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第二章 ミルドガルド1805 パート10
一体、リン様はどのような生活を営んでいるのだろうか。
一歩一歩近づく、ルータオで一番巨大で、そして最も美しい建築物であるルータオ修道院を目前としながら、メイコはそのようなことを考えた。リン様にレンの最後の言葉を伝え、そして謝罪したい。その想いだけでゴール...小説版 South North Story 28
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第二章 ミルドガルド1805 パート9
翌日、まだ朝日も出ていない早朝にルカは目を覚まし、もぞもぞとベッドから起き上がると日の出前の薄明かりを頼りに宿の寝室に用意されている化粧台へと赴き、そして丁寧に自身の長い桃色の髪を梳き始めた。軽く跳ねている髪を櫛で押さえつけ終わると続けてルカは軽く化粧を施す...小説版 South North Story 27
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第二章 ミルドガルド1805 パート8
メイコとアレク、そしてリーンがテーブルを挟んで向かい合うように座ると、メイコが状況を整理するわ、と前置きをして一通りの話を語りだした。即ち、リンが生きていること。今リンはルータオで静かに暮らしていること。そしてリーンが二百年後の未来から来た人物であるというこ...小説版 South North Story 26
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第二章 ミルドガルド1805 パート7
日はすっかりと落ちて夜の帳がゴールデンシティを包みこんだ。今日は満月に近い日なので、夜と言ってもそれなりに明るく感じる。街のどこかに潜んでいるのだろう、静かにコオロギの羽音がメイコの耳に届いた。総督府を出たメイコの隣を歩くのはメイコの麻袋を担いだままのアレク...小説版 South North Story 25
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第二章 ミルドガルド2010 パート6
日が陰り、夕闇がゴールデンシティを包み込み始める時刻、長旅に耐えられる様にと頑丈な縫製がなされている牛皮のベストを着込んだメイコは、気合を込める様に左右の襟を両手で掴むと、身体を引き締める様にそれを軽く引き絞った。そのまま、私室の窓から広がる景色を視界...小説版 South North Story 24
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第二章 ミルドガルド2010 パート5
「ルカ殿、ルータオにはすぐにご出立されますか?」
ルカとリーンが飲み残した紅茶を無念という表情そのままで処分し終えると、メイコはルカに向かってその様に訊ねた。まだ午後の早い時間だが、今から出発してもルータオ街道沿いにある次の宿場町には間に合わない計算にな...小説版 South North Story 23
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第二章 ミルドガルド1805 パート4
「苦い。」
メイコが丹精込めて淹れた紅茶に対するリーンの一言目はその言葉であった。
「私が淹れれば良かったかしら。」
続けて、ルカがその様に評価を下す。その言葉に後悔している気配を感じたメイコは、恐縮しきりという様子で肩を縮めると恥ずかしそうな口調で...小説版 South North Story 22
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第二章 ミルドガルド1805 パート3
どうしてそのような寂しげな表情をしたのかが判断できないまま、リーンはルカに促される様にして立ち上がるとリン女王の墓石を神妙な瞳で見つめ直した。そして、歴史書で読み込んだリン女王の最後の姿を描写した文面を思い起こす。当時黄の国で絶大な権力を誇った齢14歳の少...小説版 South North Story 21
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第二章 ミルドガルド1805 パート2
一体、何が起こったのだろう。ぼんやりとした思考のままでリーンはその様に考えて、目の前でまるで大地がひっくり返ったかのような驚きの瞳でリーンを見つめている桃色の髪を持つ女性の表情を視界に収めた。
「あたしは、ルカよ。」
何かに緊張しているのだろうか。軽く...小説版 South North Story ⑳
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第二章 ミルドガルド1805 パート1
もう、四年も経ったのね。
丁度一年ぶりに訪れた旧黄の国の王都、四年前にカイト皇帝によりゴールデンシティと改名されたその街に訪れたのは、桃色の髪を持つ妙齢の女性、ルカであった。手にしたバスケットの中にはハルジオンの花束と、丹精込めて焼き上げられたブリオッシ...小説版 South North Story ⑲
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第一章 ミルドガルド2010 パート17
ミルドガルドには現代日本と同様に、四月の終わりから五月の頭にかけて一週間程度の連休期間が存在していた。メイが迷いの森の探索を目的として指定した日はその春の連休の初日のことである。カイルが運転する車の後部座席に腰かけたリーンは、隣に座るハクリと一緒に流れる...小説版 South North Story ⑱
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第一章 ミルドガルド2010 パート16
セントパウロ大学前駅から地下鉄南北線に乗車したカイルは、それから半時程度が経過した頃にグリーンシティ駅に降り立つことになった。グリーンシティ駅は文化都市グリーンシティを象徴するような芸術性の高い建物になっている。現代建築特有の、近未来をにおわせる明るい配...小説版 South North Story ⑰
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第一章 ミルドガルド2010 パート15
大学に入学して初めての講義を終え、リーンとハクリは二人で歴史研究会の部室へと向かうことになった。正確には部室という設備は歴史研究会には存在しないため、メイが適当に見つくろってきた空き教室を部室の代わりとして使用しているらしい。その場所は大学の奥、リーンが...小説版 South North Story ⑯
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第一章 ミルドガルド2010 パート14
長い歴史を積み重ねて来たグリーンシティの街並みは、息の詰まる様な近代化が進んだ他の街で育った人間達にとっては溜息をつきたくなるような安らぎを与える様子であった。幾何学的に並べられた建築物はそれがたとえたった一つの民家であっても周囲の環境と調和しており、全...小説版 South North Story ⑮
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第一章 ミルドガルド2010 パート13
「ハクリ、こっちよ!」
