<A>
春の終わりに見つけた 少しだけ伸びた緑の葉
植えたおぼえなんてないのに たった一人で育っていた
<B>
小さな庭でひとりで土をいじって遊んだ 空が真っ赤に焼けるまで
泥だらけの手 あなたとおんなじって見せて笑って それだけで嬉かったの
<C>
繋いだ指先が温かくて 交互に脈打つの感じていた
あなたの三分の二くらいの影が はしゃぐように揺れて
湿った風が頬を撫でていく 広がる青田の匂いがした
あの頃からずっとずっと変わらないこの町 あなただけがいなくて
<A>
盛る夏に開いた 誇らしげな太陽の花
私の背をずっと追い越して たった独りで咲いている
<B>
夏祭りを知らせる紙 今年も花火が上がる 最後に行ったのいつだっけ
真っ赤なリンゴ飴 二人でかじって穴だらけ 楽しくて帰るのが嫌だったの
<C>
あなたがいない初めての夏 鳴らないガラスの鈴が寂しげ
大きくなってしまった私の影も あなたにはまだ届かない
抜けるように澄んだ空へと 伸びていく向日葵を見つめていた
あの夕暮れ 追いかけたあなたの背中が重なり 世界が滲む
<D>
失くした時間と過ぎ去った日々と流れる思い出と
私の真ん中にはいつもあなたがいてくれて
感じる夏の香りが ゆっくり呼び覚ましていく
<C>
暦がまた一つ巡っていく ひぐらしたちが夏を知らせる
今年は咲かない大きな向日葵 今ならわかる あれはきっと
抜けるように澄んだ空を見て 懐かしい日の面影を見つけた
一年きりのあなたからの贈り物だったのね ああ、ありがとう
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