自分を中心とした十字線を取り囲む、無数の光源。
 ここもすぐに、大勢のアンドロイドが警戒に押し寄せてくる。
 「・・・・・・クローク、起動。」
 適当な壁に張り付き、スーツのモードを切り替えると、スーツのセンサーが壁の色をスキャンし、その表面を壁と同化させていく。
 クロギンの話によれば、この状態はアンドロイドであれば可視されないようだ。
 発見されるリスクを最小限に抑え上で、俺は静かに、しかしすばやく廊下を進む。
 レーダーを見ながら、光源を避け、やむを得ない場合は、警戒に当たっていたゲノム兵を始末した。
 その時、無線がセリカからの通信を受信した。
 『デルさん。ミクさんとワラさんから通信がありました。』
 「二人は今どこに?」
 『お二人とも、ストラトスフィア用のマスドライバーヘ、発射阻止に行きました。』
 「マスドライバーへ?」
 『はい。デルさんがマザーコンピューターにワームを注入したとしても、それが完全にシステムを使用不可能な状態にするまで数時間程度のタイムラグがあります。一度ワームがシステムの分解にとりかかれば、それを停止させるすべはありません。ですが、そのタイムラグの間で、テロリストが逃亡する可能性があります。それが出来ないように、今、お二人が発射設備の制圧に向かいました。』
 「なるほど。」
 『デルさんはレーダーを頼りに進んでください。もうすぐ兵器廠です。警備が厳重なので気を付けてください。』
 「了解。」
 通信を切り、通路の一角を曲がった瞬間、眼前にアンドロイドの頭部が迫った。
 「!!」
 顔面がくっついてしまうほどの接近に俺は思わず体を硬直させたが、アンドロイドのほうは何気ない顔で俺の横を通り過ぎて行った。
 直線状の通路の中には、まだ何体かのアンドロイドが、サブマシンガンと大型ナイフを装備し、徘徊している。
 クロークと、敵が熱源を探知する無人兵器であったのおかげだ・・・・・・だが、この状態でいられる時間は限られている。すぐにこの通路を通りぬけなければ。
 一体、また一体、横を通り過ぎ、兵器廠への扉に向かっていく。
 クローク解除まで、残り三十秒。
 扉の距離は十メートル・・・・・・!
 緊張に体を強張らせながら扉へ近づき、パネルに手を伸ばす。
 「動くな!!」
 その声が、敵の、しかもゲノム兵士のものであることが一瞬で判断できた。 俺は反射的にアンドロイドの一体を掴み、ゲノム兵めがけ蹴り飛ばした。
 「うおッ!!」
 間髪いれず、転倒した兵士に弾丸を放ち、殺害する。
 『クローク解除。』
 同時にスーツの合成音声が、銃撃の反動でクロークが解除されたことを伝えた。
 スーツの表面が、元の状態に戻っていく。
 俺は咄嗟に兵器廠の扉のパネルに触れ、扉を開放する。
 そしてすぐに扉の内側へ逃げ込むと、背後で扉が閉まる音が聞こえた。
 兵器廠の中には、果てしない鉄の空間が奥へ続いており、そしてさらに扉がある。
 高さはおよそ五十メートル以上。ここなら飛行機が悠々と飛びまわれそうだ。
 無数に配置された大型ABLに、ヘリ、無人機。
 奴らのあらゆる兵器類が、ここに集結しているようだ。 
 無論、銃を手にした兵士達があらゆる場所に配置され、加えて重装甲で防備したアンドロイドまでが徘徊している。
 ここを抜けるのか・・・・・・?!
 俺は扉近くのコンテナに身を隠し、レーダーを確認する。 
 言うまでもない反応の数。しかも遮断物が一切ない。
 兵器類が格納されているスポットに隠れていている余裕はなく、その前に発見されてしまう。
 俺は無線でセリカを呼びだした。
 「セリカ。兵器廠に到着した。だが敵が多すぎる上に遮断物が無い。他にルートはあるか?」
 『残念ですが、こちらから確認できる限り、コンピュータールームへ続く通路の中で、扉がフリーの状態にあるのは兵器廠を通るルートのみです。』
 「くそっ・・・・・・。」
 『申し訳ありません。健闘を祈ります。』
 向こう側から無線が切れ、俺は途方に暮れるしかなかった。
 『デル!聞こえるか。俺だ!』
 次に無線に入ってきたのはタイトの声だった。
 「タイト!今どこに?!シクとヤミは?!」
 『二人ともまだ交戦中だ。俺は天井のダクトに居る。兵器廠は見ての通り警戒が厳重だ。おまけに縦一直線で隠れる場所がない。残された手段は強行突破のみだ。』
