泥濘（でいねい）に沈む私の身体は
疾（と）うに動かなく成っていて
救いの歌許（うたばか）り残った
私達が救われない儘に

幸福に満ち満ちた世界の温度が
水槽の聲（こえ）を凍らせて
霞（かす）む記憶を絵に残した
選んだ色は酷く濁っていた

燻（くゆ）る空蝉（うつせみ）が楚々（そそ）と紛れ
廻る明滅を取り零した
未来はどうも頼りないが
過去は余さず苦しいのだ

死にたかったこと言えない儘
生きて仕舞うのは間違いなどではないと
思う程に脈動が
速く成って仕舞うようだ

溢れた星が涙によく似ていたから
私も泣いて良いですか

秘密にしよう
私達が生きた証が見つからないように
靡（なび）く恵風（けいふう）がとても痛いから
子供の儘で居たいのだ

例えば私が消えて仕舞ったら
あなたは泣いてくれますか？
誰も気付かない所で消えるから
私を思い出さないで

借物の言葉で歌を紡げ
汚れた筆で嘘を奇麗に描け
心と呼ばれた罪を何時迄背負えば良いの？
何時に成れば赦されるの？

街の色彩が目に痛くて
視界から全てを遠避けた
空の移ろいも眩し過ぎて
俯き歩くのが癖に成った

笑顔に溢れた素敵な世界で
誰かが今日も泣いていて
気付かないように笑っていた
誰しもが本当は気付いていた

落とした聲は意味を失くして仕舞うから
ひとつ、ひとつ綴るのだ

綺羅びやかな儘、朽ちた電飾が
幽（かそけ）く世界を縁取って
幸せを語る大人はどうやら
不幸せを知らないようだ

夢は泡沫に
聲は海鳴りに
人は神様の偽物に
世界が余りに速く廻るから……

私を形容する全てを
簡単に愛で測らないで
奇麗な景色が黒で染まる迄
どうか、どうか眠らせて

秘密にしよう
私達が生きた証が見つからないように
誰にも届かない祈りを胸に
静かに消えて仕舞いたいな