赤い小石一つ 帝都の広場に落ちた
ひび割れたように鐘が鳴った
鉄の鳥が消えて凪いだ冬空に
翻る旗は花の色
東の野にかぎろい立つ 新世紀のまだ暗い夜明け
恥ずかしながら帰ってきましたと 君は僕に笑う
極夜の裂け目に戻る日輪(アリオール)
生きるために忘れた 数々のモノゴト
思い出して、今 再び明日へ向かう
リンゴの花が咲き桜もじきに歌うマースレニツァ
割れた大地より湧く生命(いのち)の水 セント・ジョージは笑った
断絶の城壁が崩れていく バターみたいにさ、雪が解ける
“奇跡なんて起こらない、分かるとすればこれから先”
長い時を経て今ようやく約束が動き出した
夜をくぐり抜けた時計は 再び青に触れて時を打つ
虹色のベールを君にかぶせて 傷の跡を覆った
“きれいな月光はカエルの仮衣も照らすから”
ネジマキが巻かれて 刻みだすグレゴリオ
旧暦の日めくりは何処へ
正義に酔いどれた 裸の勇士の罪
いつの日か赦されるのかなあ
あの日飛び去った七色の千鳥が羽ばたく
全世界市民の春、泥道をコスモスの種で埋めよう
誰のせいにもしない、誰に罪を問わせることも止めよう
冷たい石の床から覚め また光るよポラリス
“こんにちは東西南北 新紀元を生きる皆様”
アナスタシヤ、見えるかい?
動き出すこの街が
アナスタシヤ、感じるかい?
僕らを阻む籠はもうない
もう隠れる必要なんてないんだ
ウシュクベで酔いを 覚ました蒼い瞳
皐月の日(メイデイ)ももうすぐだろう
ひた近づいてくる 復興の足音
長かった冬も夜も 今日ですべて終わる
“耐え難きを耐え、忍びがたきを忍ぶ時はもう終わった”
神風去り命は黄金(きん)のリンゴの枝に還る
古ぼけた鴻鵠の羽だけ忘れ物のように残ってる
価値を間違えた僕らはもう飛ぶ夢は見ないけど
平和への希求は恒久に 青い惑星(ほし)ある限り続く
“須らく何人も是侵すべからず”
降り注ぐ甘い花涙雨(あめ) 葡萄酒の川を流す
裂けた旗溶けた雪と玻璃も やがて過ぎた冬の彼方に
増えた傷はもう塞いでも痛みは消えはしないけど
それでも僕ら生きていこう 新たなエデンのために
砕け散ったのならば再び拾い集めよう
消せない罪も君が大切なことも永遠に忘れずにいよう
機銃を鍬に持ち替えよ あの鐘は君のために鳴る
今日がすべての始まり 再び動き出す真なる未来
恒久の平和を
永久(とわ)の緑を
我らと我らの子孫のため
等身大よりちょっと大きい夢を描こう
“Happy re-birthday, Anastasiya.”
Anastasiya
―――――復活。長く地を閉ざした雪が解け、新たな理想へ歩みだす夜明け。
「Hello, world」より連綿と続く「革命」シリーズ、その終章となる第十作目。革命の終わりと、自らの残した傷を反省し、今度こそ崩れない平和な世界を作ろうと誓う主人公たちの姿を書いています。内戦後ということで、日本の戦後にまつわるワードが多々出てきます。
タイトルは「アナスタシヤ」と読みます。女の子の名前で、意味は「(キリストの)復活」だそうです。
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