「……さて……どこだ?」





急ブレーキをかけ、廊下のど真ん中で、考え込むレン。急に前を走っていたレンが止まったおかげで、リンはブレーキをかけ損ね、躓いて顔面から地面に突っ込んでいた。


「ちょ、何すんのー!!?」

「何もしてないだろうが!? 勝手にすっ転んどいて何言ってんだ!?」

「ぐぬぬ……で、何急に止まってんのさ!?」

「……だからさ、リン。倉庫どこだかわかってんの?」

「あ」


そう。あの会議室のような部屋から飛び出してきたはいいものの―――ここまでリンとレンは『量産型』の倉庫がどこにあるのかわからないままに走り回っていたのだ。


「闇雲に探したって見つかるわけがねえし……手当たり次第破壊するにしたって、運悪く火薬庫吹っ飛ばそうもんならこっちが丸焼きになっちまうしな」

「だ……だからって立ち止まってるよりは探したほうが……」

「まぁ待てよ……多分そろそろルカさんから……」


ブツブツ言いながら周囲を見回していると、突然リンとレンのヘッドセットのランプが点滅した。他のVOCALOIDからの通信機能だ。


「来た! ……ルカさん!?」

『はいはーい!』


案の定、通信の主はルカ。レンが待ち望んでいたものが完成したのだろう。


『『心透視』で読み取った内部構造で船の見取り図を作ったわ。今から二人のヘッドセットに転送する。袖のパネルで見ることができるはずよ。倉庫の場所も大体把握できたわ。赤いマーカーをつけてあるから行ってみて。因みにあんたたちの居場所は黄色のマーカーで示されるから』

「サンキュー&了解っ!」


通信が切れると同時に、二人のヘッドセットにデータが流れ込んできた。同時に袖のパネルに見取り図が表示される。

よく見ると、自分たちを表している黄色のマーカーのすぐそばに、紅いマーカーが点滅していた。


「って、すぐそばじゃんレーン!!」

「用心には用心を重ねる必要があろうがっ!!」


騒ぎつつもマーカーで示された場所へ向かうと、そこには『GU』とだけ書かれた扉があった。


「……GU?」

「ここが『量産型』の倉庫だとすれば……ここに収納されてる量産型の種類を表すと見るのが妥当だろうな」


そして現在、投下されている『量産型』で『GU』から始まるのは『一種類』しかいない。

深く息を吸い込んで、意を決したレン。軽く拳を引いてから―――――


「……らっ!!」


扉に思いきり叩き付けた。簡単にひしゃげぶっ飛んでいく扉。

倉庫の中へと駆け込む2人。


「……ぅおっ!!?」

「これは……!!」


思わず声が漏れた。

そこにいたのは―――――何千体という凄まじい数の『量産型Megpoid』。

千単位で並べられた『量産型』が、幾層にも重なったカタパルトの上で射出を待っている、非常に異様な光景だ。

倉庫自体は決して広くなどない、せいぜい戦闘機用のドックより少し大きい程度だったが、かろうじて引っかからない程度の隙間を残しぎっしりと詰め込まれている。

これほどまでに詰め込んでいれば、あの恐ろしいほどの数も頷けるというものだ。


「………」

「リン?」


リンが口を引き結んでいる。

良心回路の呵責―――いや拘束と呼ぶべきか―――を打ち破ったとはいえ、未だにリンの中にはグミと同じ姿をしたロボットを破壊することにわずかな抵抗があるようだ。


「……リン」

「……わかってる。こいつらを壊さないと、町が……皆が!」


小さく叫びながら、レンの手をぐっと握る。


「……だけどまだちょっと怖いから……手ぇ……握っててくれる……?」

「……どのみち握ってないと強い音波は撃てないだろ、俺たち」


苦笑いしながらも、奮えるリンの手をしっかりと握りしめる。

そして気持ち悪く感じるほどに並ぶ『Megpoid』達に握りしめた手を向けて―――――




『Powerっ!! メガトン・サウンドっ!!!!』




開かれた二人の手から放たれた巨大な音波砲が、大量の『量産型』を倉庫の外壁ごと吹っ飛ばした。

ある物はひしゃげ、あるものは砕け散り、ある物は派手に爆発しながら地上へと降り注いでいく『量産型』。

下手をすると地上にいるメイコ達が危ないが、あのロシアンもいる上、何よりそれ以前にあの様では地上に無事降りられるかも、降りられたとしてまともな戦力になるかも怪しい。心配するほどでもないだろう。


