その夜、私はいつものようにモニターの光だけが照らす部屋にいた。
誰かの業務を効率化するシステム。
誰かの時間を短縮する機能。
誰かの悩みを少し軽くする仕組み。
そんなものを作りながら、気づけば深夜になっていた。
窓の外には街の灯りが浮かんでいた。
無数の光。
まるで宇宙に散らばる星々のようだった。
私は時々思う。
エンジニアという仕事は、不思議な職業だと。
毎日誰かのためにコードを書く。
けれど、その誰かの顔を見ることは少ない。
システムの向こう側には確かに人がいるのに、その存在は遠い星のように見えない。
ただログだけが残る。
数字だけが流れる。
画面の向こうで誰かが笑ったのか、助かったのか、それとも何も感じなかったのか。
知ることはできない。
それでも私はキーボードを叩き続ける。
その夜、不意に孤独を感じた。
けれど不思議なことに、その孤独は寂しいものではなかった。
むしろ静かで、美しかった。
宇宙を漂う探査機も、きっと似た気持ちなのかもしれない。
何億キロも離れた場所から信号を送り続ける。
返事がすぐに届くわけではない。
それでも送信をやめない。
なぜなら、その先に誰かがいると信じているからだ。
私たちが作る「便利」も同じなのだと思う。
目の前には誰もいない。
拍手も聞こえない。
けれど遠くの誰かの一日を少しだけ良くしている。
その可能性を信じながら作り続ける。
窓の外の星々を眺めながら、私はそんなことを考えていた。
孤独とは、誰もいないことではない。
遠く離れた誰かと、まだ見えない糸でつながっている状態なのかもしれない。
だから今日もまた、新しいコードを書く。
宇宙の片隅から放つ小さな光が、いつか誰かの日常を照らすことを願いながら。
コメント0
関連する動画0
ご意見・ご感想