UV-WARS・ヨワ編#023「3人の受験生」

投稿日:2018/04/23 18:54:40 | 文字数:2,968文字 | 閲覧数:22 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

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構想だけは壮大な小説(もどき)の投稿を開始しました。
 シリーズ名を『UV-WARS』と言います。
 これは、「紫苑ヨワ」の物語。

 他に、「初音ミク」「重音テト」「歌幡メイジ」の物語があります。

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UVーWARS
第三部「紫苑ヨワ編」
第一章「ヨワ、アイドルになる決意をする」

 その23「3人の受験生」

 茶色い髪の子の声は、優しくて柔らかかった。
「アタシ、友音ユア。お名前、伺ってもいいかしら?」
 ピンク色の髪の子はその子の隣の椅子に座った。よく判らなかったけど、少しムスッとしているように思えた。
「紫苑ヨワです」
「しおん、よわさん、ね?」
 わたしの名前を聞いた彼女、ユアさんは綺麗なビー玉みたいな声を出した。
「紫苑さんとは、初めてじゃないの。今日で三回目なのね」
 え、こんな可愛い娘、うちの中学校にいたかな。それとも、学区が隣同士とか。そんな疑問符一杯の頭の中が透けて見えてしまったのか、ユアさんはクスッと笑みを漏らした。
「と言っても、初めて見たのは、テトさんのミニコンサートの時だから、知らなくて当たり前なのよね」
 ということは、二回目は。
「ユフさんのミニコンサートでもあなたたちを見たの」
 そういうことでしたか。
「だから、今日で、三回目なのね」
 ユアさん、友音さん、は遠いところを見る目になった。
「テトさんのパフォーマンスはいつも素敵だけど、あなたたちは新鮮で、目が離せなかったのよね」
 最初のは、無我夢中だったから、ちょっと恥ずかしい。
「だから、てっきり、UTAU事務所の新人さんかと思ったのね」
 二回目は、その場の勢いだったから、顔がカッと熱くなった。
 俯いたわたしに、ユアさんの声は優しかった。
「素敵だった。ファンになっちゃったのね」
 でも、ユアさんの目の色が変わった。
「あなたほどの実力者なら、UTAU学園に入らなくても、即デビューできるんじゃないかしら、ね?」
〔え、今、なんて、おっしゃいました?〕
 褒められたの、なんて、ちょっと嬉しくなった。
 いや、違う。今、入らなくても、って、おっしゃいましたか。
 わたしは少しだけ気を引き締めた。
 無視すべきだろうか。
 迷った時は一般論で対応すること、って兄が言っていた。
「試験会場で、私語はご遠慮ください」
「まぁ」
 そう言ってユアさんの顔が強張った。
「エリーさん、聞きました?」
 隣のエリーと呼ばれた女の子は面倒臭そうに返事をした。
「え?」
「天使様は、下々の者とは言葉を交わしたくないようですわ」
 天使様、って、わたしのことでしょうか? なんか、吹き出しちゃいそう。
「ユア、もういいよ」
 エリーという子の声は面倒くさそうで、どこか諦めを含んでいた。
「え、エリー?」
 ユアさんを挟んで、エリーさんはわたしに向かって頭を下げた。
「ちょっと、エリー」
「ごめんなさいね。実技試験の最終日、まさか三人で受けるとは思ってなかったんだ」
 どういう意味でしょうか。声には出さなかったけど、顔でわかってもらえたみたいで、エリーさんが微かに頷いた。
「募集人員が二十人なのは知ってるよね」
 パンフレットの募集要項に書いてあったかも。
「八月と十月で十八人まで決まったの。今日が最終日だから、三人のうち合格者は二人、ということになるわよね?」
 ああ、そうか。やっと解った。わたしに辞退して欲しいのか。
「ずいぶん昔から、二人で色んなことをやってきたけど、ここまでかな」