「まずは一つっ……!!」

「よし……このままいくぞっ!!」





続いて二人が見つけた倉庫は『倉庫GA』。

扉を破壊してみると、予想通りそこは『量産型がくっぽいど』の格納庫。

上から下までぎっしりと詰まった『がくっぽいど』に向けて、再び握りしめた手を突き出す。


『メガトン・サウンドぉ――――――――――!!!!』


ドゥン、と轟音が響き、砕かれた戦艦の外壁と一体化するほどにぐちゃぐちゃになった『量産型がくっぽいど』が落下していった。



更に船の反対側まで移動して倉庫を見つける。

『倉庫Li』と記された扉を蹴破ると、大鉾を専用のソケットに差し込み、まるで門の彫像か何かのような格好で並んでいる『量産型リリィ』がいた。

何百という『量産型』を倒し、何千という『量産型』の詰まった倉庫を二つも破壊したリンとレンに、もはや『仲間の形をした敵』を吹き飛ばすことに対する抵抗はなかった。

空気が唸り、これまで同様に外壁ごと『量産型』が粉々に吹き飛ぶ。

自分たちのやっていることは、外側から見れば空中戦艦のあちらこちらで大爆発が起きるという今にも轟沈寸前の状況に見えるのだろうと、リンとレンは笑いながら次の倉庫を目指していた。





「……またよ! 今度は『倉庫IR』……これで『倉庫RY』以外の『量産型』倉庫がすべて破壊されたわ……」


ズズン……と響く衝撃と共に、久留須が見つめるモニターに被害状況が映し出される。


「くそっ!! ロボット兵は何してやがる!! 『Megpoid』程度のVOCALOIDなら数体で袋叩きにできるぐらいの戦闘力はあるはずだぜ!?」

「悉くやられているようだな。まぁ、並のVOCALOIDを倒せるといえどもそれは我々のVOCALOIDを基準にした場合の話……強さのレベルが違ったということか」

「何をぼんやりと考察してんだ宇野ォ!! あの老いぼれ共の作ったクソVOCALOID共の評価なんぞしてねえでさっさと手を打てっ、手をおおおおおおお!!」

「狼狽えるな田山ァ!!」


再び宇野が田山を一喝する。そしてキーボードを叩きつつモニターを睨んだ。


「船に入り込まれてしまった以上、こちらから奴等に出来るのはロボット兵を差し向けることと、粒子砲を一刻も早く地上に向けて撃てるように整備することぐらいだ。焦っても仕方がない」


タンッ! と強くエンターキーを叩き込み、ロボット兵に集中攻撃の命を下してシートに寄りかかる宇野。そしてにやりと嗤った。




「……それに、残ったあの倉庫を無理にこじ開ければ、奴等とてただではすまんだろうからな……!」





「……ここだ!! 最後の倉庫……!!」


決意の表情を秘めたリンとレンが立つ目の前には、『倉庫RY』と描かれた扉。

ここまで破壊してきた『量産型』の倉庫は『Megpoid』『がくっぽいど』『Lily』『猫村いろは』の4つ。

最後の一つであるこの倉庫を破壊すれば、地上への『量産型』の進行は止まる。

しかしここで、レンが扉に書かれた小さな文字に気がついた。


「……ん? 『量産型RYの電源を切らないまま扉を開けるべからず』……?」

「どーいうこと?」

「文字通りに取れば、『リュウトの量産型を機能停止させない状態で扉を開けてはいけません』ってことだろうけど……」


だが機能停止させる方法など破壊するしか知らない上、だからと言って手を拱いていれば一番厄介な『量産型』が放たれ続けてしまう。

多少の危険は承知でも、迅速に破壊しなければならない。


「リン……怖気づいてる暇はないぜ。即刻破壊すんぞ!!」

「わかってる!! せぇぇぇ―――――のっ!!!」


遠心力を加えたソバットを扉に叩き込むリン。ひしゃげた扉は外れ、その場にガランと音を立て崩れ落ちた。

倉庫の中には数千体はいようかという『ガチャッポイド』が、人間体のまま手足を折りたたんだ胎児の様な格好で収められていた。

これほどの数が地上に降り立とうものなら、どんな大変なことになるかわからない。一刻も早く破壊しなければ。

そう考えたリンとレンが拳を合わせる。



―――――が、その考えに至るまでの一瞬の間がいけなかった。



数千の『ガチャッポイド』の眼がカッと見開かれ――――――――――










《―――――――――――――――ズドゥンッッ!!》










呆気にとられるリンとレン。

二人の目の前には―――――数千体のドラゴンが姿を表していた。

音波術を使い変化したのだ―――全ての『ガチャッポイド』が、扉を破壊されてから二人が拳を構えるまでの一瞬の間に!


(このことかっ……『電源を切らずに開けるべからず』って!!)


