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South North Story 特別編
秋口の出来事
北海道大学のキャンパスは、流石旧帝大というだけあって、相当に広い。
リンとリーン、二人の妹と別れてから、一月余りの時間が過ぎていた。夏季休暇はとっくに終わり、後期授業の履修届など、何かと忙しい秋口のことである。
そして鏡蓮は、教務課へと...South Nroth Story 特別編 ―秋口の出来事―
レイジ
夢なのか現実なのかも分からない。気が付いたら、一人でどこかの場所に立っていた。
ここはどこだったかな?
明るくは無いけれど真っ暗でもない、青空に灰色を混ぜたような空間で、しっかりと地面がある。馴染みのある場所のような気もするし、初めて来たような気もするし、懐かしいような気もする不思議な場所だっ...気まぐれな交差点で
matatab1
エピローグ
「リーン、リーンってば。起きて?」
優しい声がリーンの脳裏に響いた。誰の声だろう。ううん。あたし、この声ずっと聞きたかった。だってもう二ヶ月も離れ離れだったもの。
そう考えた瞬間に、リーンは思いっきりその透き通るサファイアのような瞳を見開いた。視界に移るのは月夜のように輝く銀髪と、...小説版 South North Story 56
レイジ
第四章 始まりの場所 パート6
「この銃・・。」
見覚えがある?それは当然だった。ステンレス製の銃身に漆黒のラバーグリップ。そして何より、銃筒に刻まれたSMITH&WESSONの刻印。リーンが生まれるよりも以前から自宅に安置されている、リーンにとっての守り神のような銃。新品の輝きを誇っている以外...小説版 South North Story 55
レイジ
第四章 始まりの場所 パート5
そろそろ、到着する時間だな。
レンは不意にそれまで読み込んでいた冊子から視線を上げてカフェの壁に吊るされている時計を視界に納めるとそのように考えた。時刻は二時少し前を示している。そろそろ向かわなければ、とレンは考え、冷め切ったコーヒーの残りを一気に飲み干した。ブラ...小説版 South North Story 54
レイジ
第四章 始まりの場所 パート4
「アテンション・プリーズ。」
リーンと一緒になって窓の外の景色を眺めていたリンは、唐突に機内に流れ始めた甲高い女性の声を耳に収めて思わずその肩をびくりと震わせた。何事かと考えて機内を見渡すと、航空機の座席の中央にある大型の液晶画面からなにやら映像が流れている。一体...小説版 South North Story 53
レイジ
第四章 始まりの場所 パート3
「ちょっと、原理を説明してよ。」
錯乱したような声が午前中、通勤ラッシュもひと段落した山手線内に響き渡った。その声の主は金髪蒼眼の少女、リンである。
「電気で動く馬車といえばいいかしら?」
困った様子でそう答えたのはリーンである。電車というものをリンに説明する...小説版 South North Story 52
レイジ
第四章 始まりの場所 パート2
刀傷の男に向かって謝礼金を支払い終えたレンは、まるで何事も無かったかのような足取りでその小屋を後にすると、海沿いの寂れた路上に駐車しておいた乗用車に再び乗り込んだ。カモメが鳴いている。どこかで聞いたことがあるような声だったが、そう感じたのは海岸の寂れ具合が丁度リンが...小説版 South_North_Story 51
レイジ
第四章 始まりの場所 パート1
意識が途絶えた後、どれほどの時間が経過したのかまるで分からない。そもそも時間という概念が存在しえない場所に僕はいたのかも知れない。だけど、僕は再び瞳を開いた。目に映るのは見慣れない銀色の器具と、無機質な白色に包まれた天井の色。天国にしては味気が無さ過ぎるし、地獄にし...小説版 South_North_Story 50
レイジ
第三章 東京 パート9
東京は今日もご機嫌斜めみたいだな。
寺本はそう考えながら、額に溢れ出した汗を無造作に右腕で拭い去った。今日の最高気温など知らないが、体中の水分という水分が蒸発してしまいそうな感覚があるから相当の気温なのだろう。冬が恋しいなと心にも無いことを考えながら寺本は愛用のスマートフ...小説版 South_North_Story 49
レイジ
第三章 東京 パート8
「一体、どのようにして国民の中から代表者を選ぶの?」
暫くの沈黙を破ったのはまたもリンであった。もの珍しい言葉に関心を抱いた様子で尋ねるリンに対して、リーンが代表してこう答えた。
「今のミルドガルドは大統領制を採用しているわ。四年に一度、国を挙げて選挙を行うの。大統領に...小説版 South_North_Story 48
レイジ
第三章 東京 パート7
今日の夕食分と、明日の朝食分の食料を買い求めた藍原たちは、三人でスーパーの袋を分け合って持つとそのまま藍原の自宅へと向かうことになった。藍原の自宅はこのスーパーから程近い場所に位置している。徒歩一分程度でオートロック式のマンションに到着した藍原は、そのままエントランスを潜り...小説版 South_North_Story 47
レイジ
第三章 東京 パート6
寺本の話が終わると、藍原は凝り固まった疲労のように重たい吐息をその場に漏らした。寺本はなんと言ったか。ミルドガルド。異世界から来た少女。そんな話はSF小説の中だけの出来事だと思っていたのに。まさか、すぐにその事実を信じられる訳もない。
「二人は明後日の便で札幌に向かう。そ...小説版 South North Story 46
レイジ
第三章 東京 パート5
とりあえず、練習室に戻るか。
鏡との通話を終えた寺本はそう判断すると、部室棟の中央部分に用意されている階段を地下に向けて歩き出した。少なくとも今日と明日はリンとリーンの二人をどこかに宿泊させなければならない。流石に男性の自宅に泊める訳には行かないが、と考えながら寺本が練習...小説版 South North Story 45
レイジ
第三章 東京 パート4
「今、レンは何処にいるの?」
暫くしてからリーンから受け取ったハンカチで涙を拭き終えたリンは、一つ深呼吸をするとようやく落ち着きを取り戻した様子で寺本に向かってそう言った。レンがこの世界にいる。あたしはレンにもう一度逢える。そう考えただけで心臓が飛び跳ねそうなくらい高鳴っ...小説版 South North Story 44
レイジ
第三章 東京 パート3
「藤田は?」
いつもの部室、普段から活動している部室棟地下二階の音楽練習室で、沼田英司の僅かに苛立ったような声が響いた。予定していた集合時間を迎えて、唯一姿を見せていない人物が藤田であったのである。
「そろそろ来ると思いますが。」
呆れたような口調でそう答えたのは寺本...小説版 South North Story 43
レイジ
第三章 東京 パート2
立英大学を訪れた殆どの人間が、まずその正門から広がる景観の良さに瞳を奪われることになる。赤煉瓦造りの正門から見える立英大学本館は青々としたつたの絡まる二層立て赤煉瓦造りの、明治期に建設された建造物であり、当時の気風を現代に伝える建造物として文化遺産としても評価の高い建物であ...小説版 South North Story 42
レイジ
第三章 東京 パート1
「いらっしゃいませ。」
日本全国、何処にでもあるようなコンビニの一つに入店した藤田哲也はしかし、その声を耳にして天にも昇るような気分を味わうことになった。その声をかけた、短めに髪をそろえた若い女性店員はその利発そうな瞳を和ませて、藤田に対して笑いかける。
もう死んでもい...小説版 South North Story 41
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート22
「そこまで。」
凛としたアクの言葉がビレッジに響き渡ったのは、ハクが詠唱を始めた直後のことであった。直後に、事態を見守っていたメイコとウェッジが向き直り、剣に手をかける。
「どうしてここに・・。」
瞬時に剣を抜けるように身構えたメイコは、アクに向かっ...小説版 South North Story 40
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート21
それは、迷いの森以上に不思議な場所であった。
目の前に見えるのはまるで村の入り口をあらわす門扉のように植えられた二本の大イチョウ。その大イチョウの奥に見えるのは赤煉瓦作りの聖堂であった。横に長く造られているその聖堂は相当数の部屋が用意されているらしい。こ...小説版 South North Story 39
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート20
翌日、普段よりも早い時間に目を覚ましたハクは、なんとなく落ち着かないという様子でその均整のとれた肢体を不安そうに捩じらせた。今日、ビレッジに戻る。もう二度と戻ることは無いだろうと思っていたビレッジに。あの場所での生活はあたしにとっては悪夢のような出来事だっ...小説版 South North Story 38
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート19
グリーンシティ。
かつて黄の国との戦争に敗れ、建築物が破壊され、民衆が虐殺の憂き目にあったその都市は四年の歳月を経過してようやく本来の文化都市としての性格と落ち着きを取り戻しつつあった。戦争の痛手と悲嘆がたった四年の歳月で消え去る訳もなかったが、表面上の...小説版 South North Story 37
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート18
静かな夜であった。物音はリンとハクが踏みしめる土の擦れる様な音と、周囲の叢で嘶く蟋蟀が鳴く声だけである。場所はロックバード邸の裏庭であった。この場所ならば未だ眠りにつく気配も無い街の明かりに邪魔されることは無い。今宵は月もなく、ただ星の瞬きだけがリンとハ...小説版 South North Story 36
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート17
「うぁあ、美味しそう。」
リンが目の前に用意された食事を見て、その様に声を上げた。その後結局、リンの一行はロックバード邸に一晩の宿を借りることにしたのである。ロックバード邸は流石かつてのルワール王国の居城であっただけあり、その敷地は相当の広さを誇っている...小説版 South North Story 35
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート16
「せいやぁっ!」
可憐な少女の声が広い平原の只中に響き渡った。どうやら一人、剣の素振りをしている様子であった。小麦色の髪を潔くポニーテールにした少女はもう一度剣を振り上げて、そして鋭く振り下ろす。剣が風を切る音が周囲に響いた。その素振りだけでも、見るもの...小説版 South North Story 34
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート15
作者註:この回は冒頭から「大人のシーン」が展開されています。ある程度抑えたつもりですが、苦手な方はご注意ください。それでもおkな方はどうぞ。(消されなきゃいいけど^^;)
汗ばんだ身体に、茉莉花に似た心地の良い香りがふわりと馴染む。昨晩の行為を思い起こしな...小説版 South North Story 33
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート14
「結論から先に言うわ。ここにいる全員で迷いの森に向かうの。」
ウェッジの表情を一瞥した後、ルカは全員に向かってそう言った。お互いの顔を見合わせ、手を叩いて喜んだのはリンとリーン、困惑した表情を見せたのはそれ以外の三人であった。
「あたしも行くのですか?...小説版 South North Story 32
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート13
「とりあえず、何があったのかを説明しなければならないわね。」
ウェッジがさりげなくハクの隣の席に腰掛けたことを確認してから、ルカはその様に言葉を切り出した。確かウェッジはリンの正体を知らないはずだけど、と考えながら、慎重な口調でハクに向かってこう訊ねた。...小説版 South North Story 31
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート11
レンにもう一度逢える?
リーンの声が海岸に響き渡り、その声が波打ち際の潮の音に紛れて消えていった後、リンはその様に考えてその蒼く透き通る瞳をひとつ、瞬きさせた。潮風が吹き、リンとリーンの黄金の髪を綺麗に靡かせる。
「本当に?」
リンは暫くしてから、リ...小説版 South North Story 30
レイジ
第二章 ミルドガルド1805 パート11
やっぱり、あたしがいた時代とは随分と様子が違うな。
無言のままで歩みを続けるリンの背中を追いながら、リーンはその様なことを考えた。リーンが生まれ、そして高校卒業まで住んでいた自宅は影も形もないし、大通りを走る路面列車の姿ももちろん見えない。建物は平屋ばか...小説版 South North Story 29
レイジ
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