今日はハロウィン祭り。
年に一度、アラタと逢える。
カボチャのマスクに、ひるがえるマント。
「お菓子くれなきゃ」
そう微笑んで。
☆
「今年も来たんだね、ミミ」
見上げる視線にカボチャの赤い瞳。
「アラタに逢えるもん!」
「……そ?」
今年も私はおめかししてる。
お姫様コスチュームに兎耳。
「ミミ、何処~? 綿あめ貰ってきたよー!」
綿あめ両手に、ニコニコしてるのはユウ。私の彼氏。
ユウは今年も私の大好きな猫耳執事コスチューム☆
「君には彼氏いるだろ?」
耳元にボソッとアラタが囁く。
途端、頬がカーッと赤らむ。
「だって私、アラタに最初に遭ってたら……」
アラタは眉を寄せ、違うと否定する。
「君はとても残酷だ」
☆
「ミミ、なんの話ししてたのー?」
ユウはなにも知らない。
いつもニコニコ、別れようって言うチャンスもくれない。
「タイプの話」
「え!? 僕の話!?」
どうして、ここまで自惚れられるのかわからない。
でも、まぁイケメンなのはわかるし……。
そんな人が彼氏で幸せな筈なのに、
なんで私はカボチャのアラタが好きなんだろう。
「今年もいっぱいカボチャ食べよー」
ユウ、そんなこと言って、手に持ってるの綿あめじゃん。
「綿あめの後で?」
「綿あめ、僕好きだもん! 別腹」
ほんと、可愛いんだかバカなんだか……。
「だけど、綿あめよりミミが好きだよー」
「バッ、バカじゃないの!?」
そんな事言われて、恥ずかしくてそっぽ向く。
「いつものストレートも好きだけど、ハロウィン祭用のくりんくりんヘアも好きー」
この髪はアラタの為、ユウの為じゃないのに!
《触らないで!》
そう声に出ていたのか、それともココロの中だけか……。
ユウは傷ついた目をして、少しよろめいた。
「僕は……」
「……」
「それでも僕はミミが好きだよ」
ユウの後ろで、ヒューッドンドーンと花火があがりはじめる。
初めて泣いた。
ユウが私の前で。
笑顔絶やさずに。
☆
私はその時思ったんだ。
別れられる!
それと、ごめんなさい……。
☆
だけど、私が選んだのは、ユウを抱きしめるだった。
「……え」
「バカじゃないの! 辛いなら言えよ。バカ!」
私だって、そんな、そこまで我慢させてたのわかったら、泣くほどだってわかったら……。
「ううん……ごめん、ミミ。君を縛って」
引き剥がされて、瞼にKISSされた。
「な……っ」
「君は知らないかもしれないけど、僕は」
「?」
ユウがゴクリとツバを飲む音が、やけに耳に残った。
☆
「ハッピーハロウィン!」
みんなお祭り騒ぎだ。
そんな中、私はお化粧を直しもせずベンチに一人座ってた。
「どおして……」
どうして私は忘れていたんだろう?
ユウは5年前の今日、亡くなっていたんだって。
そして、そのことを忘れさせる魔法を持つカボチャに、
いつしか依存していたんだって……。
私の両手には、いつもユウがくれた綿菓子がふたつ握られてる。
私はそのひとつを食べ、もうひとつに涙を落とし続けた。
いつの間にか傍らにいたアラタが私に哀しく微笑んだ。
「俺をお食べ。君に愛をあげる」
アラタがくれた飴をゴクリと嚥下した。
途端、ボワンとアラタは消えていなくなる。
そして、ハロウィンは終わった。
☆
忘れることは幸せなのか?
それを考えるのは来年になるだろう。
どんなに空が晴れていても、なぜだか涙が溢れるんだ。
愛しくて、哀しくて、逢いたくて……。
「ミミ、何処~? 綿あめ貰ってきたよー!」
ハッと振り返る。
そこにはカボチャの姿をした誰か。
「あなたは?」
私は、何も覚えていない。
だけど、こうしたいとわかる。
「おかえりなさい。大好き!」
抱きしめたその人の体からはとても甘い匂いがした。
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