部屋の中にいた三人のうち、小さな侵入者に気がついたのは、キヨテルだけであった。
小さな侵入者はキヨテルに向かって、唇に人差し指を当てて、シー、とやって見せた。
「どうかしましたか」
「え、あ、いえ、ちょっと虫が…」
虫扱いされたユキは少々怒りを覚えたが、その程度で怒り狂うほどお子様ではないので、冷静になる。ちょうどドアのあたりはミキたちからすると死角になっていて、ユキが入ってきたことには気づかれていない。
どうしよう…。赤いりんごを持って入って来たは良いものの、ここから一体、どうしたらいいのだろう? 自分が飛び出していっても、何の役にも立たないに決まっている。
「――それでは、…くす、はじめましょうか」
「何を?」
「解体ショーですよ。世にも珍しいエクソシストの解体ショー」
それが姉の言葉であると納得するのは、ユキにとってはとてつもなく難しいことであった。
息を殺し、次の言葉を待つ。次の言葉を発したのは、キヨテルだった。
キヨテルはふっと笑って、
「それは面白そうですね」
といった。
「是非、見てみたいものです」
「残念ですね、先生。先生は見られないんですよ。だって、解体されるのは先生ですもの」
すると、キヨテルはなんでもないことのように言う。
「そうですか。なら、僕はもっと楽しみにしなきゃいけないですね」
「あら、どうしてです?」
「自分が死んでいくところなんて、人生で一度しか見られないんですよ。楽しまなきゃ」
笑顔だ。
ユキの頭を撫でてくれるときとよくにた、優しい笑顔であった。
「ですが、その前に、鏡音君は解放してください、くどいようですがね」
「本当にくどいですね。私、彼を解放する気、ありませんから」
「…どういう意味です」
キヨテルの声の雰囲気が変わった。
「先生には悪いですけど、彼は宝の山です。先生も負けず劣らずですが。こんないい『商品』、逃すわけには行きませんから」
「いけませんよ、それは。話が違いすぎる」
「たいしたことはありませんよ、死人が一人、増えるだけ」
「その一人、どれほど大きいと思うんですか」
「小さいですよ、本当に」
にやり、とミキが笑う。
「だって」
キヨテルは背筋がゾクゾクとするのを感じた。
「さっき手首を切ったら、すぐにおとなしくなっちゃいましたもん」
ミキは笑っていた。
「な…っ」
確かに、先ほどからレンはぐったりとうつむいて何も話さない。それどころか、ピクリとも動かないのである。
「ほら」
見せ付けるように、ミキはレンの右腕を持ち上げた。大量の血にまみれた白く細い腕が、月光に照らされて神秘的なほど怪しくつややかに光っていた。
「か、鏡音君!」
「だいじょうぶですよ、まだ、死んでません。ぎりぎりのところで出血は止めました。でも、これ以上かかると、本当に死んじゃうかも」
「ミキ…」
「心臓は今にも止まっちゃいそうですよ。呼吸も浅いです」
「なんのつもりだ…」
「勿論、決まっているでしょう? あなたに見せ付けるためですよ」
ユキは、体がこわばって動かなくなるのに、妙に意識ははっきりして、嫌と言うほどしっかりとミキとキヨテルの会話が耳に入ってくるのが、恐ろしくなった。耳をふさいで、聞きたくないというように顔を振った。それでも、言葉の一つ一つが聞き取れてしまう。
キヨテルはミキをにらみつけた。
『――カガミネクン、あなたの代わりに優しい先生が死んでくれるそうですよ』
『そんなの、許されるはずないだろ。いい加減あきらめて、降伏でも――』
『駄目ですよ。だって、私、もう失うものはないので、何も失わない、ここじゃなきゃ』『でも、何もえられないじゃないか』
『何かを得たら何かを失う。だから、何もえなくていい』
『けど――』
『うるさいですねぇ、静かにしてくださいよ』
ナイフが光った、
『っ!』
ナイフが手首に傷を作った。浅い傷から、ぽたぽたと血があふれる。ゆっくりと流れ出す地のにおいの中、レンは意識が遠のいていくのを感じたのだった。
「僕が入ってくる前から…」
「いつ気づくかと思いましたよ。どうします、先生? 死んじゃいますよ、カガミネクン」
愉快そうに、楽しそうにミキは笑ったのだった…。
鏡の悪魔Ⅴ 25
こんばんは、リオンです。
眠いよ!
靴擦れしたよ!
夏風邪ひいたっぽいよ!
タイピングの遅さが異常だよ!!(今更
朝から塾はきつい…。ああもう、朝の七時くらいで時間とまれーっ!
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