小説版 South North Story ①

投稿日:2010/06/19 23:06:28 | 文字数:1,958文字 | 閲覧数:44,331 | カテゴリ:小説

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ということで、お待たせいたしました!
予告していた通り、今回は悪ノP様ならびにゆにめもP様すなわちあくゆりん様のコラボ神曲、『South North Story』の小説化に挑戦します!

もちろん、前作『ハルジオン』の続きになります☆
但し、お読みいただく前に注意事項が。

前々作である『小説版 Re:present』を出来ればお読みくださいませ☆
なぜなら・・ふふふ、いずれ作品の中でその理由が明らかになると思います。今は、秘密です☆

ではでは、今作品も宜しくお願い致します!
次回からは懐かし?のあの人達も登場しますよ~♪

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小説版 South North Story

プロローグ

 それは、表現しがたい感覚だった。
 あの時、重く、そして深海よりも凍りついた金属が首筋に触れた記憶を最後に、僕はその記憶を失った。だが、暫くの後に、天空から魂の片割れの姿を見つめている自身の姿に気が付いたのである。彼女は信頼すべき魔術師と共にただひたすら西へと走り続けた。やがて、北風が強くなり、それは雲を呼び、そして初雪が深く暗い雲から零れ始めた。彼女の苦難を象徴するようにそれはいつしか吹雪となり、彼女の弱り切った心を容赦なく痛めつけた。体調を崩している。そう判断して彼女の元に駆けつけても、僕は彼女に触れることすら叶わない。桃色の髪を持つ魔術師は騎乗に夢中でまだ気付く様子も見えない。この吹雪の中、焦りを感じているのは誰もが同じか、と考えながら僕は無駄だと分かっていながら彼女の背中に触れようとした。触れても、僕の体温を彼女に伝えることは叶わないけれど。そう考えながら彼女の背中に僕の手を載せた時、彼女が一つ、咳をした。
 『どうしたの?』
 魔術師がそう訊ねる。か細い声で寒い、と答える彼女の姿を見て、僕は少しだけ安心する。魔術師が彼女の体調に気付いたらしい。僕の代わりに体温を伝えようと彼女を抱きしめた魔術師の姿を見て、僕は微かな笑みを見せた。やがて、街明かりが見えてくる。彼女の身体に予備の毛布をかぶせた魔術師はそこで力任せに馬の横腹を蹴った。
 どうやら港町らしいその街で、魔術師が向かった場所は修道院であった。夜も更けた中、魔術師は直に修道院の本館へは向かわず、修道女が詰めているらしい宿舎へと向かうと、普段から冷静な魔術師にしては珍しく、夜半の街に大きく響くような遠慮の無さで扉を叩いた。やがて修道院の扉を開けて顔を出した、白くそして腰まで届くような長い髪を持つ少女の姿を見て、僕は思わず驚きの声を上げた。その声は彼女たちには届かなかったが、その代わりとばかりに僕はその白髪の少女の姿を改めて凝視した。この娘はかつて見たことがある。遊覧会の折、ミク女王の女官として仕えていた娘だと思い当たり、どうしてこんなところにいるのだろうか、と僕は訝しがった。だが、彼女も魔術師もその白髪の少女に思い当たる節は無い様子で、そのまま彼女は白髪の少女の看護を受けることになったのである。
 その後、彼女と白髪の少女はまるで以前からの親友の様に仲が良くなった。そして、彼女はいつしか白髪の少女に言われるままに海に向かって小瓶を流し始めるようになった。それが僕の為に流しているものだとは自覚していたが、毎日涙を流しながら小瓶を流す彼女に伝えるべき言葉を僕は持たない。そのもどかしさを抱えながら、やがて冬は過ぎ、大地は再び春を迎えた。彼女はいつからか、白髪の少女と共にブリオッシュを作り始めた。さて、彼女の好物位は自分で作りたいと考えたのだろうか、と僕は推測をたてる。いつしか二人はまるで姉妹の様に仲が良くなっていた。だが、そんな時に事件は起きた。彼女は白髪の少女の正体を知らない。そして、僕が預けたリボンの持ち主を知らない。春先にしては暑い陽気を避けるように彼女は腕を捲る。その奥に現れたのは、僕が彼女に預けたリボン。そのリボンは、緑の髪の女王が身に着けていたものだった。駄目だ、と叫んだ僕の声は彼女には届かず、代わりに息を飲んだのは白髪の少女だった。気付かれた、と僕が思っても、彼女にそれを伝える手段を持たない。そして、白髪の少女は行動に出た。
 いつもの浜辺、小瓶を海に流した直後、まるで隙だらけの彼女に向かって、白髪の少女はナイフを振り上げた。その直後に、僕は無駄だと分かっていたのに二人の間に飛び出した。そして、彼女の前に立ちはだかり、両腕を広げる。そして叫んだ。
 『やめて!』
 声が、具現化した。
 それは奇跡としか思えなかった。だが、その言葉で明らかに白髪の少女はその動きを止めた。
 『お願いです、リンを、殺さないで。』
 その言葉は、白髪の少女だけでなく、彼女の耳にも届いたらしい。
 『レン!』
 彼女がそう叫んで振り返った。白髪の少女が、その途端に足元を崩す。殺意が消えたことを確認した瞬間、僕の意識もまた灼熱に照らされた氷の様に溶けゆくことを自覚した。これが、僕の残された最後の役目。もう一度だけ、彼女を守ることができた。本来の摂理から許されぬ行為をした僕に残された道は、このまま意識の消失しかない。それでも、十分だと僕は考え、そして川の流れに身を任せる木の葉のように僕は運命の波に意識がさらわれ、僕と言う存在が完全に消滅してゆくことを覚悟した。
 まるで撮り損ねたモノクロ写真のように、白と黒に霞んだ残響だけを僕の視界に残して。

レイジです。
おはこんにちばんわ。

皆様いかがお過ごしでしょうか?
皆様から頂いたコメントに本当に感謝しきりです!
これからもお願いいたします!

尚、このアイコンは向日葵様に描いて頂きました。ありがとうございます!
どんな人か気になる方は僕の全く整理されていないブクマからどうぞ☆

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作品へのコメント2

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    ご意見・感想

    おひさしぶりです!やっと生活がひと段落してきたので、じわじわと読ませていただきます!
    通勤がチャリ5分から電車30分(乗り換えなし)になったので、ネット小説環境としては整いました^^
    自分の「悪ノ二次」が無事に最終回を迎えたので「かぶるか?!」の心配もせず、純粋に楽しみに読み進めていこうと思います☆ではでは!

    2011/04/17 12:15:53 From  wanita

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    ご意見・感想

    どうも。ツイッターで見つけたので急いで来ました!

    おおっ!ついに連載開始、しかも死して尚レンがリンを守ったあの場面で締めですか…。相変わらずレイジさんの展開は私のツボを突きます☆

    また毎週末が楽しみな日々が始まるのが嬉しいです!それでは(^-^)/

    2010/06/20 00:27:06 From  lilum

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    コメントのお返し

    さっそくありがとうございます☆

    そうです、あの場面の別視点になります。気に入って頂いて嬉しいです♪

    これからも宜しくお願いしますね♪

    2010/06/20 08:33:49 レイジ

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