「また今日も来ちゃった…」
そんな頻繁に来てもレン君に会えるわけじゃないのに…これじゃストーカーじゃない…
インターホンの前で右往左往する私。
周りから見たらただの不審者だ。
少ししたら庭の方から話し声が聞こえてきたので、庭の方に足を運んだ。
しかし、私の身長より少し高い塀が視界を塞いでいる。
塀の向こうではレン君とリンちゃんがいるみたいだ。
「レ~ン~!そこののこぎり取って~!」
「…なんで俺が日曜大工に付き合わきゃいけないんだよ…KAITOにやらせればいいじゃないか…どうせアイス食うことしかやることないんだし…ぶつぶつ」
「ほら、つべこべ言わずにさくさく取る!」
…むぅ…なんか楽しそう…(注:ネル視点/笑)
「あと…少し…」
背伸びしてみるが、あと3センチ届かない。
「ん~…!」
塀のてっぺんに手をかけて、懸垂みたいに上げてみた…が、ちょっと浮いただけで中々上がらない。
「ん…?ねぇレン~。あそこに見たことある頭が。」
「え?…あれ…おーい、ネル姉~?」
「ふぇ…!?…っきゃあぁぁぁ…!」
私はいきなり声をかけられたので、びっくりして落ちてしまった。
「いったぁ~…」
思い切り尻餅ついてしまったので、お尻が痛い。
「おーい、大丈夫?」
そこにレン君が走って近付いてきた。
凄くカッコ悪いとこ見られちゃったな…
「あ…あ、うん!大丈夫!」
顔赤くなってないかな、変じゃないかな?
「でもあんな塀のとこで何やってたのさ?」
「…へ?あ、えっと…」
当然だがレン君が疑問を投げ掛けてきた。
さすがに「レン君が気になって」なんて言えないし…
「…あ、あー、あの!…塀の上に…ねこがいて…あのっそれで…」
あー…何言ってんだろ私…
「猫…?あんなとこにいたっけな…?」
いや、いませんでした、ホントにごめんなさい…orz
「えっとー…私が近寄ったら逃げちゃった…」
「…?そうなん?」
レン君はいまいち腑に落ちない風だった。
「レーンー?何やってるのー?」
と、そこへ塀の向こうからリンちゃんが問いかけてきた。
「あ…っといけね、ほったらかしにするとまた殴られる…」
「…楽しそう…」
と、つい口が動いてしまった。
「楽しそう…って、結構めんどくさいよ、わがままだし」
レン君はため息混じりに言った。
「あ、そうだ。ネル姉、家寄ってく?…まぁたいしたもてなしは出来ないけどさ。」
「…へっ!?」
私は急なお誘いに驚いた。
「レーンー!!」
「うをっ!?さすがにヤバいな…とりあえず行こう!」
と、レン君が私の手を取った。
「!?…ち、ちょっと待って!」
私は慌ててレン君の手を振りほどいた。
「え?どうした?」
「えっ…と…そうだ!ちょっと用事あったの思い出した!」
とっさに嘘をついてしまった。
「…あ、そうだったのか。ごめん、無理に誘って…」
「あ、こっちこそごめんね…そ、それより早く行かないと!」
そう言ってレン君の背中を押した。
「そうだな、まだ死にたくないし…それじゃあな!」
レン君は走って去って行った。
姿が見えなくなったら、私はその場に座り込んでしまった。
「…手…」
さっき握られた自分の手を見ながら、まだドキドキしてる自分の鼓動を聞いていた。
「レン!何やってたの!?」
「ちょ…おまっ…のこぎりしまえ…!」
塀の向こうからは二人のやりとりが聞こえてきた。
「問答無用!」
「ば…振り回すな!…てゆか何でそんなに怒ってるんだ…!」
「自分の胸に聞けー!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ…!」
…私、行かなくて良かったのかも…;
私は落ち着きを取り戻し立ち上がった。
「…用事なんて何も無いのになー」
と、空を見上げると青い空に飛行機雲が白い線を描いていた。
「…はぁ、バカだなー私」
素直になれないし、その癖レン君ばっか見つめてて…何なんだろ…
『スキ』
たった2文字のこの感情。
こんなにも胸をドキドキさせる。
私はレン君がスキ。
でもそれを伝えるのは難しい。
伝えてしまったら『今』が壊れてしまいそうで怖い。
私は臆病なのだ。
でもいつかきっと伝えたい。
私のこの気持ちを…。
「…ハクのとこ行って寝よ」
私はその場を後にし、ハクの家に向かった。
レン君に握られた手にはまだ感触が残っていた。
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