イバーノの町から出航した船は、イルヴァルス大陸の南部、フォレスタ・キングダムに属するヴェネトレイツと云う港町へ着船していた。

『本日のご乗船、ありがとう御座いました。ヴェネトレイツ、ヴェネトレイツ、ヴェネトレイツに到着です』

 蒸気船から他の乗客と共にヴェネトレイツの地へと降りてきた4人は、この港町の特性をこう表現する。

「海から地上へと降りたけど、この町には運河が通っているんだね……」

「そうみたいですねフーガさん。町に住む人びとも、ゴンドラを使っているみたいです」

 フーガとレンの会話が示すようにヴェネトレイツの町の地上は縦横に運河が走っており、これをひと言でゲンジツ的に説明するならば“水の都”と比喩すれば良いだろう。
 この町の道路は島と島の間を小さな橋で繋いでおり、地上を歩くためにある道路は迷路のように狭く、曲がりくねった路地や通りもヒトが渡れるくらいの幅しかない。当然ながら、このような町の特性だと、馬車で町を移動する事などできないのだ。

「ねぇねぇ、ミクちゃん。あのゴンドラにのって町の中心に行ってみようよ♪。あたし、あの小さい船に乗ってみたいんだよね」

「いいよ。せっかくだから、皆で乗ろうね♪」

 まだ10代の女子2人は、蒸気船から降りたばかりなのにゴンドラと云う小さな船に“旅情”を抱いていた。徒歩で橋を渡って、町の中心部へ行っても構わないのに敢えてゴンドラに乗りたいと言いだした。運河からヒトを渡すゴンドラと言う小さな乗り物には、乙女心を揺らすロマンスが秘められているようだ。

「すいません。4人でゴンドラに乗りたいのですが、おいくらですか?」

 ミクはゴンドラ乗りのおじさんに声を掛けた。このゴンドラ乗りのおじさん、ボーダーシャツに黒のカーゴパンツで自身をコーディネートしており、ナイスミドルなゴンドリーエとなっている。

「ようこそ、ラガッツァたち。4人乗りなら4Gだよ」

※Ragazza=イタリア語で『少女』の意味※


ミクはゴンドラ乗りのおじさんに4G支払った
おこづかいが10Gから6Gになる


「はっ……!?!?」

 ミクは、がま口ザイフからお金をだした途端、財布の中身をみて白く燃え尽きそうになる。前回のクエストで稼いだGがはやくも、底を着きそうになっているからだ。
 このままでは、また…食料調達の時に仲間の誰かが犠牲になってしまう。イバーノの町でもそうだったが、金欠は仲間との絆を断ち切ってしまう恐れがあるのだ。

 ミクは仲間たちとゴンドラへ乗ったあと、作戦会議を開いた。ギーコ、ギーコとおじさんが舵を切る音を奏でているなか、会議の題材は金欠対策について…である。

「みんな…あのね……。また、おこづかいがピンチなの…だから、町の中心部に向かったらクエストを受けようね」

「やっぱりか…ミクちゃん。僕たち、いつもスカンピン寸前だから仕方ないね」

「そうよね……レン。しかも最近、ひきこもりから社会人デビューした仲間も増えたし、食費もバカにならないわよ」

 リンはそう言いながら、反対側の席に座るフーガのことを見た。遠回しに足手まといとでも、言っているかのように冷淡な視線を送っている。

「ああ…そうして欲しい……。ぼくはまだ、ニートだからね……」

『あんたやっぱり! そうだったんだっ!?』

 彼から突然の告白により、3人は声が出揃ってしまう。予想していたとはいえ、パーティー内に無職者がいるとバトルもままならないからだ。

「フーガさん…向こうへ着いたら安定所で職業変更しましょうね……」

「なんで、ニートのあんたが装備品にレイピアなんてあるのよ!」

「そっ…それは……ぼくに似合う武器がこれしか無いからだよ……。まだ…扱えないけどね……」

『&♯※〜ッ!?』

 ミクは心の中でこう思っていた。

 ──フーガさん……私たちのパーティーに馬車システムがあれば、あなたは馬車行き決定ですよ。ザラキ神官かライアンさんみたいになりますよ──と思うのだった。

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次話
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名作映画 旅情
旅情を見ればヴェネトレイツが何を模しているか理解して貰えるはずだ……。
ヴェネトレイツのモデルにした場所

https://tabinaka.co.jp/magazine/articles/32954

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投稿日:2020/01/14 01:06:20

文字数:1,678文字

カテゴリ:小説

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