それから半時間ほどが経過した後、リーンとメイ、そしてカイルはセントパウロ大学の正門でハクリと待ち合わせることになった。学内には待ち合わせに適した場所が他にもあるが、入学したばかりの新入生にも分かりやすい場所を、ということでメイが...小説版 South North Story ⑭
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第一章 ミルドガルド2010 パート12
入学式を終えたリーンは、他の学生たちと共にひとまず大講堂の外へ向かうことにした。今日の予定は入学式だけだ。早い段階でハクリと合流しようと考えたリーンは、大講堂の出口へと向かって歩き出すことにした。大講堂の一般出口は舞台とは反対側、リーンから見て後方にしか...小説版 South North Story ⑬
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第一章 ミルドガルド2010 パート11
それから数時間後、リーンとハクリの二人はセントパウロ大学大講堂の中にその身体を収めることになった。セントパウロ大学大講堂は一度に数千人の学生を収容することが出来る、セントパウロ大学では最大の建築物である。ルネッサンス様式を真似た大講堂は、その造形美から観光...小説版 South North Story ⑫
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第一章 ミルドガルド2010 パート10
リーンとハクリが予約していた不動産業者から自宅の鍵を受け取ってから向かった先は、モーリス学生街駅から徒歩五分の距離にある場所である。駅から至近距離にある優良物件であるにも関わらず、家賃は程良い価格に抑えられているのは、ミルドガルド共和国の学生支援策の一環で...小説版 South North Story ⑪
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第一章 ミルドガルド2010 パート9
ゴールデンシティはミルドガルド共和国第一の経済都市であり、人口、企業数共に世界有数の都市でもあった。その規模を反映するように、ゴールデンシティ駅もまたミルドガルド共和国最大の規模を誇っている。ゴールデンシティを起点とする鉄道は新幹線、在来線合わせて10を軽く...小説版 South North Story ⑩
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第一章 ミルドガルド2010 パート8
『レン、あなたは外国に行くのは初めてでしょう?』
あたしは、いつも通りの時間に銀製のトレイを片手に現れたレンに向かって、そう言った。
『そうです。』
レンはそう言って笑顔を見せる。その優しげな、それでも何かを隠しているような不自然なレンの笑顔を見つめなが...小説版 South North Story ⑨
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第一章 ミルドガルド2010 パート7
それから一週間後、リーンとハクリは全ての出立の準備を終え、ルータオ駅にその姿を現した。出張に訪れているのか、数多くのスーツ姿のサラリーマンがルータオ駅から吐き出されてそれぞれの仕事場へと向かってゆく。休日とは違う意味で混雑を見せるルータオ駅の駅ロータリーで路...小説版 South North Story ⑧
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第一章 ミルドガルド2010 パート6
同じ頃、リーンとは隣合わせの家に住んでいるハクリもまた、遅めの夕食を終えて、先程リーンが寝ている間に読み込んでいた小説の続きを再開しようと自室へと戻ったところであった。ハクリの性格を良く表す様な、余計な物は置かれていない、それでも満たされているように感じる良...小説版 South North Story ⑦
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第一章 ミルドガルド2010 パート5
ハクリを玄関口まで見送ったリーンは、その後どうにもぼんやりとしたまま、玄関ロビーに直結している居間に向かうと、母親が勧めるままにテーブルに用意されていた夕食を胃の中に収めてゆくと言う単純作業を演じることになった。未だに先程の夢から覚めた気分にならない。チキン...小説版 South North Story ⑥
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第一章 ミルドガルド2010 パート5
カフェでの小休止を終えたリーンとハクリは、少し時間は早いがそのまま帰宅の道へと向かうことにした。ルータオ駅は修道院から距離にして数キロの距離があったが、その移動手段を支える交通がルータオ市内には整備されている。即ち、ルータオのもう一つの名物となっている路面列...小説版 South North Story ⑤
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第一章 ミルドガルド2010 パート3
「きっと、レンには秘密があると思うの。」
翌日、昼過ぎからルータオの中心街へと向かったリーンは、隣を歩くハクリに向かってそう声をかけた。ミルドガルド共和国沿海地方の中で最大の都市であるルータオには休日に多くの人間が押し寄せる。その中心部は二か所存在していた...小説版 South North Story ④
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第一章 ミルドガルド2010 パート2
ゴシック調の建築様式を持つルータオ修道院の礼拝堂は、その規模の巨大さと均整のとれた建築様式を持つことで有名な建物であった。その内部にひとたび身を納めると、都会の軋轢を癒すような柔らかい、まるで高性能な濾過機を通したような清浄された空気を堪能することが出来るの...小説版 South North Story ③
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第一章 ミルドガルド2010 パート1
「卒業式、終わっちゃったね。」
机の上に腰を置くような格好で教室を呆然と眺めていた金髪蒼眼の少女が、少しだけ寂しそうにそう呟いた。どこにでもある様な、変哲もない卒業式だったけれど、それでも三年間学んだ学舎とこれでお別れだと考えると嫌でも哀愁が募る。同級生た...小説版 South North Story ②
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小説版 South North Story
プロローグ
それは、表現しがたい感覚だった。
あの時、重く、そして深海よりも凍りついた金属が首筋に触れた記憶を最後に、僕はその記憶を失った。だが、暫くの後に、天空から魂の片割れの姿を見つめている自身の姿に気が付いたのである。彼女は信頼すべき魔術師と共に...小説版 South North Story ①
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南へ行こう。
北へ行こう。
そうして歩き出した。
目的地はないけれど、ただただ北へ。南へ。
世界の中心の交差点。
人があふれかえる町。
たくさんの品物がならぶ都会。
たった一つの交差点で地図を広げていた。
向こうに見える似た子。
同じように白色の地図を開いていた。...【ネタバレ注意!!】South North Story【二次小説】
李緒
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