵な歌声なんだろうね」
この国にいる限り、もう歌は歌えないし聴くこともできない。女性は寂しそうにそう呟きました。
悲しそうな瞳を見て、二人は意を決して歌い出しました。
はじめは小さく、微かな音色。
清く澄んだ音色に想いを乗せて、この国の憂いを晴らすようにと願いを込めて。
しかし希望をのせた旋律は二つの斬撃に掻き消され、裂かれるような痛みにふたりは意識を失いました。
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