 「本気か?!」
 『他に手はないだろ。』
 「・・・・・・・。」
 『スモークを投げる。混乱の隙に走りぬけろ!』
 「分った。」
 俺が答えると、次の瞬間には兵士たちの頭上に数個の手榴弾が降りかかっていた。
 「敵だーッ!!!」
 兵士の一人が叫んだが、彼らの姿はまばゆい閃光と煙幕に包まれた。
 「デル!」 
 俺の目の前に、黒いスーツを着たタイトが舞い降りた。
 「今だ。行くぞ。弾薬が足らなくなったら俺のをやる。」
 「あんたの弾は?」
 「心配はいらない。」
 タイトは眼帯代わりに頭部へ巻きつけてある包帯を指差した。
 「無限ホータイだ。」
 なるほど。無限なのか。
 「侵入者を発見した!攻撃する!!」
 足元に銃弾が着弾する。
 「もう時間はない。行くぞ!!」
 「ああ!!」
 俺はタイトと共に煙幕の中に突入した。
 煙の中、目の前に現れた兵士のみを殴り倒し、ひたすら走り続けた。
 次第に煙幕が薄くなり、敵の照準が俺達に向けられる。
 「デル!!」
 「タイト!!」
 俺達はほぼ同時に背中を合わせ、銃の引き金を引いた。
 放たれる弾丸がゲノム兵を貫いていく。 
 そして俺は両手にサブマシンガンを持ち、圧倒的な火力で行く手を阻む兵士をなぎ倒し、止まることなく走り続けた。
 銃弾から身を隠す場所などなく、スーツに何発も被弾していく。
 敵もまた同様で、前方に弾をばら撒くだけで何人もが斃れて行った。
 そして次の瞬間には、銃弾がなくなっている。
 「デル!!弾だ!!」
 タイトの包帯から弾き飛ばされる弾薬を受け取り、銃に装填する。
 先ほどから何人倒しているかもわからないのに、敵の勢いは衰えることを知らない。 
 「タイト!このままじゃ・・・・・・!!」
 「立ち止まるな!!出口を見つけるんだ!!!」
 突き進む内に、兵器廠も突き当たりに近づいた。
 あのハッチを抜ければ・・・・・・!!
 「デル!お前はあの中に入れ!!」
 「タイトはどうするつもりだ!!」
 「俺はここで敵を抑える。あの扉に飛び込むんだ!!」
 「お前一人で?!」
 タイトは俺に背を向け敵の大群と向き合うと、両手のアサルトライフルを床に落とした。
 その時、タイトのスーツ各部に装着されている装置が花のように展開し、紫色のオーラを放ち始めた。タイトの体が、数センチほど宙に浮き上がる。
 次の瞬間、タイトの背から無数の、紫色に光る包帯のような触手が伸び、飛来する一切の銃弾をはじき返した。
 紫色のオーラを纏ったタイトは、攻撃を続ける敵の前に瞬間移動し、アンドロイドと兵士を触手で両断した。
 次に兵士の一人が放ったRPGを触手で掴み、兵士に投げ返した。
 繰り出される銃弾の豪雨も、投げ込まれるグレネードも、一切の攻撃はタイトに届くことなく触手に防がれ、敵はその報復として、薙ぎ払われる触手によって両断され、絶命していく。
 まるで妖怪か、それとも、今の俺では理解できない、人外の存在か。
 「ここは俺が潰す。行け!」
 「・・・・・・分った!!すまない!!」
 タイトの言葉に促され、俺はドアを開放し、中へ飛び込んだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

SUCCESSOR's OF JIHAD第六十四話「紫の包帯」

戦闘シーンはあんまり続かせたくないですね・・・。
好きじゃないです。


 【無限ホータイ】(架空)
 装着者が想像したものを無制限に生成する包帯。頭部に巻きつけることで機能する。
 いつ、どこで、何の目的で開発されたかなど、一切の情報は謎に包まれている。
 恐らく他の戦闘用アンドロイドのような、オーバーテクノロジーを内蔵したクリプトン製の装置だと思われるが、定かではない。当然普通の包帯として使用可能。
 なお、包帯の中に「たいと」と子供のようなつたない字で、現在の所有者であるアンドロイド、タイトの名前が刺繍されている。

もっと見る

閲覧数:300

投稿日:2010/01/08 23:21:13

文字数:3,143文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました