「クソッ! こうなったら全部吹き飛ばしてやる!」
カイは、迫り来る金属の死神たちから逃げるのをやめ、砂地に足を踏ん張って立ち止まった。
繊細な「停止命令」なんて、最初から無理だったんだ。
蛇口を閉めるのが無理なら、水道管ごと破裂させてやる!
「カイ、何を……!?」
アレンが叫ぶが、カイはもう聞いていなかった。
カイは、自分の中に渦巻く「力の奔流(マナ)」を、一切の制御(ブレーキ)をかけずに、右手にすべて叩き込んだ。
血管という血管が熱くなり、心臓が早鐘を打つ。
(消えろ!!)
カイは、目の前に迫ったサソリの群れに向かって、その右手を突き出した。
**(ドォォォォォォォォォォン!!!!)**
世界が青く染まった。
それは「魔法」なんて生易しいものではなかった。
純粋な「エネルギーの暴風」が、カイの手のひらから水平方向に噴出したのだ。
リミッターを焼き切られ、過負荷状態だったサソリたちは、このダメ押しのエネルギー供給に耐えられるはずもなかった。
先頭の一体が内側から破裂し、その爆風が連鎖して次の一体を誘爆させる。
(ガシャン! チュドォン!! バリバリバリッ!!)
金属片と油、そしてサソリたちが動力としていた魔石が砕け散り、凄まじい連鎖爆発が巻き起こった。
熱波が砂を瞬時に溶解させ、扇状に広がった爆撃範囲の地面が、キラキラと光る「ガラスの結晶」へと変質していく。
「ぐわぁっ!?」
凄まじい反動(リコイル)で、カイ自身の体も後方へ吹き飛ばされた。
後ろにいたアレンとリアも巻き込まれ、三人は団子になって、すり鉢状の流砂の底——古代の塔の入り口——へと転がり落ちていった。
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(……痛ってぇ……)
カイは、ひんやりとした石の床の上で目を覚ました。
体中が軋むように痛いが、骨は折れていないようだ。
「……無茶苦茶だ、君は……」
横でアレンが、埃まみれになりながら眼鏡を直していた。
「『停止』に失敗したから『破壊』に切り替えるとは……。君の脳みそは、オークよりも単純な構造をしているのか?」
「……うるせえ。助かっただろ」
カイは上体を起こし、周囲を見渡した。
そこは、外の灼熱地獄とは別世界だった。
ひんやりと冷たく、静まり返った広大な空間。
天井は高く、壁一面には、今はもう誰も読めない古代文字で埋め尽くされた「石の本」が、びっしりと並んでいる。
「……ここが、『アル・カズラ』……地下図書館か」
リアが、淡く光る苔(こけ)の明かりを頼りに、その壮大な景色に息を呑んだ。
「すごい……。本当に、伝説の通りだわ」
入り口(上)を見上げると、カイの放った爆発で入り口が瓦礫で塞がれかけていたが、その隙間からガラス化した砂が宝石のように光を落としていた。
追手のサソリたちは全滅したようだ。
「さて」
アレンが立ち上がり、服の砂を払った。
「入り口は塞がった(君のせいでな)。出口を探すついでに、最奥にある『転送ゲート』を目指すぞ」
アレンはクリスタルを取り出し、光の強まる方向——図書館のさらに深層へと続く螺旋階段——を指した。
「この下だ。……だが、気をつけろ」
アレンの声が低くなる。
「この図書館の『管理者』は、外のサソリごときとは格が違う。古代の知識を守る『番人(ガーディアン)』がいるはずだ」
三人は、静寂に包まれた地下図書館の奥へと進み始めた。
足音が、やけに大きく響く。
しばらく進むと、巨大な閲覧室のような広間に出た。
その中央に、一枚の巨大な石板が浮遊しており、その前に**人影**があった。
「……!」
三人は物陰に身を隠す。
その人影は、ボロボロのローブを纏(まと)い、手には杖を持っている。
背中しか見えないが、人間……のように見える。
だが、この数百年、誰も入っていないはずの図書館に、人間がいるはずがない。
人影は、ブツブツと何かを呟きながら、浮遊する石板に何かを書き込んでいるようだ。
「……エラー……修正……不可能……」
「……訪問者……なし……孤独……」
乾いた、機械的な声が響いてくる。
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