特殊な倉庫の中で休眠状態にされている『量産型ガチャッポイド』。本来射出される瞬間に覚醒し、変化するように設定されている。

倉庫内にいる間でも『量産型』の電源は落とされていないため、下手に密閉を解けばすぐさま変化を起こしてしまうが、コンピュータで電源を落としさえすれば倉庫内に入ることができる仕組みだ。

だがリンはそれを完全に無視してこじ開けてしまったため、全ての『ガチャッポイド』が休眠状態から覚めてしまったのだ。


『ギュギュギュギュギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイオオオオオオオオオオオッッ!!!』


数多のドラゴンが吠えると同時に、口の中で火炎が渦巻き始める。

それを視認してようやく体の膠着が解けたレン。瞬時にリンの手を取って敵に向けた。


「り、リン!! 撃つぞッ!!」

「ふぅえ!? う、うんっ!?」


二人が音波を合わせ、放とうとするが―――――それよりも速く、ドラゴンの火炎チャージが完了してしまう!

口の中で瞬く焔を見た二人は、死を覚悟した―――――――――――――――










《――――――――――巡音流乱舞鞭術新奥義》










突如響いた恐ろしく暗い声と、二人の後ろに立ったその存在を知覚した瞬間、リンとレンは震えあがった。










――――――――――蛸  足  念  撃  殺――――――――――










次の瞬間、リンとレンの後ろから凄まじい勢いで八本の鞭が射出された。

荒れ狂う鞭は今まで見たことが無いようなスピードと、物理的にあり得ない回転と曲線を描きつつ、数千のドラゴンを刺し貫いていく。

全てのドラゴンが八本の鞭に縫い取られたところで、再び二人の後ろでおぞましい声が響く。



《―――――逝ね》



その瞬間、全てのドラゴンが弾け飛んだ。荒れ狂う鞭にその身を削られ、ある物は砕け散り、ある物は引き裂かれ、ある物は複数の鞭により磨り潰され。

そしてすべての破壊が終わった後―――――音速を遥かに超えた鞭によって弾かれた空気が、一気になだれ込み轟音と破壊の音色を奏でた。

僅か――――――5秒。たった5秒で、数千のドラゴンは物言わぬ金属片へと姿を変えてしまった。

リンとレンは恐る恐る後ろを振り向く。


「……ったく、何やってんのよあんたらはっ!!」


額に血管を浮かび上がらせ、今にも鉄拳制裁を行いそうなルカの姿があった。


「る……ルカさん……」

「突然物凄いエネルギー反応が浮かび上がってきたから、床も部屋もぶち抜いてあんたらのところに飛んで来てみれば……あんたらバカなの!? 『開けるべからず』って書いてあんだから少しぐらい警戒なさいよ!!」

「だ、だってまごついてたら時間かかっちまうしさぁ……」

「私らに救援求めんなとか言ってないのよ!! 得体がしれない時は自分たちだけで判断せず周りの力を借りなさい!!」

『う……ごめんなさい……』


しょぼんと項垂れるリンとレン。それを見たルカは小さく笑って、『わかればよし』と二人の頭に手を乗せた。


「ところでルカさん、さっきの技は……?」

「ああ、あれ? 龍念鞭と蛸足滅砕陣を組み合わせた巡音流乱舞鞭術新奥義『蛸足念撃殺』よ。蛸足滅砕陣を『サイコ・サウンド』で更に加速させたうえで、勢いを失わせないように操作して相手を破壊するの。鞭自体の威力と『サイコ・サウンド』の影響による二重の破壊……鞭の耐久力的にも……正真正銘の奥の手になるわね」


ネルにより強化された鞭。蛸足滅砕陣に耐えられる頑丈な八本の鞭は、ズタズタに捩じ切れてしまっていた。新奥義の破壊力と―――反動を思い知らされる有様だった。


「これで私はもう鞭が使えない――――――」


使い物にならなくなった鞭を畳んだルカは、リンとレンに笑いかけた。


「だから、ここからはあんたたちの力借りてくからね?」

『……っ、了解っ!!』


リンとレンの力強い返答に小さく微笑むと、ルカは飛び出してきた穴に飛び込んで手招きをする。


「さ、行くわよ。こっちはとっくに目的のブツ見つけてんだから」

「え、それじゃあ…………」









「ええ……見つけたわ、動力部を」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

SOUND WARS!! Ⅶ~量産型爆破作戦~

数が多くて処理しきれない?丸ごと吹き飛ばせばいいじゃない!
こんにちはTurndogです。

面倒ごとを解決したいならまずは元から吹き飛ばす!
常識ですね(え?

そうそう、ルカさんの活躍がここまでと思っているそこのあなた。


うちのルカさんがそう簡単に止まると思って……?

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閲覧数:228

投稿日:2016/02/23 14:24:06

文字数:5,619文字

カテゴリ:小説

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