「そんな、エリー!」
 ユアさんの口調が変わった。わざとらしいくらいに。
「いいよ、アタシは。テレビに出たいのは、ユアの方だし」
 エリーさんは腕を組み天井を仰いで、諦観の構えだろうか。
「『テレビ』なんて、わたし、言ってない! わたしは、エリーと一緒にステージに立ちたいの!」
 ユアさんの声はややヒステリックぎみの高い声で、後半は悲痛な感じが混じっていた。
「アタシは、ユアほど踊り、うまくないから。ここまでいい夢見た、ってことで。いいよ、もう」
「エリー! ここまで来て、諦めないでよ」
 最後、涙が絡んでいたかも。
 わたしは二人のやり取りをドラマのワンシーンのように眺めていた。
 もし、ここにネルちゃんがいたら、何て言うだろう。
〔臭い芝居はやめなさい〕
〔戦う前から降参? だったら、帰りなさいよ〕
〔やってみないと分からないでしょう〕
 でも、わたしは考えてしまう。どうやったら、ここにいる三人が一緒に合格できるか。
 試験内容はネルちゃんから聞いている。歌と踊りだ。面接もあるけど、内容は簡単だった。名前と志望動機だけ。
 歌や踊りのテーマは毎回異なるらしいことは聞いていた。
 でも、呼ばれるのはいつも一人らしい。
 そして、最初に呼ばれるのはきっとわたしだ。
 決めた。
「二人とも合格する気はありますか?」
 二人はきょとんとわたしを見つめた。
「どうですか?」
「そりゃあ、ねえ」
 エリーさんがちらりとユアさんに視線を送った。
 一瞬二人の視線が重なって、二人は揃って頷いた。
「受かるものなら」
 ユアさんの声は遠慮がちだった。
「三人で合格するというのはどうですか?」
 思い切って、言ってみた。
 二人は虚を突かれたようで、わたしからお互いに視線を移して固まった。
 それから二人のアイコンタクトがあって、二人は同時にわたしを振り向いた。
「どうするの?」
「教えて」
 わたしは、ネルちゃんから聞いた試験内容を伝えた。
「それで、実技の歌と踊りですけど、正直、やってみないとわかりません」
「なんじゃ、そりゃ?」
 エリーさんが関西弁風のツッコミを入れてきた。
 ユアさんは苦笑いだ。
「わたしが試験の内容をお伝えして、対策を考えてみます」
 エリーさんはきょとんとしてから、少し呆れたように私を見た。
「随分、自信があるのね」
 わたしはすぐに切り返した。
「自信はありません」
 でも、二人から目は反らさなかった。
「でも、知っているのといないのではかなり違いがあると思います」
 エリーさんとユアさんは、目を合わせて頷いた。
「分かったわ」
「最後まで足掻いてみましょう」
 ユアさんはクスッと笑った。
「ヨワさんって、ほんっとに、お人好しなのね」
 釣られて、エリーさんも。
「ほんとに」
 わたし、disられてる?
「三人で合格、って何の意味があるの?」
「わたし、前に、テトさんに会ったとき聞いたんです」
「何を?」
「一人でも仲間が欲しい。ヴォーカロイドの牙城を崩したい、って」
 芸能界の一角を占める、あのヴォーカロイドの城を崩す。一見、荒唐無稽に思えるが、ヨワの真剣な眼差しには、説得力の光りが含まれていた。
 エリーさんの顔が真剣になってきた。
 それを見て、ユアさんも顔を引き締めた。
「凄い、夢だね」
「チャートの一位、目指しているの?」
 わたしは笑顔で首を振った。
「努力したら夢は叶うってこと、証明したいの」
 ユアさんの表情が緩んだ。
「誰かさんと同じこと、言ってる」
 わたしが視線を送るより先に、エリーさんは背を向けた。
「ユ、ユアは、何、言っている、のかな」
 後ろを向いたにも拘らず、見えている耳は真っ赤になって、エリーさんの表情が分かってしまった。
「わたしが誘ったんだけど、わたしよりアツいよね」
「ユア! もう、・・・」
 その時、扉が開いた。
 

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